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郵政民営化に関する有識者会議第15回会合 議事要旨

日時
平成16年10月28日(木)
10:05~12:00
場所
中央合同庁舎第四号館(2階)
共用第三特別会議室

○中城審議官 それでは、お待たせしました。これより郵政民営化に関する有識者会議第15回会合を開催いたします。本日はお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。
 早速議題に移らせていただきますが、これまでと同様、資料説明につきましてはポイントをかいつまんだ形でさせていただきます。
 それでは事務局より、移行期における郵便貯金会社、郵便保険会社の業務範囲、郵貯・簡保の既契約を新契約と一括して運用するための具体的な仕組み及び移行期の終了時期の3点につきまして、お手元の資料に沿ってご説明させていただき、その後、議論いただきたいと存じます。

○竹内審議官 郵便貯金担当の審議官の竹内でございます。私の方から貯金を中心にご説明させていただきまして、場合によりましては隣の篠田審議官の方から保険についてもご説明いただくという形で進めさせていただきたいと思っております。
 それから、大変大部の資料でございますので、今日は目次という紙をそこに配らせていただいておりまして、テーマが5つございます。そのページ数を書いたところが有識者の皆様にご議論いただくA案、B案が載っているというページでございます。適宜これを使っていただきたいと思います。
 まず、限度額の取り扱い、1ページでございますが、これにつきましては、基本方針は、当面、限度額を現行水準に維持するということになっております。
 A案、B案は、皆様の参考にするために、事務局の考えの整理としてお示ししているところでありますが、A案は限度額を現行水準に法定する。移行期間中でも、監視組織の判断で、法改正による限度額を引き上げたらどうか。下の方にございますが、一方こういう場合には状況に応じた機動的対応が困難ではなかろうかというのがポイントでございます。
 B案の方は、政令で限度額を定める、監視組織の判断に基づき、段階的に政令改正を行う。また保険につきましては、監視組織の判断に基づく認可により、段階的に引き上げるということも考えられます。ただしこれにつきましては、一方にございますように、容易に限度額の逐次引き上げが行われ、民業圧迫となるおそれはないか。したがいまして、2ページでございますが、そういう問題を避けるためにも、法令において大枠を示した上で、具体的な基準はガイドラインに定めるということでございます。
 以下、3ページから16ページまで資料がございますが、本件に関しましては一応7ページに「郵便貯金総額制限額の沿革」というのがございますが、ちょっとこれはわかりにくいので、8ページをごらんいただきたいと思います。ちなみに、現在の郵便貯金につきましては、限度額は平成3年に700万から1,000万円に引き上げられているところでございます。
 それから、もう1つ9ページでございますが、これは定額・定期貯金金額段階別保有状況、サンプル調査でございますが、一体どの辺に貯金があるのだろうかということでございます。平成13年の5月14日から18日の間でのサンプル調査でございます。300万以下のところで、人数で申し上げますと3分の2ぐらいがいらっしゃる。また一方、900万円超も人数で4.7%あるというところでございます。
 それから1ページめくっていただきまして、これは民間金融機関の方でございます。民間金融機関につきましては、これは注にございますように名寄せが行われておりません。法人でごらんいただきますと、口座数で見ますと、一番右の上でございますが、1,000万円未満、93.3%は1,000万未満。個人につきましては、1,000万未満が99.4%。ただし名寄せをするともうちょっと%が下がるだろうということでございます。
 それから、11ページから12ページまでは省略をさせていただきます。13ページ以下は保険の資料がございます。
 以上でございます。
 それでは続きまして23ページ、貸付等の段階的拡大をどうするかというところでございます。これにつきましては、一番下のところでございますが、基本方針では、民有民営化の進展に対応して、厳密なALMの下で貸付等も段階的に拡大するようにするということでございまして、移行期当初とその後の段階的拡大について整理したものをここにお示ししております。
 ちょっと戻っていただきまして23ページでございますが、移行期当初については、Aの方は、基本的には、同年3月末の公社の業務範囲と同様としてはどうか。Bの方はある程度拡げたところからスタートしてはどうかという問題提起になっております。
 Aの方では、同様とした場合には、民営化されているにもかかわらず業務範囲が公社と同様のままでいいのかという問題があろうかという問題提起がされております。一方Bの方では、ある程度広げるといっても、イコールフッティングが完全でない段階での業務範囲の拡大は民業圧迫になるのではないか。それにつきましては、限度額と同じように監視組織チェックという工夫もあるかということを申し上げております。
 続きまして、業務範囲の段階的拡大の方でございます。24ページでございますが、ここにつきましては、限度額と同様、監視組織の判断に基づく認可によって拡大を行ってはどうか。その場合には、下にございますが、法令において大枠を示した上で、具体的な基準はガイドラインで定めるという提案をさせていただいております。
 一方、Bの方でございますが、これはやや技術的というか、回りくどい言い方になっているのでございますが、免許を与えるに当たって条件をつけ、それを順次緩和していく案でございます。しかし、やはり一方以下に書いてありますように、これにつきまして監視組織のチェックが必要ではないかとの問題がございます。
 その関連で、26ページから32ページまでが郵貯関係、33ページから37ページまでが保険関係の資料でございますが、これは省略させていただきまして、また後でご質問等で必要のある場合はご説明させていただきたいと思っております。
 続きまして、郵貯、簡保の既契約を新契約と一括運用するための具体的な仕組み、いわゆる新旧勘定の話でございます。これは38ページ以下でございますが、大変わかりにくいので、ここにつきましては私どもの事務方の考え方をやや詳しくご説明させていただきたいと思っております。
 本件につきましては、経済財政諮問会議においていろいろご議論がされたところでございまして、その基本方針の記述を私どもなりに要約すると、以下の3点になろうかと思います。
 まず、公社勘定は公社承継法人が保有し、その管理・運用を郵便貯金会社、郵便保険会社がそれぞれ受託する。運用に当たっては、安全性を重視する。2つ目が、公社勘定に関する実際の業務は郵便貯金会社、郵便保険会社に委託し、それぞれ新契約分と一括して運用する。さらに、公社勘定から生じた損益は、新会社に帰属させる。基本方針ではこの3点が示されているところでございます。私どもといたしましては、この基本方針を満たすようなスキームといたしまして、原案を作成する上で意識した点が次の4つでございます。
 1つは、政府保証債務は公社承継法人という独立した法人に帰属させる。他方、新旧契約に係る運用資産はいずれも新会社で運用し、それに伴う損益、リスクは新会社に帰属させること。それから3つ目は、国民負担の発生をできるだけ回避すること。さらに4つ目は、国債市場への影響をできるだけ小さくするということでございます。
 そういう観点から、具体的スキームとしてお示ししておりますのが、44、45ページにございますスキームでございます。44ページにつきましては、特別預金スキーム、45ページが信託スキームということでございます。
 これは46ページに、まず具体的に振り分けのイメージということでお示ししておりますが、16年3月末決算を前提とした場合には、いずれも現行公社の定期性預金150兆円、多分それぐらいになると思いますが、19年4月につきましては承継法人に、通常貯金約50兆円は郵便貯金会社に承継するということでございます。これにつきましては、特別預金スキーム、信託スキームと同じでございます。
 それでA案とB案ということで、44ページでございますが、まず44ページのA案では、承継法人に承継した運用資産をA案では新会社への特別預金、負債である政府保証つきの定期性預金のいわば一種の鏡ともうしますか、ミラーとしての預金を資産として持つ形になります。一方、B案では、新会社へそのものが信託されるという形になる違いがございます。
 さらに、A案の場合は、特別預金保全のために、44ページにありますが、先取特権を付与するということでございます。また、新会社の運用規制といたしまして、特別預金と同額の安全資産で資産を保有して運用するという形でございます。
 B案の45ページの方の信託でございますが、信託でございますから、信託財産は新会社の財産から隔離されます。安全運用は信託の中で指図するということでございます。
 今申し上げましたことをまとめましたのが、大変わかりにくくて恐縮ですが、38ページ以下のこの論点表でございます。なお、論点表の最後のところでございますが、特別預金に保険料がない場合には、新会社の超過利潤になるのではないかという記述をしております。信託の場合にも、損益が帰属するので、実質は同じでございますが、自分のB/S上では預金という形になっておりませんのでは因果関係が弱いのではないかと考えまして、対比した記述が書かれているところでございます。
 大変技術的でございまして、おわかりにくいかと思いますが、A案、B案の違いについて改めて私どもなりに簡単に申し上げますと、38ページの下にございますように、A案は新旧一括して運用するのに対しまして、B案では旧契約に係る運用資産を信託勘定として一義的に分離するという点、したがってB案の場合には、基本方針にありますような損益の一体化を図るためには、事後的に補填するということになるわけでございます。
 なお、新会社が自由に運用できる資産の額でございますが、A案の場合でも、特別預金相当分は安全資産の運用を義務づけていることから、B案の自己勘定と同じになります。スタート時点50兆円でございます。さらに、新会社がトータルとして運用する分も、A案、B案では違いはございませんで、約200兆円ということでございます。
 やや細かいことを申し上げて恐縮でございますが、資産規模とリスクという点では、A案は外観上資産規模は相対的に大きいが、その分抱えるリスクに一覧性があるものでございます。B案は、外観上資産規模は相対的には小さく見えますが、事後的に損益が移転されることを考慮すれば、信託勘定分のリスクも抱えることになり、すなわち一覧性には欠けるかなという問題がございます。
 それから、新会社のALMでございます。A案は、当初は現状と大きく変わらず、徐々に変化していくことが想定されます。一方、B案でございますが、これは自己勘定、他人勘定とも、特にスタート時の負債構造が特徴的、自己勘定は当初流動性預金しかございません。他人勘定の方は新規預け入れがなく、払出しのみになりますので、例えば運用面で運用年限の短期化などの起こる可能性があります。
 それから、最後に国民負担の回避という、先ほどの整理した問題点でございますが、A案では元本保証かつ利回り確定の預金なので、新会社が破綻しない限りは政府保証債務を保有する承継法人はリスクフリーでございます。一方、B案は信託なので、時価評価の問題もございまして、一義的には承継法人はリスクフリーにならないということでございます。このために、先ほど申し上げたように事後的な損益移転等の仕組みを設けることになっているというところでございます。
 大変説明が技術的でございまして、申しわけございませんが、本日皆様のご意見をいただいた上で、関係方面ともさらに調整を行いまして、適切なスキームを考えていきたいと考えているところでございます。
 引き続き簡保の方、保険の方のご説明をさせていただきます。

