平成16年11月9日

有識者会議における議論に対する意見

総論的意見

 有識者会議でのご議論については、公表されている議事録やオブザーバーの弊公社役員等から直接・間接に承っておりますが、このタイミングで一度公社としての意見を申し述べさせていただいた方がよいと判断しますので、竹中大臣のご了承をいただき下記申し上げます。まず総論的意見を申し述べます。

 第一に、有識者会議は、これまでの経済財政諮問会議における様々なご議論を踏まえて本年9月10日に閣議決定された「郵政民営化の基本方針」を受け、今後、郵政民営化準備室での法制化作業を行うに際しての主要検討課題を検討する場であると承知しております。このため有識者会議でのご議論は、あくまでも「郵政民営化の基本方針」の具現化の一過程であり、「基本方針」そしてその精神の変更あるいは逸脱はあってはならないものと認識しております。

 第二に、上記を前提とすれば、「郵政民営化の基本方針」の冒頭に記述されております「郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が有する潜在力が十分に発揮され、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供が可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる」という方針、さらには、1.基本的視点の(1)として記述されている「経営の自由度の拡大」(「民営化した後、イコールフッティングの度合いや国の関与のあり方等を勘案しつつ、郵政公社法による業務内容、経営権に対する制限を緩和する。最終的な民営化においては、民間企業として自由な経営を可能にする。」)という必要条件を、常に念頭においたご議論がなされるべきであると認識しております。
 また「基本方針」では、5つの基本原則(活性化原則、整合性原則、利便性原則、資源活用原則、雇用配慮原則)を踏まえ、民営化を実現することとされておりますが、この点も具体的な制度設計に当たり、反復して検証すべき必要条件と認識しております。
 総理も、本年10月19日に開催された衆議院予算委員会において「今後、郵政三事業が民営化されれば、今まで三事業に制限された、これが民間と同様に自由度を増すわけであります。三事業以外の仕事もできると。そして、郵貯にしても簡保にしてもそれぞれの創意工夫によってどのような商品を提供するかというのは、まさに経営者の判断である。」と答弁されており、この点は政府が検討されている民営化の大前提であり精神と認識しております。

 このような民営化の基本的な大前提を踏まえつつ、現在の有識者会議のご議論を伺っておりますと、以下の3点について基本的方向性に疑義があると言わざるを得ないと思います。

 第一に、「新会社の経営自由度を拡大する」という「基本方針」に合致したものになるのか、という点です。
 有識者会議では、2007年からスタートする新会社の仮想的肥大化・民業圧迫をいかに未然に防止するかが中心的な議題となっていると受け止めています(金融業界等と同じ議論です。)。具体的には、監督官庁が民間企業と同等以上の監督を行うことを前提としつつ、さらに新たに監視組織を設けて新会社の経営事項に属することを厳しくチェックし、自由度の拡大を制約することに議論が終始しているのではないかとの感があります。これは現在の公社経営に対する規制に比べて一段の規制強化と言わざるを得ません。民間共通の法律とか公正取引委員会とかルールはきちんと設けた上で、他は極力規制を撤廃ないしは緩和して市場のガバナンスに委ねるのが市場経済であり、民営化の本旨ではないでしょうか。
 もし仮に、このような有識者会議のご議論を法制化した場合、果たして現在の公社における経営と比べて経営の自由度が増すことになるのかどうか、そもそも閣議決定された「基本方針」に抵触するのではないか、何のための民営化かという点において、極めて深い疑問を感じます。

 第二に、「市場を活性化し競争を促進し、ひいては国民・消費者の利便性を増すこととする」という「基本方針」に合致したものとなるのか、という点です。
 もちろん郵政事業、特に郵便貯金事業、簡易保険事業の金融事業は、バブル崩壊とそれに伴う金融不安を背景に、この約10年間に巨額の資金を積み上げるに至ったことは事実ですが、金融システムの安定化を受けて現在はその健全なスリム化の過程にあることはご承知のとおりです(郵貯残高:ピーク時<12年2月末>260.3兆円→本年10月末(速報値)221.4兆円、簡保資金残高:ピーク時<14年3月末>124.8兆円→本年9月末120.6兆円)。また、公社の経営者として不当な民業圧迫はあってはならないことと常に強く認識しております。しかし、市場を活性化し競争を促進すること、そのために規制緩和を更に促進するということが民営化の「基本原則」であるはずです。民営化された新会社が、諸税・費用を民間としてフルに負担を負うとすれば、「コインの他面」において、原則としては民間企業と同等の経営の自由度を有することが公正なイコールフッティングです。それにより市場競争が活性化され、その結果として、料金の低廉化も含め国民・消費者へのサービスを向上させることが、民営化の大きな目的であると認識しています。
 不当な民業圧迫は慎むべき課題ではありますが、民業圧迫という名の下における、実は競争排除、既存の業界利益の擁護になっていないのか、民営化していく新会社が、移行期間中に次第に純粋な民間会社になっていく、あるいは市場におけるプレーヤーとなっていくことをあえて阻害し、ことさらに官と民の差を強調することになっていないのか、ひいては市場の活性化を阻害し国民・消費者へのサービスをより良くするという民営化の主目的が達成されないことになるのではないか、という観点からの検証も有識者会議でしっかり行っていただきたいと考えております。国民の貴重な資産である郵政事業を無用に劣化させることのなきよう注意が必要です。

 第三の問題点は、これからの民営化プロセスの過程で新会社の経営が成り立っていくのかどうか、「民有民営」という主目的が達成されるのかどうか、という点です。
 有識者会議においては、民営化後の新会社は民間並みの税・費用負担の一方で、政府出資が残る間は制度的に新規業務は基本的に認めない、商品・サービス改善なども監視組織が民業圧迫阻止という名の下に認めない(コインの両面のイコールフッティングはどうするのか?)、金融業務については、制度的締め付けにより結果として半ば強制的に大幅なスリム化・ナローバンク化に導くという議論の流れになっています。このような制度設計の下では、当然に新会社の採算は大幅に悪化することとなり、経営を成り立たせていくためには、雇用の大幅削減、賃金を含めた雇用条件の見直し、赤字郵便局の撤廃を行うことが不可避となってきますが、これは「基本方針」、「5原則」に反する結果を生むということを意味しています。そのような場合の客観的なシミュレーションとこれに政府がどう対応するかという点もご検討ください。先行き行き詰まることが、ほぼ確実な民営化というものは、民営化の本旨そのものに悖るのではないかと思います。
 一方で、有識者会議では、10年という移行期間は長すぎる、早く株式を市場に開放して「民有民営」を実現するべきというご議論を展開されていますが、このように税や費用は民間として支払い、他方経営の自由度を縛られた新会社が、新会社のコーポレートバリューの拡大を前提とした株式の一般市場への開放をどうして実現できるのか、その矛盾したご議論に、当惑を禁じえません。
 実際、現在の有識者会議のご議論のままの制度設計が行われた場合、10年後までの完全民営化、すなわち新会社のコーポレートバリューの拡大と、株式の一般市場への開放を担う新会社の経営は至難中の至難の技かと思います。また、「5原則」に反する諸点、経済活性化、国民の利便性、リソーシズ活用、雇用配慮等の諸点にどう応えていくのでしょう。
 是非とも、こうした「5原則」尊重の観点から、「民有民営」を実り深く現実に成し遂げるという観点からの再検討をお願いしたいと思います。

 以上、有識者会議のご議論について総論的な意見を申し述べてきましたが、以下、各主要論点について、それぞれ意見を述べたいと思います。

1.各会社の人員、施設等の切り分けについて

窓口ネットワーク会社と三事業会社間でどう人員、施設等を切り分けるかについては、4つの会社が将来的に自立していくことが可能となることを基本として、切り分けを考えるべきです。
 具体的には、各会社が、企業体として将来的に自立していくための経営企画機能と、営業力などの戦力を有していることが重要であり、例えば金融事業会社では、独自に営業部隊や支店などを経営者の判断により持ち得ることとすべきです。
 当面は、一つの経営体を分社化していくことになるので、それぞれが不十分な体制でスタートせざるを得ないものと考えられますので、その場合には、持株会社を中心としてグループ企業全体としての企業価値が拡大する方向での経営体制の確立が望まれます。もちろん、将来シミュレーションは重要でありますが、それとともに、人員、営業資産などの経営資源の配分は経営判断事項であり、できる限り新会社の経営判断に委ねることが大切であると考えます。