○篠田審議官 簡易保険担当の篠田でございます。
 新旧契約の一括運用の問題につきまして、簡易保険のスキームについてご説明をさせていただきたいと思います。資料の中では41ページにA案、B案の論点の説明がございます。
 具体的なイメージ図が50ページについておりますので、先に50ページの方をごらんいただきたいと思います。
 郵便貯金の場合と同様に、簡易保険の場合も2つの案をご提示させていただいております。50ページの方が再保険スキーム、51ページの方が信託スキームでございます。
 基本方針における記述、両案を作成する上で意識した点につきましては、先ほど竹内審議官から貯金についてご説明があったとおりでございます。簡易保険の場合には、現行公社の簡易保険契約は、公社承継法人に承継されまして、郵便保険会社に承継される簡易保険の契約は、貯金の場合と異なりまして、0でございます。貯金の場合には流動性の預金につきまして最初から新会社の方に帰属させることとなっておりますが、簡易保険の場合には、郵便保険会社は政府保証のつかない契約を0からスタートさせるということになります。
 両スキームのポイントは、50ページ、51ページの左上に点線で囲ったところに説明してございます。
 まず、A案の再保険スキームの方でございますが、公社承継法人の個々の契約につきまして、旧契約の責任準備金相当の運用資産を再保険料として再保険を行うという考え方でございます。したがいまして、公社承継法人のバランスシートは、事実上、資産・負債ともにほぼ0になるということでございます。
 郵便保険会社は、資産及び負債を一体管理・運用いたしまして、再保険契約につきましては先取特権を設定するという考え方でございます。
 郵便保険会社は、再保険契約及び新契約に対する配当について、それぞれの契約の貢献度合いに応じまして配当基準を合理的に設定して分配するということになります。
 一方、この再保険スキームをとりました場合の課題でございますけれども、公社勘定に係る追加責任準備金等につきましては、現在まで郵政公社におきまして非課税で積み立ててきております。これにつきまして、再保険スキームをとりました場合には、郵便保険会社の新たな業務として認識されました場合に課税の問題が出てくるという問題がございます。このあたりは主税当局との調整が必要になってまいります。
 次に、51ページの信託スキームでございますけれども、左上の四角のところをごらんいただきたいと思いますが、自己勘定、他人勘定別のALMが存在することになります。
 承継法人と郵便保険会社の損益が個別に認識されまして、その結果、基本方針では損益を帰属させるということになっておりますので、この生じた損益、すなわち利益もあれば損失の場合もあり得るわけですけれども、それを事後的に新会社に移転させるということになります。
 勘定を分離することから、新旧間の経理は明確化いたします。
 承継法人の資産は、信託することで郵便保険会社のリスクから隔離されますので、安全資産中心に運用するということを指図していくということになります。
 以上のようなイメージでございます。
 これを踏まえまして41ページにお戻りいただきたいと思います。今私がご説明いたしましたように、A案の方が再保険スキーム、B案の方が信託スキームでございます。
 A案の方の最初の○ですけれども、最初の黒ポツのところですが、再保険は、旧契約の保険金の支払いがあったときに、郵便保険会社の負債における責任準備金を減少することとする。再保険には政府保証を付さない。再保険は、保護機構の対象外ということになります。
 一方、B案の方ですけれども、信託財産については、旧契約の保険の支払請求があったときに、郵便保険会社が承継法人を代理して信託勘定から保険金を支払うということになります。
 41ページの一番下のところですが、新旧勘定に係る資産の一括運用によりまして、公社勘定に係る損益が結果として郵便保険会社に帰属をすることになります。一方B案の方では、自己勘定と他人勘定が別々に存在しますので、契約者配当後の公社勘定の損益は、事後的に郵便保険会社に帰属させるということになります。これは利益の場合も損失の場合もあり得るということになります。
 ALMの一括管理につきましては、再保険スキームの方が容易でございますが、信託勘定の場合には、両勘定を融通する仕組みが必要になってくるということで難しさが出てまいります。
 主な点は以上でございます。

○竹内審議官 それでは、大変恐縮でございますが、続きまして56ページでございます。これは特例法の民有民営の判断をどうするかというところでございます。
 これにつきましては、A案、B案に共通として書いてございますのは、民有の判断については、民営化の進捗状況等を踏まえ、我が国金融システムの安定性への影響を勘案しつつ、監視組織が新会社全体の経営状況及び世界の金融情勢等の動向のレビューを行った上で判断することとしてはどうか。ここは共通でございます。
 判断基準の位置づけでございますが、Aの方は主要事項は法定すべきではないか。Bの方は、大まかな判断要素を規定し、政府出資比率など具体的な判断基準は法定しないことにしてはどうかということでございますが、これにつきましてはまた、57ページにございますように、判断基準のためのガイドラインを定めてはどうかというご提案をさせていただいているところでございます。
 関連資料は省略させていただきまして、60ページでございます。60ページは、国債市場への配慮を制度設計上どのように盛り込むかということで、大量の国債を保有していることを踏まえ、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮を行うという基本方針がございます。
 これにつきまして、Aの方は、移行期間中に限って、現在の郵政公社が行っているものと近い形で、現在は中期計画、毎年度の計画が総務大臣の認可や届出となっておりますが、それに近い形で、緩和した形で資金運用計画の策定・公表を義務づけてはどうかということでございます。これに対しましては、認可のようなことでは計画に縛られて収益を損なうことはないかという問題点があります。しかし、公社勘定と一括して運用する新会社の国債運用額は極めて大きいため、市場関係者等の懸念に対する何らかの工夫が必要ではないかというさらなる反論もございます。
 一方、Bの方は、新会社の積極的なIRの充実に委ねてはどうかということでございます。ただしこれにつきましては、自主的な公表のみでは市場関係者の予測可能性を担保することが困難ではないかという問題が指摘されております。
 以下の資料はまた必要があればご説明ということで省略させていただきます。大部でございますが、以上でございます。
 それと、本日吉野先生がお休みでございまして、一番最後の国債市場のところにつきまして席上で読んでくださいというご意見がまいっておりますので、ここだけ読ませていただきます。
 郵貯・簡保は、多くの国債を運用しており、国債市場の主要な参加者であります。今後の運用も、ある程度安全資産で�る国債中心で行くべきと考えます。もちろん完全な民営化後には自由な運用でよいと思います。これまで過去に国債の大量発行により市場の不安定性が増し、運用部ショックによる金利の乱高下、また今年6月の金融政策の変更を予想した市場金利の乱高下など、大きな局面に遭遇しております。
 郵貯・簡保の民営化へのプロセスでは、無用な国債市場への悪影響をなくすことが大切であると考えます。そのためには、国債運用に関する運用方針を法的に定め、市場参加者への透明性を確保して、市場金利の無用な混乱を避けることが不可欠であると考えます。
 民営化後には運用内容の開示は全く必要なく、新しい経営方針のもとで運用することが必要だと考えます。
 以上でございます。

○中城審議官 それでは、たくさん論点がございますが、ただいま説明させていただきました論点に関しまして、ご意見、ご質問などいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初に、1ページ目の限度額の取り扱いをどうするかというようなところから始めたいと思いますが、よろしくお願いします。

○宇田プリンシパル 最初に一言だけ。
 各論で1つひとつの議論というのはこれからあると思うのですけれども、一番大事なのは、この移行期に政府の関与あるいはこういったような旧勘定からの流入というようなものが、基本的には郵貯において10年ぐらいは残るわけですね。それで、その間のこのテクニカルな案がAかBかという議論の前に、その間のイコールフッティングはどうするのかということ。それから、一方で各事業の自立をどうやったら促せるのかということ。この間、民営化後の事業が自立することを促していかなければいけない。窓口会社がどんどん自立していってくれないと、リスク遮断等々の面からも金融会社も自立できないという関係にあると思います。そこの関係あるいは思想のところを少しはっきりさせた上で議論をしていくか、あるいは議論の中でそういうことをはっきりさせていくか、多分後者だと思いますけれども、考え方をはっきりさせておいた方がいいのかなと思います。非常に難しい議論になってくると思いますので、ちょっと全体観を持った上で議論をしていきたいというのが私の意見でございます。