 なお、4事業会社の設立に当たっては、郵便事業の債務超過(15年度末:約5,500億円)の解消、郵便貯金事業、簡易保険事業の適切な自己資本の確保は是非お願いしたい点です。また、分社化することによって各会社間の取引等に伴う新たな課税(消費税等)が発生するおそれがあるとも聞いています。政府の政策によって分社し、窓口を有しない金融機関、受託のみの会社という民間には存在しないシステムを作る以上、これらの分社化がゆえの上乗せ負担が生じないような措置が必要です。これら、経営に決定的な影響を与える事項で政府が措置すべきものについては、責任ある検討をしていただくことが必要です。

2.窓口ネットワーク会社について

(1) 窓口ネットワーク会社の郵便局設置基準について

窓口ネットワーク会社のいわゆる郵便局設置基準については、経済財政諮問会議で「もし郵便局網を維持するために経営者が利益の3、4割をつぎ込んだら、株主代表訴訟を起こされる可能性がある。経営者はStake Holders全てを大切にはするが、大きくは資本の論理で動くものなので、きちんと法律等公的制度で経営者が守るべき設置基準を作る要がある。ドイツの例をみても明らか。」と発言させていただきましたが、この点については、設置基準を客観的に策定するということが「基本方針」においても記述されていると認識しています。
 この観点からすれば、新会社が自分でそれを策定し、それを監督官庁が許可するなどという経営者任せの方式では、経営者自身、板挟みで困ることになります。これこそ法制度上で郵便のみならず金融も含めたしっかりした基準を作り、過疎地はその基準を加重すべきと考えます。

(2) 郵便局での金融サービスの義務付けについて

 郵便局での金融サービスの実質義務付けについては、金融のユニバーサルサービス機能の維持・ファミリーバンク機能の維持、すなわち主として地方の住民の方々の強いニーズの観点から、また、窓口ネットワーク会社はコストセンター的色彩が濃いため、郵便事業会社、郵便貯金会社及び郵便保険会社でそのコストをしっかり受け持つことは窓口ネットワーク会社存続に大きく資することからも必要不可欠の条件と考えられます。この点に関しても経済財政諮問会議で十分議論され、およそ合意を形成され、後に制度設計でそれが具体化されると認識しています。

3.郵便事業会社について

(1) 小包をユニバーサルサービスの範囲に含めるかについて

 UPU条約との関係や地方の実情と住民の方々の声等の観点から、ユニバーサルサービスの範囲については、通常郵便物、小包郵便物、国際郵便物のすべてとすることが望ましいと考えます。

(2) その他

 政府において、一定の政策目的遂行のために必要なサービスの提供義務を郵便事業会社に課す場合は、これに要するコストを政府において負担すべきものと考えます。
 また、郵便事業の厳しい経営環境に対応して、機動的な料金決定が行えるよう、郵便に関する料金への政府の関与の緩和が必要であると考えます。

4.郵便貯金会社、郵便保険会社について

(1) 移行期における郵便貯金会社・郵便保険会社の業務範囲(移行期当初の業務範囲及びその段階的拡大の仕組み)について

 本件についての基本的な考え方は、既に総論的意見の部分で、有識者会議のご議論の問題点を指摘させていただいているので、繰り返しませんが、常にコインの両面のバランスをとりつつ、移行期においても適切な業務拡大を制度上も担保することは、民営化の「基本方針」に記載されていることであり、これに反するようなご議論は、この「基本方針」から背馳すると申し上げざるを得ません。