○伊藤教授 全体観にかかわる話が今出ましたので、これも後で皆さんのご議論をお聞きしたいと思うのですけれども、今、宇田委員がおっしゃった、まずイコールフッティングの問題、つまり競合する民間の企業とのいわゆる競争条件の問題というのが既にいろんなところで議論されていて、これが重要であることはまず間違いない。
 それから、2つ目に、事業の自立というのですか、民営化本来の目的である、民営化をやることによってこの会社がしっかりとジネスをやっていける構造にするということも重要だろうと思いますし、それからこの委員会で余り今まで議論にしなかったのですけれども、今までの既存の秩序の問題、例えば雇用の問題だとか、あるいは大きく変化することによって発生し得る問題、これは恐らくいろんな意味で政治的な問題ともかかわってくると思いますけれども、それも配慮しなければいけない。だから移行期間を設けるわけですけれども。
 多分それ以外に、恐らく、特に今回のところでは、議論しなきゃいけない話だろうと思うので、これまたぜひ皆さんにいろんな局面でご意見をお伺いしたいと、私も考えを申し上げてみたいと思うのは、やはりもう1つ大きな問題というのは、市場との関係というのが非常に大きな問題で、とにかく膨大な規模の資産が動くわけですから、先ほど最後の方でちょっと議論があったのですけれども、例えば、思惑で国債市場が非常に乱高下するようなことがあってはいけないと思いますし、あるいは別に国債市場だけにかかわらず、ちょっとこれも細かい話なんですけれども、実は移行期間は2007年から始まるわけですけれども、1つの事例ですが、これから1~2年の間に例えば金利が急騰するようなことがもしあるとすると、移行期間の前に駆け込みで、例えば定額貯金をたくさん入れましょうなんていうこともないとも限らないわけですね。そうすると例えばここに書いてあるシナリオもまた崩れるかもしれないし、そういう意味でマーケットとの見合いだとか、マーケットの関係というのはやはり非常に重要で、そこのところをどう考えるかということは多分かなり全体の設計をやるときに非常に重要で、とにかく規模が大きい金融機関のいわば大きな舵取りですから、そこのところはぜひ考えなきゃいけないということ。
 それから、これももういろいろなところで議論されておりますけれども、民営会社に移行するということは、当然そのルールについて、単に国内の既存業者との関係だけではなくて、いわゆる国際的な縛りにもかかわるわけで、わかりやすくいえば、特に保険のようなところというのは、例えばアメリカのようなところは非常に関心を持っていて、WTO等のコミットメントもあるわけですから、そういうようないわゆる国際的なルールみたいなものと余り抵触しないような形でやっておかないといけない。
 だから、これまで盛んに議論していたイコールフッティングの問題と事業の自立の問題だけじゃなくて、もちろん既存のこれまでの秩序との調整という問題も含めて、さらに市場へのインパクトの問題と、それから国際的なコミットメントもぜひいろんなところで議論させていただければと思います。

○翁主席研究員 私もやはり限度額の議論とか業務拡大の議論というのは新旧勘定の設計と密接に関連する話だと思います。
 私も新旧勘定分離で先ほどご説明で幾つか意図した点というのは理解したつもりですけれども、やはりこの新旧勘定分離の今提案されているものでは、暗黙の政府保証の問題が残り、イコールフッティングの確保が民営化の重要な1つの目標であるにもかかわらず、これは確保できていないというように思います。そのように考えますと、やはりこういった設計を前提に考えると、業務の拡大の制限とか、または限度額の維持の議論というのも当然そこに関連させざるを得ない、いわばパッケージでの議論であるかと思います。
 いずれにせよ、ご提案の新旧勘定分離スキームで、この暗黙の政府保証の問題、イコールフッティングの問題をどういうふうにここで説明しようとしていくのかということが、1つ一番最初の問題として提起させていただきたいと思います。

○奥山相談役 私、もうちょっと実践的な話でお願いしたいのですけれども、もしこの移行期において全く限度額引き上げとか、後で新商品も出てくるのでしょうけれども、そういうことを行わないとした場合どういうふうな損益になっていくのか、それから国債の売却がどのくらい出てくるのか、あるいは政府保証の預金が払い戻されて、どれだけ歩どまりがあって新会社の預金として残るのか、そういうことを前提として収支がどうなるのかということをシミュレーションをぜひ出していただきたいというふうに思います。その上で、何もしないととても損益が持たないということが明確になるならそれはそれとしてまた考えがあると思うのですけれども、その中で損益がきちっとプラスとして出てくるなら、やはりイコールフッティングにきちっとした上で対応していかないとまずいのではないか、そういうふうに思います。

○宮脇教授 私も基本的には同じですけれども、やはりでき上がりベースの新しい制度のガバナンスの問題と、制度移行期におけるガバナンスの問題はある程度分けて考える必要があると思います。制度移行期のときには、先ほど伊藤先生が整理くださいましたけれども、これを同時並行的にすべて整理していくというのはなかなか難しいので、制度改革のガバナンスのときには、そこの優先順位をある程度つけていかざるを得ないと思います。
 ですから、今ご指摘があったようにシミュレーション等があれば、そこの優先順位等を考えながら制度移行におけるガバナンスというのを制度の中で全体としてどう考えていくのか議論する必要があります。各論部分から入って全体の整理というのを徐々につけていくというのが基本的だと思いますけれども、やはり全体としてどういう優先順位、ガバナンスをつけていくのかというところを明確に共有しないと、非常にパッチワーク的になってしまうのではないかという、そういう懸念は持っています。

○中城審議官 非常に総論的なご意見をいただいたわけなんですけれども、シミュレーションにつきましては、今いろいろシミュレーションを準備をしているところでございますけれども、シミュレーションでプラスになるのであればイコールフッティングをきちんとやらなければならないというようなご意見だったと思います。そこのシミュレーションがどうなるかというのはまた、今作業をやっていますので、それができたところでご報告させていただきたいと思いますけれども、そのこととは別にして、例えば限度額というものをどういうときに緩めていくのか、それは法定してきちんとやるべきか、あるいは政令改正などのような形で少し弾力的にやってはどうかというのが第1の論点でありまして、それと似たようなのが貸付等の段階的な拡大とか、あるいは民有民営化の時期とか、そういったところでも同じような議論になろうかと思いますけれども、総論的なこと以外に個別のところでまたご意見あればお願いしたいと思うのですが。

○伊藤教授 今のいわゆる移行期の限度額、いわゆる預金額、受け取りと貸し出し額の両方あるのですけれども、一般論では次のように考えるべきだと思います。
 それは、最終的に民営化に行くということが目的で、そこにできるだけ早く行けるということが重要だと思うのですね。ただ、今議論に出ていますように、政府保証だとかいろんな、い墲艪骭ゥえない保証がある中で安易に民間と同じようなベースにしてしまいますとイコールフッティングの問題がある。
 そうすると1つの考え方として、政府保証のようなものがあるうちはなかなかすべて自由にするというわけに行かない。そういう意味ではここにあるような限度額についてはやはりかぶせておいた方がいいだろう。先ほどの資料を見せていただいても、現実問題としても、例えば預金の方を見ますと、確かに4.何%の方は900万円以上持っていらっしゃいますけれども、全体として見ると、人数で見れば影響は少ない。ただし、完全民営化に向けるいろんな条件を満たしていけばできるだけ早く民営化をさせてあげて、その上では自由度を持たすことができるようにする。つまり民営化のスピードを速めるということをこの移行期の会社がインセンティブで持ち得るような仕掛けをきちっとつくってやるということが必要だと思います。つまり我々は余り今まで議論――あるいは私欠席したときに議論があったのかもしれませんけれども、民営化のスピードをどれだけ早くさせてあげるかということ自身も実は経営の重要なマターであって、それをこの仕掛けの中に入れてやるということが大事だ。
 そうしたときに、ある程度法律でそのプロセスを明記するのか、それとも柔軟性を持たすのか、ここは非常に難しいところです。あえて学問的な話だけさせていただくとすれば、柔軟性があるというのはいい面と悪い面とあるのです。確かに柔軟性というのは状況に応じてすばやくできるという意味があるのですけれども、裏を返せば要するに当てにならないということでもあるわけですよね。そのときの政治状況だとか、あるいは行政の判断とかで、せっかく頑張ってある条件をクリアをしたのに、何でここで規制の撤廃を認めてくれないのかということになりかねない。だから法律である程度明記するということができると、機動性はないように見えるのですけれども、逆にそれをクリアすれば、完全民営化をスピードアップする上での条件に後からけちはつけられにくいということでもあります。私には法律の土地勘がないので、普通経済学者するような議論を紹介させていただきました。コミットメントとフレキシビリティーのトレードオフをどういうふうに考えるかというところが多分大きなイシューなのかなと思います。ただ個人的にはある程度民営化が見えていける方向に、完全に民営化に見える方向に行くまでは、なかなかそう安易にこの限度額を広げるというのはやはりちょっと難しいのかなと。ここの部分は私の個人的な意見でございますけれども。

○宇田プリンシパル この民営民有化の要件というお話がありましたけれども、これは法律的に見るとこういう議論になるのかもしれませんけれども、実際にこの金融の2つの会社が民有化できる条件というのには、市場から見てどうなのかということが当然あると思います。それから、その企業そのものが果たしてそれに耐え得るものなのかということも当然あるわけですね。
 例えば民有化されるというときに、5つぐらいの要件を考えてみる。1つはこの会社が収入支出の面で一定度それが透明に見えているということ。委託手数料の問題と、それから今のこの旧勘定の問題になると思います。もう1つは、見えているだけじゃなくて、やはりこれは自立しているということ。この会社自体が自立しているということです。
 もう1つは、いろんな介入によって収益が大きくばらつくかどうか。規制リスクにさらされているかどうかということも非常に大事なところでありまして、何かがあったときに、例えば窓口に強制的に補助金を与えなければいけないとか、あるいはこういう入り口のところが何かによって大きく左右されてしまう要素が残っていると、難しいというのが3点目。
 4番目は、成長の余地があるというのは非常に大事です。最後に経営している者がちゃんとトラックレコードを持って経営しているかどうかということで、それまでの間実績を積んでいて、民有化してからもちゃんとやってくれるだろうという信任があることも大事だと思います。
 今の中で、例えば成長の余地だけで行けるのかと考えてみると、これは無理な話でありまして、やはり最初に申し上げたようなところがクリアされていることが非常に大事と思っています。成長のシナリオというのは別にそれまでのということではなくて、それからのということでいいわけでありまして、例えば経営者にトラックレコードがあって、これから自由度が増してくればいろんなことができるだろうという期待値でもよいのではないかと思います。
 そういうことを考えたときに、それに向かってじゃどうしてデザインをしていくのかということです。移行期はいろいろな意味で入り口も出口も介入が残っている。その中で新しいことを始めさせていくと、かえって民有化のスピードを遅らせてしまうということにもつながる。別に私は厳しいことだけを要求するつもりは全くないのですけれども、本件の場合にはある程度制約を課しておいて、経営陣には一刻も早く今言ったようなことをクリアしていただいて、早く民有民営化の道を歩んでいただければなと。そのためのインセンティブというのはガバナンスの問題になるかもしれませんけれども、その経営者のミッションは一刻も早い上場であるということが明確に示されるということが非常に大事です。そのミッションのもとに経営を進めていく。その方は必ずやこの最初の問題をクリアしないとミッションは達成できないということがわかっていると思いますので、最初の問題を早くクリアをした上で早く成長サイクルに乗せるということを内外ともに進めていく、こういうことが多分シナリオとして考えられるのじゃないかなと思います。

○奥山相談役 私はさっきちょっと申し上げたのですけれども、後の参考資料で貯金の定額貯金とか定期預金ですか、15年度末で173兆円あるわけですね、これが順次0に近い形に、47ページですか、最後はなっていく。その間に、定額貯金はなくなるけれども、それが郵貯会社の預金としてもしほとんど残るとしたら、これはもう手の打ちようがないというふうな感じがするわけですね。やはりそれだけ預金が残ってしまえば、運用は国債しかあり得ないだろうと。
 そしてまた、預託資金がこれから数年の間に100兆円以上ですか、また重要な形で市場に出てくるわけで、この運用もどうするのだろうかということを考えた場合に、大変な金額をもう国債で運用せざるを得ないのではないか。そうなるとやはり個人国債等をどれだけその預金に振り替えて運用していけるのかというふうなこととか、あるいはもっと他の方の運用に向けることができるのか。
 いずれにしろ、銀行等を見ても今ほとんど国債で運用しているという状況は、これ以上金額が大きくなったらどうしようもない。今でさえ国債を運用している中で、本当にもし価格変動があった場合のリスクはどうなんだろうかというおそれがあるわけで、そこが残る限りはとても自由に運営すると言ったって実質自由にできないのじゃないか。そのおそれを持っているわけです。ですから、どのように移行期間の間にトータルとしての残高が推移しているか、もっと言えば、逆にもっと民間に、個人なら個人で預金をやめてほかの方に運用していくということを含めて、この郵便貯金会社の残高が減少していくかということを確認しながら見ていきたいということなんですね。ですから極端に言えば半分に預金が減って、100兆円ぐらいになれば、これはもう早く100%民間の事業会社に行くようにスピードアップすべきだろうというふうに思いますし、多分それぐらいの規模になればいろいろなことが可能になるかなというふうに思います。
 以上私の意見です。

○翁主席研究員 規模の問題というのはどうしても規模自体が大きいということが暗黙のトゥー・ビッグ・トゥー・フェールではないかという見方をされるという面があると思います。しかもさらに、新旧の勘定が完全に分離されていないというようなスキームになった場合には、やはりそこでも暗黙の政府保証の問題がどうしても存在して、民間金融機関に対するイコールフッティングの問題というのは確保できないというように思います。
 負債というのは銀行にとってアンコントローラブルなものでございますので、規模の縮小に向けてやはり何らかの規制をかけておかざるを得ない。やはりこういった問題というのは、本来は規模の縮小に対してインセンティブが働くような仕掛けができれば最もいいのですけれども、やはりそれはなかなか難しいと考えると、ある程度の期間、限度額を据え置きするということがどうしても必要になってくるのではないかというように思っております。

○宮脇教授 基本的には限度額について一定期間据え置くという、そういうことが必要であろうと思います。
 法律の問題ですけれども、法律との関係で行くと、その柔軟性という問題と同時に、法改正をして限度額を例えば変えるという場合に、どうしても法改正の通常のやり方ですと、その経営に対する時間的ラグというのでしょうか、決定のラグみたいなものが非常に大きく効いてしまうという問題が一方ではあると思います。
 それから、A案とB案というのは、確かにガイドラインとか法とかいうので、言葉としては違うのですけれども、実質的にはこれはほとんど変わらない形での内容というのをつくることが恐らくできるはずであって、法改正そのものに対する進め方、そういったところに法改正のやり方とは違うようなものをつくるのかどうなのか、そういった部分で経営の判断におけるラグといったようなものに配慮していくということは必要なことじゃないかというふうには思います。

○翁主席研究員 手続の問題といたしましては、私は先ほど申し上げたようにほとんど完全民営化に近い形になるまで限度額というのは据え置いた方がいいと思いますけれども、それが実現するかどうかについて、やはりこの監視組織の意見を聞くということを義務づけるという形にしておいてはどうかというように思います。

○中城審議官 それでは、23ページの方の貸付等の段階的拡大、これも限度額と似たような議論ではあるかと思いますが、ここでA案、B案と出ているのは、最初に2007年4月の時点で業務範囲を拡大させるのか、B案は少しずつさせる、させたところからスタートする。A案は少なくとも4月の時点では業務範囲は3月末までと同様にするというようなこと。それからそれの段階的な拡大、次のページでございますけれども、段階的な拡大というのを監視組織の判断に基づく認可でやるのか、それとも遂行体制というようなものを免許条件としておいて、それを緩和していくというような考え方、こういうのについての長所、短所を並べているわけですが、そういう点についてもご意見があればよろしくお願いします。

○翁主席研究員 まず、移行期当初については現行どおりの業務範囲であると思います。それはさっきから申し上げていますけれども、暗黙の政府保証の存在とか、兄弟事業会社の存在とか、そういった意味でいろいろイコールフッティングの問題があるからということであるかと思います。
 それから融資については、さっきプリンシプル、伊藤先生や宇田さんからもご説明ありましたけれども、例えば市場からある程度民営化、例えば株式の売却比率が非常に高まるとか、民間がそれを評価するというような形になって初めて貸出業務とかが認められるというような形で、むしろ自立へのインセンティブを高める形で業務の拡大というのを認めていくというのが本来の姿ではないかというように思います。ですから、業務拡大、特に融資などについては非常にリスクの高いものでございますので、慎重に考える必要があるのではないかというように思いますし、例えば金融庁などが与信管理体制などをきちんとチェックした上で初めて始められるというようなことでなければならないし、監視組織もきちんとそれをモニタリングできなければならないというふうに思います。
 それで、業務拡大についての考え方というのは、今私はそういう自立へのインセンティブとか、先ほど何人かの先生からそういった幾つかの考え方が示されましたけれども、監視組織において大まかなプリンシプルというかガイドラインというのをつくっておいて、それで認めない業務の取り扱いは認可事項として、民有民営化の進捗状況に応じて、監視組織の判断に基づく認可によって初めて拡大できるということをとらざるを得ないのではないかなというように思います。
 それで、やはりここは透明な形でやる必要があると思いますので、例えばなぜ申請をするのか、なぜ認可申請を認めたのか、またはそれを拒否したのかというようなことがきちんと公表されるような透明な仕組みをきちんとつくっておくということが大事なのではないかというように思います。