 限度額の取扱いについては、「基本方針」では「当面」現行水準を維持すると記述されていますが、そもそも民営化後の新契約については、「政府保証を廃止する」こととされており、基本的には限度額を定める根拠はなくなったものと考えます。仮に有識者会議のご議論のように、「政府出資や新旧分離のスキームによっては、「暗黙の政府保証」が残ることからその点のみをとらえ(すなわちコインの両面は考えずに)イコールフッティングではなく、経営の自由度は認められない」とする考え方に従えば、移行期間中を通して限度額は公社時のまま据え置かれることとなりますが、これは「暗黙の政府保証」という仮想かつ超法規的な言葉によって、事実上「基本方針」、すなわち民営化の本旨に悖るものと考えます。
 そもそも、政府保証をなくすという制度設計をしているにもかかわらず、その当事者である政府自身が「暗黙の政府保証」があるかのごとく議論されることは、「基本方針」に反し、自己矛盾ではないでしょうか。

 「基本方針」では、郵便貯金会社・郵便保険会社は移行期当初から民間企業と同様の法的枠組みに定められた業務を行うとされているところであり、仮にどうしても限度額維持をご主張の場合には、現在の公的資本注入を受けている民間銀行等にも当てはまるような「暗黙の政府保証」という不明瞭な基準ではなく、限度額維持の理由及びその拡大・撤廃に係る判断基準が具体的かつ明確に示されることとコインの両面についての措置を付帯されることが公正と考えます。

 さらに新会社の業務範囲についても、「基本方針」では、郵便貯金会社・郵便保険会社は民間企業と同様の法的枠組みに定められた業務を行うとされているところ、業務範囲が制限される場合には、これを最小限とし、その理由及び制限拡大・撤廃の判断基準およびコインの両面での取扱いが具体的かつ明確に示されることが必要と考えます。

(2) 移行期の終了時期(「民有民営」の判断)について

 「民有民営」の判断に当たっては、10年後は大きく変化することが予定される世界の金融市場のすう勢、企業組織のコングロマリット化の動向、全社経営の経営状況等を見ながら弾力的に判断することが必要と考えます。

(3) 国債市場への配慮について

 郵便貯金会社・郵便保険会社の資金運用には、民間会社以上の規制が課されるべきではなく、運用計画の策定・公表はもとより、国債の運用状況等の公表についても、基本的には民間金融機関と同様に新会社の経営判断に委ねられるべきものと考えます。

 なお、国債管理政策は今後ますます重要になると考えられますが、基本的には、政府サイドにおける国債需給改善へ向けてのご努力を背景に、国債の商品性の向上、さらには一段の市場整備の推進が鍵となります。新会社も、国債市場の有力プレーヤーの一角を占めるものとして、民間金融機関の立場から、その政策にできる範囲で協力していくのは当然と考えますが、それが法的ないしは何らかの強制的措置となるのではなく、新経営陣がALM形成のプロセスで商業的経営判断により、一定の国債を保有することを是とするような、あるいは促すような国債自体の商品性の工夫が必要かと思います。

5.雇用、待遇のあり方について

経営に携わるものにとって、雇用の問題はもっとも重要な課題の1つです。

現在の職員は、国家公務員として試験によって国が採用した者です。この採用条件と全く異なる身分とするための組合との交渉を開始し条件を提示するキックオフのタイミングをどうするか、ということを真剣に考えていただきたいということは、既に竹中大臣にお願いしているところです。現在、関係労働組合は「公務員身分の維持」、「雇用の保障」について要望していますが、このような大きな枠組みに関しては、労使の間で自主的に解決できるものではなく、政府として、責任をもった交渉をどのように進めていかれるのかを明確にすべきものと考えます。

その上で、新会社の労働条件については、労使交渉により決定していくこととなりますが、現在の経営陣には立場上協約締結権限はありません。これまでと全く異なる経営体制となることから、すべて一から交渉を積み上げていく必要があります。また、設立当初から4つの独立した会社にすることから、新会社のそれぞれの業務内容、労働条件等を明らかにした上で、一人ひとりの職員の帰属する会社を個々に決定していくことが必要になります。その交渉結果は新会社の経営を大きく拘束するものであり、また、その実施に当たっては相当な時間と労力が必要となりますので、2007年4月に向けた綿密かつ周到な計画が必要不可欠です。

また、現在職員は退職共済年金に加入しておりますが、現在の共済年金の財政状況を明確にしていただき、移行に伴い、職員や新会社に追加負担や、年金額の減額等の不当な不利益が生じないようにお願いしたいと思います。