○伊藤教授 私も今翁さんがおっしゃったことと多分ほとんど違わないだろうと思うのですけれども、幾つか重要なポイントがあると思うのですね。
 1つは、最長10年という期間であるとすると、その間に何が起こるかわからない。特に、後でまた議論になるかもしれませんが、金利リスクは非常に大きいですし、マーケットもどういうふうになるかわからない。したがって、最初に全部コンティンジェンシープランというか、将来を考えるプランを全部立てておいてガイドラインをつくるということが本当に可能かどうかということはやはり考えなきゃいけないと思うのですね。
 したがって、やはりある種のその場における判断の余地は残しておかなきゃいけない。それは多分、先ほど翁さんがおっしゃったように、1つはやはりいわゆる監視組織の役割であろうと思いますし、これは多分監視組織だけじゃなくて、恐らくこれは保険とか、いわゆる銀行業務にかかわるところですから金融庁とか、そういうところも当然かかわってくるし、それからそれ以外のところにもいろいろ関係あると思いますけれども、だからそういう意味でコンティンジェンスだけでいかないという意味で監視組織とかが常にウオッチする、それで最終的に判断するというところが必要だと。
 ただ、同時に先ほどから申しましたように、やはりある程度、ここまでクリアすれば完全民営化にスピードアップさせてもらえる、あるいは業務が拡大できるというインセンティブがないとなかなかうまくいかないだろう。したがって、ここにガイドラインというのは、A案の方に書いてあるガイドラインというものの中身にもよるのですけれども、わかる範囲においてはやはりある程度ガイドラインをきちんと書いておいて、ここまで、こういう条件を満たしてみたら、よほどのことのない限りは業アの拡大は認めるべきだというような方向性が必要なのかなと思います。
 もう1つちょっと気になるのは、ちょっと変な言い方なんですけれども、我々の世界でガバナンスをガバナンスするという議論の仕方があって、つまりいわゆる民営化以降の会社の業務をガバナンスするのは監視委員会であり、あるいはいろいろな省庁なり役所なんですけれども、その行動自身をやはりガバナンスするような仕組みがしっかりないと、やはりそこで恣意的になってしまう。そういう意味ではやはりある程度の基本的な方向については法律でガイドラインを書いておくというのは好ましい考え方なのかなというふうに思います。
 以上3点でございます。

○宇田プリンシパル 貸付の段階的拡大ということで、これは企業の貸付とそれから個人向けというのも分けて議論した方がいいのかもしれません。ここでは全部まとめて貸付ということで言うと、これをやるために幾つか条件があると思います。要するにローンのオリジネーションをやられようとするわけで、そうなってくると、一定量の補助が入っている間にこういう業務をやるということは、非常に大きな問題を起こすであろうということは当然予見されるわけです。この貸付というのは、そういう意味からも、移行期間中は、原則として、なしではないかなと思っています。民営化するまではやらないというのが規律じゃないかなと思っています。それがまず1つ。
 もう1つは能力上の問題は当然あって、一定量当然コストもかかるし、リスクコストもかかるし、そういうことをすべてひっくるめて考えたときに、果たして新しい会社ができるのかという問題というのは当然ある。そこの信任は今のところないのだろうと思います。
 最後に申し上げますと、民有民営化された後はいろんなことが自由に任されるのは当然で、それは準備ができているかいないかというのは関係ない話です。これはチームごと持ってくるということもできますし急激に立ち上げるということは幾らでもできる話であります。そのことよりもむしろ、民営民有化した会社は公平性を重要視する会社だといった信任の方が大事ではないかなと思います。
 隙あらばと民業を圧迫しながらやってきた会社だということは民営企業のイメージとしても極めてよくないわけでありまして、そこまでも含めて考えてみると、なぜ移行期の間にこれをやらなければいけないのかという疑問はあります。
 ただクレジットリスクをポートフォリオとして取りたいのだということであれば、クレジットリスクを取った格付のついた商品は幾らでもこれから出てくる。むしろオリジネーションに特化する金融機関が出てきたり、あるいはストラクチャリングのところに特化するというようなものが出てくる中で、保有をしていくという機会はいくらでもある。これは、そういう意味でクレジットリスクをポートフォリオとして取るというのは、これは十分ある話ではないかなと思います。審査をして貸付をしていくということに関しては、私は民有民営化までの間はやってはいけないのじゃないか、やらない方がいいのじゃないかと思います。

○奥山相談役 これは先ほども申し上げたのですけれども、28ページをごらんいただきたいと思うのですが、28ページで現在の郵貯資金の運用状況というのを見ますと、国債が86兆円、それからちょっと気になったところで地方公共団体の貸付が2兆円、それから預託金が112兆円ございますね。この預託金については平成19年度までに漸次100兆円以上ですか、預託金から返されてほかの運用に回るというふうになるわけです。そうした場合に、この貸付の段階的拡大が民間金融機関への圧迫を加えないで拡大するとしたら、一体どこにできるのだろうかと考えたときに、当然この相手というのは零細的な個人が多い。そうするとそういう方々に何らかのローンを行うか、どっちかというと消費者ローン的なものですね。あるいはちょっとそれに毛が生えて、住宅ローン、そういうのが圧迫するとすれば別途全く違う貸付の制度を起こすかというふうになっていくのじゃないか。
 一方で国債市場への影響ということを見ても、この112兆円が何に今後使われていくかといった場合に、そうほかに使えないとすればやはり国債等に回っていくとすると、そうそうそれを貸付に回すということもなかなか難しいのじゃないか。
 そう考えると、具体的には貸付等の段階的拡大といいますけれども、どこに対してどういうふうに拡大していくのかということが非常に難しいと思うのですよ。もちろん完全民営化すれば、それは経営者が考えることで、やりたいところにそういう新しい制度を起こしていけばいいと思うのですけれども、段階的な中ではこれだけのものを安全かつある程度の利回りを得るということになると、一体可能かなということを思いますと、やはり少なくとも他を圧迫せざるを得ないという意味では、このB案の○の2つ目の、民業圧迫となるおそれはないかというところは、私はおそれはあるというふうに見るわけですね。
 したがって、やはりある程度は確定的にして、しかしそれを具体的な組織の中でその自由度を加えていくという意味では、やはりA案的な発想になるのかなと。ただし、そのA案にしても、拡大、拡大というけれども、本当に全体のスケールの縮小を図らない中でどうやって拡大していくのかなというのも非常に、疑問があります。ですから、法律的に言えば、少なくともB案ではうまくいかないのじゃないか。そのように思います。

○宇田プリンシパル ちょっと先ほど申し上げた件で、今のところも含めてですが、先ほど信任がない云々というようなお話をちょっとしましたけれども、2つの点でちょっと確認をしておきます。
 1つは、官の要素が残っている間に貸付をするときによくある話として、リスクに応じた金利は取りにくいですね。要するに中小に貸すときにかなりの金利を取って貸すということに関してものすごい介入が入る。何かあったときに郵貯の低利融資を出せ見たいな話になると、これはとんでもない話になってくるということで、非常に経営としても、多分経営者としてもこれはやりにくいなと感じられるのではないか。
 それから、もう1つは、先ほどちょっと私が申し上げたように、そもそもそういうものが全くなかったとしても正しいプライシングがされるのかという問題で、片方に補助が入ってくる間にどうしても経営のインセンティブとしても民間圧迫的な条件というのに設定しがちになるということです。この2つの面で問題が出そうだなと思います。

○宮脇教授 この問題というのは限度額の問題とそれから貸付等の段階的拡大と、これはこのA案、B案の関係で行くと非常にセットの問題だと思います。
 それで、今奥山さんが言われた点ですけれども、例えば限度額についてはA案というのは、これは法改正という、法というもので規定をする。貸付の段階的拡大というのは、A案というのはガイドラインというところを基本にするということで、例えば限度額のところの考え方で言うと、B案というのが貸付のところではA案という、そういう考え方、流れになっていると思うのです。そうすると、先ほど来のご議論の中で、例えば段階的拡大を初めからきちっと移行期にはしないのだということであれば、A案という形で例えば法によってそれを定めておいて、法改正の手続において非常に限定的にするという話が恐らくA案の中で言うと1つ筋が通って、ガイドラインで行くとすれば、そのガイドラインの内容について、限度額を法定するのであれば、貸付の段階的拡大というところのガイドラインの内容というのは、恐らく限度額の取り扱いにおけるB案のガイドラインという意味とはかなりその性格が違ってくる可能性がある。ですから、私はガイドラインでやるとしても、そのガイドラインの内容ですとか、その修正の仕方といったようなことによって相当違うでしょうし、A案というのが全部同じようなレベルの話で縦で話がついているのかどうかというのはわかりませんけれども、少しガバナンス的に言うと整理が必要なのじゃないかなと思います。

○翁主席研究員 ここのお話というのは郵貯会社の話なんですけれども、先回議論した窓口ネットワーク会社も、やはりこのような旧勘定を抱える郵貯会社や保険会社の代理店になるということでありますので、やはりここでのガイドラインの考え方というのは当然その代理業務を務める窓口ネットワーク会社にもこの業務拡大に関する考え方というのは適用されるということだと思います。
 そういう意味で、本来はできるだけオンバランスシート業務からオフバランスシート業務に行ったほうがいい、すなわち窓口ネットワーク会社でいろいろ売っていって稼いで、非金利収入が出ていけばいい、稼いでいくというようなモデルになるのが望ましいと思っておりますけれども、やはり全体の規制体系としては代理業務を行う窓口ネットワーク会社にも整合的な考え方をとっていく必要があるのじゃないかなというように思っています。

○中城審議官 それでは、次の件、38ページ、これはかなりテクニカルな話ではありますが、具体的なスキームについて何かコメントがあれば。これは38ページに郵貯、41ページに保険の方のスキームがございますが、これについて何かご意見があればお願いします。

○奥山相談役 私はこのA案、B案のスキームで、形としてはB案の信託方式が非常にすっきりしているなとは思うのですけれども、ただ基本方針で言っているところの一体となって運用するというところですか、そこの考え方とそれに反しないということで考えてよろしいのでしょうか。これでいきますと、他人勘定で自己勘定とは分けて、完全に運用が別なような形の気がしますけれども、先ほどのご説明ですと、そこは何かうまく連携する方法を考ヲるというようなことを言ったような気がするのですが、そううまいことできるのかどうかということで、ちょっとそこは確認させていただきたいのですけれども。

○竹内審議官 私どもはここで両方の案を提示しているということは、その点は信託の方でも問題がないであろうということで提案させていただいているところで、もちろん私どものこの案はこれから法制局とか、あるいはまさに奥山相談役の専門であられる企業会計的な問題とかございますので、その辺をまたクリアした上のことであろうと思いますが、少なくとも今ご提案申し上げているのは基本方針の線において原則的に問題がないと。ただ先に申し上げたように、もともと信託は、そもそも論で言えば分離なわけですから、その上で資金を融通したり、あるいは、事後的に損益を移転したりするというスキームについて、理念形とはズレているのではないかとのご指摘は、あり得るものと考えております。従って、やや詭弁ではないかとのご指摘を受けますと、ちょっと個人的には答えにくいところがございます。

○翁主席研究員 幾つかの点を申し上げたいと思うのですが、私まず最初に申し上げたのですけれども、こういった新旧勘定の一体として運用するスキームについて、こういった制度設計をすることについてイコールフッティングとか暗黙の保証の問題にどうこたえるのかということが国民とか民間の事業者に対して明確に説明できるということが重要ではないかと思います。これに実際こたえていないのだということであれば、さっき申し上げたようなほかの手段で、業務規制とかそういうのを入れざるを得ないのだということがきちんと明確に説明できなければいけないのじゃないかなというか、そもそも論の話ですけれども、そこがまず1点です。
 それから、これはもう基本方針に決まっていることではあるのですけれども、やはりこの損益の帰属が、もうければ新会社で、損が出ても、最終的にもしこの新会社が万が一不幸なことに破綻してしまったら、これが預金保険機構の負担になるということになると、やはりそれは民間の金融機関から当然大きな不満が出てくるということは明らかだと思います。その意味でも、私はどの勘定から生じた損なのかということが明確になっていないと、やはり問題ではないかというように思います。
 それから、旧勘定というのは、やはり一括運用でございますので、新会社のリスクアセットになるということだと思います。もちろん国債が主なので、掛ける0%でほとんど信用リスクアセットはないのかもしれませんけれども、金利リスクの点を考えれば、その資本が必要だと思います。それを考えた場合に、郵便の赤字を仮に郵政公社の自己資本で埋めた後、そうした自己資本があると見ているのか、また本来こういった運用をするためのエコノミックキャピタルというか、それはどの程度と見ているのか、その辺についてはぜひご説明を今度数字でいただきたいと思います。
 仮にこのためにもう少し新たな資本が必要だというようなことになってしまうと、これはまた業務肥大化につながってしまう話ではないかなというように懸念をしております。
 それから、次の点ですが、もう少し何か建設的に、例えば旧勘定の部分を少しでも早く切り離すようなことは考えられないのかなというような感じを持っています。 新会社の経営者としても収益になるかもしれないけれど旧勘定の巨額の偶発債務を抱えるわけで、非常にリスクを抱えて経営しなければならないわけで、そこで民営化をしろ、と言われても大変困るわけでして、その意味でもある程度の段階で、例えば財政当局と協議をして、もう旧勘定は個人国債に、私も前ちょっと申し上げたことがあるのですけれども、そのデッドの部分を国債にかえてしまうとか、そういうようなことで少しでも早く自立できる、そしてイコールフッティングを確保できるような、もしそういった案があればぜひご検討いただきたいなというような感じも持っています。
 それで、私はAかBかと言われるととても困るのですけれども、信託スキームには限定的ではあるけれども、新旧勘定を管理会計上も分離できるというメリットがある。それで新銀行が50兆円銀行という形でスタートするという規模の問題に多少なりとも答えを出すことができるというようなメリットがあると思いますし、また公社勘定の流動性の供給を郵便貯金会社ができることになっていると記述してありますので、これも国債市場への配慮も信託の方で担保できるようにも思います。
 そういうようなことがちょっととりあえずの感想でございます。
 超過利潤のところは、旧勘定の分の保証料を払わなくていいのかなという、政府保証ですけれども、そこが超過利潤になるのはそういう問題があるからであると思います。そこの問題もちょっと提起しておきます。

○宇田プリンシパル 余り重複するところは申し上げませんが、民営化の条件として、やはり先ほどの透明性が確保されているとか、それから予期せぬ何が起こるかわからない部分の債務を抱えてないというのは必要条件になります。私も極力説明ができ、それから切り離せる手段があるのだったら、それは考えていくほうがいいだろうと思います。それをどれだけ早くできるかということが民営化の条件になってくるわけで、どうやってそのインセンティブを経営に与えられるかというのが実は非常に難しいと思っているわけです。これは保険なんかもそうですけれども、アセットの商売の経営者で規模を小さくすることをインセンティブに与えて経営した経営者って多分いないと思います。みんなもう拡大を是として会社が存続するみたいなところがある。先ほどトラックレコードと言いましたけれども、やはり拡大をすることがいいことだということでトラックレコードができてきてしまうところもある。だから、ある程度経営の努力というのはアセットの規模とは別なところで判断をして、何か強制的にそれを減らせられるようなことは経営のインセンティブというよりかは、何か別途考えていかないと成り立たないのかなという感じがします。

○伊藤教授 A案かB案かというのは非常にテクニカルである上に、いろいろ不確定要素があるのでわかりにくい話なので、どういうふうな議論をしていいか、ちょっと今戸惑っているのですけれども、ただ幾つかちょっと原則論みたいな形の話をさせていただきたいなと思うのは、やはり旧勘定と新勘定を分けて、旧勘定についてはいわゆる政府保証を残すというのは、郵貯会社が新しく始める新勘定の部分と旧勘定の部分を、やはりいろんな意味で切り離しましょうというフィロソフィーがあるのだろうと思うのですね。
 先ほど説明ができる形にするということは非常に大事だということです。旧勘定がらみのファンドと、新勘定によるファンドがどういうリターン、リスクあるいは場合によっては損失も含めてあったかということが事後的にきちっとチェックできて、それをだれがどういう形で負担するかということを外から見せる形にしなければいけないのだろうと思うのです。
 それで、A案は確かに,先ほどのご説明でB案にもリスクがあるということはよくわかりました。だからBのケースがいいかどうかはちょっと別にして、Aのケースについて幾つかちょっと不安がありまして、確かに旧勘定にかかわる金額に相当する安全資産の保有は義務づけるという部分はあるのですけれども、しかしそれさえ義務を満たしていれば、ある意味では旧勘定も含めた全体の大きな金額の中で自由にALMができるということで、それはある意味で言うと新会社から見たら、制約は満たさなきゃいけないのだけれども、その上で最大限のリスク、リターンのいわばアセットマネジメントをしようという形になりますから、それは結果的にやはりいろんなリスクに触れる可能性はあるのだろうと思うのですね。
 既に一緒に運用するということは決まっていますから、そこはなかなか難しいのですけれども、しかし理念から見た旧勘定についてはできるだけ、これは過去にもう既に政府がコミットされていた政府保証の部分ですから、まあ残しておいて、安全に、しかし少しずつ減っていくという形で見ると、そういうことにA案がどこまで本当にこたえられるかということにちょっと不安があるということを申し上げたいと思います。
 それからさらに、これもこういう話を今さら持ち出してもいけないのかもしれません。でも先ほど翁さんがおっしゃったにかかわります。この研究会のはじめの頃、どこかの金融機関の方がそういう案を出していますが、旧勘定は個人国債で運用するというような形にするという考え方があります。
 それはどういうことかというと、もしそうすると、基本的に全部リスクは国が取るわけです。これに対してA案でもB案でもそうなんですけれども、新貯金なり保険が、一方でリターンの可能性もこの大きな資金の中でできると同時に、リスクも抱えているわけですから、損があればそっちから旧勘定に補填するということになってきていて、郵政会社がリスクをとることになる。理想的には、やはり旧勘定の部分についてはできるだけ、政府保証しているわけですから、あまり民間の新しい郵便会社のところにリスクがかかるような形よりは、できるだけ個人国債に近いような形、金額が大き過ぎますから難しいということはよくわかるのですけれども、そのような方向に持っていかなきゃいけないのではないでしょうか。A案がいいかB案がいいかよくわからないのですけれども、B案を別に勧めているわけじゃないのですけれども、A案にもかなり不安があるというのが私の意見でございます。
 こういう計算ができているかどうかということを1つお聞きしたいのですけれども、仮に旧勘定に定額預金の部分を、いろんな形でそのまま一括してリスクフリーに゚い形で運用したときに、いろんな変動リスクはありますけれども、最大限どれくらいの、例えばロスが発生し得るとかいう、そういうシミュレーションみたいなものというのは既にあるのでしょうか。これはなかなか技術的に難しい問題なんですか。ある程度のストレスショックみたいなものをかけてやると。それで結果的には金利は上がっていく過程にありますから、少なくとも預かり金の部分についてはある意味で非常にやりやすい時期ではあるわけですね。問題はただ、国債のデュレーションの問題だとか、それをどういうふうに持つかということにかなり依存するのですけれども、要するに実際にやってみたときに、このスキームでやるという意味じゃないのですけれども、旧勘定の部分をできるだけリスクフリーに近い形でやろうとしたときに、しかしそれでも残り得るロスというのはどれくらいなのか。逆に言うとそれは新会社に対する、このどっちのスキームで行ってもある意味で潜在的な負担ということにもなり得るわけですけれども、何かそういう計算というのはあるのかどうか、ちょっとお聞きしたいのですけれども。