6.経営委員会について

私自身が諮問会議でお願いした点ですが、新会社のビジネスモデルや新たな経営計画の策定は、本来新会社の情報システム構築の前提となるものであり、新会社の円滑なスタートアップを可能にする観点から、経営委員会については、できるだけ早期に立ち上げ、新しい経営について考えることが望ましいことは言うまでもありません。

7.監視組織について

監視組織によるレビューを諮問会議で提案したのも私であり、その趣旨は「政府がステイツマンとして10年後「民有民営」を目指すというビジョンを示すことはいわば当然であり望ましいこと。ただし、率直にいって10年後社会経済情勢がどうなっているかは誰にも分からない。今から決め決めにするよりも3年毎にレビューを行うことが望ましい」ということです。
 また、民営化の「基本方針」によれば、郵便貯金会社と郵便保険会社を100%分離して「民有民営」を目指すこととされていますが、そもそも金融機関を小刻みに分断することが世界の趨勢かというとそうではなく、世界の流れはシティ・グループやINGも生損保、証券、信託などをグループ化して金融コングロマリット化していますし、トヨタ、ソニーも事業会社が金融子会社をぶら下げるようになってきています。さらに金融機関の監督に関する国際ルールもバーゼル委員会を中心とした検討によりコングロマリット規制が導入されつつあるところです。今後も、この分野では大きな変化も予想されるので、経済社会の進化の度合いで見直しを行うことができるようにという提案をしたものです。
 実際に「基本方針」には「郵便貯金会社、郵便保険会社については、移行期間中に株式を売却し、民有民営を実現する。その際には、新会社全体の経営状況及び世界の金融情勢等の動向のレビューも行う」、「監視組織は、民営化後3年ごとに、国際的な金融市場の動向等を見極めながら民営化の進捗状況や経営形態のあり方をレビューする」と諮問会議での議論を正確に受けて記述されています。

ところが、有識者会議においては、以上のような趣旨とは全くかけ離れた議論が展開されているのではないでしょうか。監視組織の役割を新会社のいわゆる肥大化や新しいビジネスの監視を行うという民営化会社の内政関与の手段へと趣旨が入れ替わっています。これは「基本方針」の趣旨から誠にかけ離れたものと考えます。

現在の株式会社等のあり方、Corporate Governance、そしてCSRから考えると、新しいサービスや商品を開始するかどうか、会社間の受委託をどうするか、などという経営上のマターは、法的、社会的規範の枠内での定款、そして取締役会の役割にするのが筋かと思います。取締役会は、社外役員を少なくとも半数程度入れて自律的なガバナンスを効かせることとし、今問題の監視組織はもっと幅広く高い視点から、民営化・規制緩和の進展、外側からみた新会社の経営スタイルのモニター等についてのレビューを担当することが「基本方針」に沿った考え方かと思います。

また、行政が関与する事項については、主務大臣や、公正取引委員会等の監督組織が既に存在しておりますので、これらに加えて監視組織を設けて規制を行うとすれば、市場の常識を超えて新会社にのみ、「2重/3重規制」を課すことになります。許認可を含む経営上の重要事項については、監視組織から「意見を頂く」のはよいとしても、判断をするのはあくまでもまず自律的に経営、そして主務大臣と考えます。屋上屋の屋のような新たな行政機関を設置することは、行政の効率性や透明性を阻害し、新会社の自律的発展に反するものになると思います。

 以上、僭越なェら現時点での有識者会議のご議論に対する公社の意見を率直に述べてまいりましたが、私は常日頃から、もし民営化するのであれば、お国としての改革の目標である財政改革、金融システム改革、地方改革の各種改革との整合性と合目性が必要ということを申し上げてまいりました。また、同時に公社の3つの経営ビジョンである(1)国民・利用者へのサービスの向上、(2)郵政事業体の経営の健全化と国家財政への貢献、(3)職員にとっての働きがいの向上という、3つの要件が、公社で経営するよりも、民間で実施した方がより良くなることが重要とも申してまいりました。民営化するのであれば、悪い民営化ではなく本当に民営化の意義を活かしうる良い民営化となるよう、「基本方針」や「5原則」をしっかり踏まえたご検討をしていただけますよう、重ねてお願い申し上げます。

以上