○田中参事官 今のご質問でございますが、郵貯担当の参事官をしております田中でございますけれども、伊藤先生のご質問では、現在の公社の制度の中で国庫納付制度とのかかわりにおきまして、一応必要な内部留保を積んでからその納付をし始めなさいという基準がございまして、その基準を計算しますときには郵貯の残高の3%ぐらいのリスクバッファーを積んでくださいということに、これは政令上なってございます。
 その内訳を計算します場合に、今ご質問ございましたように、1つの大きな要素としては、定額貯金が抱えております金利変動リスクをストレステストの形で、どのぐらいリスクがあるだろうかということを計算をしてございまして、ちょっと私、正確な数字を記憶しておりませんけれども、その6兆円のリスクバッファーのうちの半分弱のところがそのリスクバッファーとして見ておく必要があるのだろうと。その元はストレステストをもとにして、金利をかなり上げて、そのときに発生する、3年度ぐらいに発生するロスを内部で積んでおきましょうという具合に見ております。

○宇田プリンシパル これはお願いなんですけれども、できればこの信託勘定のときのALMについて、まあシミュレーションの中にこれを入れるかどうかわかりませんけれども、一度モデルに入れて計算をしてみていただいたらいいかなと思います。以前シミュレーションモデルをつくったときに公社からALMのデータは手に入らないと言われた経緯があります。今までも実はあったという話なのかもしれませんけれども、それを入れて実際、例えば信託勘定の場合にもどういう形になるのかということをシミュレーションした結果を議論できたらありがたいと思います。

○奥山相談役 同じく、52ページで、10年後でも、貯金については0になりますけれども、保険については保証分がまだ相当額残るわけですね。その場合、一体あるいは一括して運用するということがこの段階でまだこれに対応する部分が残るわけで、そこはどうするのかということは明確にしておいていただきたいなと思います。これが全部国債で持っていて、先ほどのように信託勘定で分離してやるとすればある程度明確な絵も描けるかもしれませんが、しかしその後はもう完全に分離するとか何かしておかないと、まだずっと民有民営といいながらその部分はしょっていくのかなということになりますので、明確にしておく必要があるのじゃないかと思います。

○中城審議官 それでは、次に56ページ、これは特例法の時限といたしまして、最終的な民有民営の判断をどうするかということでございますけれども、これについて具体的に客観的な主要事項を法定するというようなA案と、具体的な判断基準は法定しないでやっていこうというB案と、こういう形でご提示しておりますけれども、最終的な民有民営の判断をどうするかという点についてご意見があればお願いいたします。

○翁主席研究員 基本的にこの民営化の過程、移行期の過程において、株式を民間に売却していくということが努力規定として明確になっている必要があると思います。ここは自立といわば規制とをどういうふうに組み合わせていくのか、非常に難しい問題なんですけれども、最終的な完全民営化の帰着点というのは政府出資が0になるということであると思いますし、それが最終的な時限措置の終了時点ということになるのではないかと思いますし、できるだけこれを早く実現できるような道筋を作っていくということが重要だと思います。
 それで、政府出資0、または銀行法では支配力のあれは5%とか、そういう基準がありますけれども、政府出資イコール0というのは、例えば政府出資のないアメリカのファニーメイとか、そういったところでも、規模が大きいがゆえに暗黙の政府保証ということで非常に大きな問題になっているわけですから、むしろそこはもう最低限の条件と言えるかもしれないというように思います。

○奥山相談役 ここのA案のところなんですけれども、政府出資比率○%未満などを法定すべきだというのは、これは0も含むと、未満というのがあるから0というのはないのかもしれないですけれども、要するに限りなく少なくするという趣旨ですよね、これは。
 それで、今翁さんも言いましたけれども、私も完全民営化ということを考えたら、当然0ということを想定してもいいのではないか。そういう意味で国が持ち株会社の発行済み株式総数の3分の1を超える株式を保有すると言っているのは、あくまで持ち株会社に対してであって、持ち株会社が持っている株式は順次売却するということで、そういう意味では法定としてなかなかいつまでというのは非常に難しいと思いますけれども、この精神を限りなく生かすということでの方向性だけは何らかの形で明らかにしておく必要があるのではないかという意味で、これはガイドラインになるのかなというふうに思います。
 それで、やはりここは完全民営化という形が具体的にはどういう姿になるのか、保険会社にしろ貯金会社にしろ、幅があると思いますけれども、その描かれる想定のバランスシートなりP/Lなりの状況をぜひシミュレーションが欲しいなと思います。

○宮脇教授 私も基本的には全く同じで、完全民営化という場合には政府出資が0に限りなく近いということだと思います。ただ、そういう考え方というのが明確になるように何らかの判断基準についてはA案のように法定事項として定める。ただその定め方についてはいろいろあると思いますけれども、それは明確にしておく必要性はあるかと思っています。

○伊藤教授 余り新しい意見はないのですけれども、58ページにJRのケースとNTTのケースがあって、NTTを見ますとまだ依然45.9%国が持っている。これは最初高く売れたのが株価が下がっちゃって、タイミングを計っている間に売れなくなったという、下手な株投資家みたいなことを国がやっているということがあるかもしれませんけれども、だから、もちろんいろんな思惑があると思うのですけれども、やはりある程度法で、これは%をどう書くかというのは難しいと思いますけれども、定めておいて、移行期間の間にできるだけ株式を民間に移すというコミットメントをしておいた方がいいのかなと思います。ただ、じゃその数字をどうするかということは、これは非常に難しいと思うのですけれども、NTTと比較してもしようがないのですけれども、NTTの状況でいまだにこれだけ国が株を持っているということ自身が非常に異様なことだなという印象を持っております。

○宇田プリンシパル これは順次放出していってということで、0%ということがないと、先ほど言った規律というのが働かない。それでどこでよしとされてしまうかというのがよくわからないということに関してみれば、完全民有民営化の要件というのはしっかり決めておき、そこに経営者もコミットする。その条件は何なのかというのは、これはマーケットの状況というのを見れば幾つかの条件というのは明らかになってくるわけで、むしろそこから組み立てていって、じゃ経営としてどういう手段をとっていくのかという、議論になるということでしょう。とにかくどこか一カ所はしっかり決めておいた方がいいと思います。

○中城審議官 それでは最後の論点、60ページでございますけれども、国債市場への配慮、国債を大量に持っているということで、市場関係者の予測可能性を高めるために適切な配慮を行うというふうに基本方針は書かれているわけですが、これについて何らかの義務づけをするというのがA案、それよりもむしろIRの充実という形で自主的に公表すればいいというのがB案という形で提出させていただいていますが、この国債市場への配慮の点についてご意見あればお願いします。

○翁主席研究員 今回のこの新旧勘定のスキームがどういう形になるか、まだそこは流動的だと思うのですけれども、恐らく旧勘定の国債が新勘定にかわってどういうふうに実際保有されていくのかということについての市場の予測可能性が全く担保されないということでは、やはり市場関係者は相当不安ではないかなというように思います。
 一方で、基本的に今回の郵貯の改革というのは、いわば国の債務の調達を郵便貯金が担っていたのですけれども、そこからは完全民営化によって切り離していくということが道筋ですから、もう新勘定に国債を義務づけるというものではないというふうに考えますので、そういった目的をきちんと明確にした上で、市場関係者の懸念に対応するためにのみ何らかの開示を求めていくということぐらいではないかなというように思っております。逆にそれが国債を持つようにということになることでは決してな「、あくまでも市場の混乱を避けるためという目的についてのみ開示が求められるということがこの本質的な趣旨ではないかなというように思います。

○伊藤教授 今翁さんおっしゃったように、例えばA案、B案どちらで、さっきの信託方式で行くのかあるいは何とか方式で行くのか、それによっても随分違うと思いますから、一概的な議論はできないと思いますけれども、さっき冒頭に申し上げたように非常に規模が大きいですからね。しかもこれから恐らく金利動向、物価動向、決して何か安定的な状況というよりはかなり変動もある程度可能性としては存在するとして、マーケットに不要な影響を及ぼさないというある種の配慮が必要だろうと。
 問題はB案のIRなんですけれども、このIRでどこまでそれが可能なのかということ、ちょっと僕も自信がないのですけれども、少しIRでは難しいのかなとも思う。国全体の規模にかかわるような話なので、運用計画の策定、公表ということが必要なのかなという感じがします。ただこの運用計画の策定、公表ということがどの程度逆に会社の運用を縛るのかという、ここもちょっと、具体的にこれだけでわからないものですから、明確な意見を申し上げるのは難しいと思うのですけれども、基本的には情報を出すという中で、これは計画を出すわけですから、全く計画と違うことをやるわけにいかないのですけれども、同時にある程度の柔軟性を持つというべきだと思うのです。
 新勘定については必要ないかどうかということ、これもちょっと気になっていまして、しかしいきなり58兆、46ページの資料によれば58兆円のお金がそこに行くわけで、しかもこれは今は恐らく背後にはいろんな国債だとか、そういうものがあるとすると、移行期にある程度新勘定も含めて、マーケットを沈静化、あるいは不要なパニックを起こさないような配慮というのは考えておいた方がいいのかなと。
 そういう意味で、A案そのまま取るのがいいのか、今申しましたように計画の策定、公表というものの中身はどういうことであるかということはもうちょっと議論しなければいけないのかもしれませんけれども、フィロソフィーとしてはそういうことを考えておく必要があるというふうに思います。

○奥山相談役 民間で、民営の銀行という前提に立った場合には、今のこの資産保有の形態というのは限りなくリスクが大き過ぎるというふうに思うのですね。やはりもっとポートフォリオを考えていろいろな運用をしていかなきゃいけないのじゃないか。そういうことを前提としますと、この大量の国債をどう消化したら、やはりできる限り買い入れを少なくして市場に売却していって国債の残高を下げていくということになるのではないか。またそうしないと銀行自体のあり様というのは非常に問題なのではないかと思いますけれども、一方で国債の売却がどの程度今日本の市場で認められるのか、これは私、財政学の専門家じゃありませんからわかりませんけれども、かなり変動あるいは価格の下落のリスクがあるのではないか。そうなるとこれはまた一大事だということで、その辺は財務省の方から、やはりある一定限度は持ってくれという要請もあり得るのではないか。そこは全く自由に売却して、銀行サイドだけでやれるのかということについては確認が必要だと思いますけれども、基本的にはできるだけ、できる範囲で売却していく、保有率を下げていくということが必要ではないかというふうに思います。

○宇田プリンシパル 移行期は全体に非常に舵取りが難しい時期です。先ほどからのように事業としての自立性は担保しなくちゃいけないし、それから競合に対してもイコールフッティングを担保する。そこは非常に微妙な舵取りになるということです。もう1つは、最初に伊藤先生がおっしゃったようにこの市場だと思いますね。ここで混乱をすることによって民営化の全体の流れを妨げたくない。そうすると一定量の予測可能性というのは必要だということだと思います。それが新会社の自主性に任せられる状態かというと、この10年間というのはあらゆる意味で任せにくい状態というのが全体にあるわけで、ここだけちょっと新会社に任せていきましょうといって、移行期に市場の混乱が起こるということは、全体にとっては好ましいことではない。ただし、先ほど言った完全な民営化移行ということは、それはもうかなり自由度が出てくるのだろうし、そうなることを前提に進めていくということ。
 ただし、最後の最後難しい問題というのは、やはりアセットが相当大きいものが残るわけで、またその時期、10年間の間は一定量残らないとなかなか全体として最適化しないというのがシミュレ-ションでもあると思います。それは経営の舵取りの問題として経営者に期待をするところでありまして、この対市場のところは、できれば移行期においては混乱を減らしたいということではないかと思います。

○中城審議官 ほゥにご意見ないでしょうか。大体全体の論点は済みましたけれども、全体を通じてまた何か言い残されたこと、言い足りなかったことがあればお願いします。

○宇田プリンシパル 1つだけ、全体を通じた議論というのはもう一回どこかで。やはりこうやって議論してみると個別の議論だなという感じがどうしてもしてしまうし、ぜひそこはお願いいたします。

○翁主席研究員 保険の再保険か信託かというところについて、非常に難しいので特に言いようがなかったのですけれども、貯金について考えるのと同じようなきちんとした旧勘定と新勘定のそれぞれの分別管理ということから考えると、信託スキームの方がどちらかといえば望ましいというような感じもするのですが、一方で民間の保険会社というのは今信託を併営できないということもありますので、こうした措置というのがまたこのイコールフッティングの問題になる可能性があるのではないかというようなことをちょっと懸念しております。

○中城審議官 よろしいでしょうか。それでは、時間の関係もありますので、本日の議事はここまでにさせていただきたいと思います。これまでと同様、もし言い足りなかったご意見がありましたら、どうぞ事務局の方にお申し付けいただきたいと思います。
 それでは竹中大臣からお願いいたします。

○竹中大臣 今日も本当にたっぷりとご議論いただいてありがとうございます。
 宇田さんが最後におっしゃいましたけれども、全体の見通しを一回、一回じゃなくて何回もまだやっていただきますので、これは繰り返し繰り返し、個別をやってまた全体をやってまた個別をやってと、かなり詰めていかなきゃいけないと思っています。
 今日の論点で大変ご議論いただいたのですけれども、ちょっと3つぜひお願いしておきたいのですが、1つは、やはり今日の第1の限度額の話と第2の貸付等々の話というのは、コインの両面みたいな話ですけれども、例の経営の自由度とイコールフッティングをどのように両立させるか。基本的には監視委員会の重要性が高いというのが改めて強調されてくるわけだし、その監視委員会のあり方というのはあしたご議論いただくことになります。そのとき、私も前からちょっと頭の整理がなかなかできないなと思っているのは、こういう議論を監視しなきゃいけないというときに、我々はやはり3つのレベルのことがどうしても同時に議論されるような気がするのですね。
 例えば、宇田さんが経営としてはやはり本来やるべきことをきちっとやるというインセンティブをまず与えるべきである、まず本業をちゃんとやれと。これはどちらかというと株主としてのガバナンスの観点から比較的非常によく理解できる議論だと思うのですね。一方、例えば今日奥山さんが、貸付能力があるかどうかという判断があると。この判断は、多分これは金融の当局が行うべき判断なんだと思うのですね。この監視委員会固有のものとしては、これは皆さんおっしゃった、非常にここは政府保証、実態的な政府機関であるということとか、規模が非常に大きい。したがって、マクロ経済的に他の業種に対していろいろなインパクトを与えるものかな。
 だからここはいろんな観点からのチェックが必要だ。株主的な視点、当局からの視点、それと、それとは別に固有の、まさに郵政固有の。それでこの監視委員会で何を行うべきなのか。ほかの例えば金融当局も恐らくこれはいろんな検査があって監督するわけですから、そことの仕切りのようなことを少し念頭に置いてもう少し議論をお詰めいただきたいなというふうに思います。それは明日議論しますので、ぜひそこはお願いしたい。
 同時に、恐らく公社からすれば、ないしは郵政民営化に対していろんなご意見を持っておられる方は、公社のまま改革すればいいじゃないか、公社のまま改革すればできるじゃないか。それに対して、いやいややはり民営化の方がいろんなことができていいのだ、そういうスタンスからの議論も少し考えなきゃいけないのかなと思うのですね。もちろんもうそういうことはお考えいただいているわけですけれども、ぜひ視点としてまたご議論をいただきたいと思います。
 今日は議論としてこれはどう考えるのかなと思ったのは、翁委員がおっしゃったリスクをできるだけ切り離してやる、もっと早く切り離してやるという方法も考えなきゃいけないのじゃないのか。郵政が持っている債務と国債という債務、デットとデットをスワップするというようなこと、これはちょっと我々の民営化の範囲でどのように考えることができるのか、技術的なことも含めて少し、まあ議論できるのかどうかも含めてぜひ一度考えてみるのかなというふうに思います。
 それと、今日の大きなところでもう1つは、具体的な旧債務のスキームの話なんですけれども、これは実は基本方針を考えるときには、非常に漠然とは当然信託みたいなものをイメージしているわッですね。これは2つやはり満たさなきゃいけないことがあって、政府が保証している債務を民間の会社が持つということは、債務者に対して責任を負わなくていいから、その分非常に別の面で経営で問題が生じるのじゃないだろうか、これはやはりしっかり切り離さなきゃいけない。もう1つは、政府保証がついているから安全資産で運用している、それが国債を中心として運用しているわけで、このバランスシートの固まりをまさに国債管理の観点からもしっかりと安定させたい、その2つの条件を最低限満たさなきゃいけないということで、まあ漠然と信託のようなものをイメージしているわけですけれども、事務方に検討していただいて、このような特別預金というスキームもあり得るのではないか。ここは先ほど竹内審議官おっしゃったように法律的にそれが可能かどうかということも含めてもっともっと詰めるわけですけれども、基本方針のときの議論はそういう議論でございましたので、引き続き、これは私もよくわかりません、どちらがよいのか今の時点ではもちろんわかりませんが、ぜひいろんな可能性をご検討いただきたいと思います。
 その意味では明日監視委員会の議論等々ございますので、改めてよろしくお願いいたします。

○中城審議官 ありがとうございました。
 それでは、本日は会議後記者ブリーフィングについては竹中大臣から行っていただきます。
 最後に次回の会合の日程について事務局から連絡いたします。

○利根川参事官 既に事務的にはご都合をお伺いさせていただいているところですが、次回会合は明29日、今日と同じ10時より11時30分まで開催させていただきます。場所はこの中央合同庁舎第4号館の11階、共用第1特別会議室となります。
 議題でございますが、残された主要検討項目といたしまして、雇用・待遇のあり方、経営委員会(仮称)、監視組織につきましてご議論いただきたいと考えております。
 以上でございます。

○中城審議官 それでは、本日の会合は以上でございます。どうも長時間ありがとうございました。