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郵政民営化に関する有識者会議第2回会合 議事要旨

日時
平成16年5月25日(火)
10:30~12:00
場所
虎ノ門10森ビル(5階)
郵政民営化に関する有識者会議室

○中城審議官 それでは、今、大臣はこちらに向かっているようですが、始めてくださいということですので、これから始めたいと思います。
 本日は皆様お忙しいところ御参集いただきましてありがとうございました。
 これより「郵政民営化に関する有識者会議」の第2回会合を開催いたします。議事に入ります前に、前回会合で、御多用中で御欠席の日本公認会計士協会の奥山会長が御出席でございますので、改めて御紹介させていただきます。

○奥山会長 奥山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○中城審議官 それでは、お手元に配付の議事次第に沿って議事に移らせていただきます。
 本日は前回会合にて御案内させていただきましたとおり、郵政民営化に関する外部の有識者の方からお話を伺うということで、本日は慶応大学名誉教授、千葉商科大学学長の加藤寛様にお越しいただいております。加藤先生、本日はお忙しいところどうもありがとうございました。
 加藤先生は皆さん御承知のとおり、「国鉄、電電、専売-再生の構図」という著書も出版されておりまして、特殊法人の民営化など行革についての幅広い研究をされておりますし、また、土光臨調では第4部会長として国鉄民営化に代表される行革の実現に御尽力されたということでございます。
 また、税制調査会の会長も長きにわたり務められるなど、学問の分野だけではなく、政策立案過程にも積極的に関わられております。
 本日はそうした先生の御経験、JR等の民営化の経験といったようなものも踏まえまして、郵政民営化論ということについてお伺いする機会を設けさせていただきました。
 それでは、加藤先生、よろしくお願いいたします。

○加藤学長 今日はお招きいただきましてありがとうございました。
 本日の会合は、第2回目だと伺っておりますが、ヒアリングは私が最初だと伺っていますので、皆様に何をお話ししたらいいかわからないというのが実情でございまして、専門家でなければ何をしゃべってもいいなと思うんですけれども、皆様方が専門家でいらっしゃるんで、何をしゃべっても恐らく、ここはわかっているよ、こっちはという話になりますので、私自身の経験を申し上げて、その経験の中から若干の筋が出ればいいんじゃないか、こんなようなことを考えてお話しをさせていただこうと思っております。
 最初にお手元にあります資料について見ていただきますと、最初が大きな1枚の紙がございます。この1枚紙を最初に使わせていただきます。
 その次に「郵政民営化研究会・議論の方向性」というのがございます。これは吉野先生にも一度おいでいただいたことがあるんですが、郵政民営化研究会といって、700 人委員会というところで水野清さんなどが中心になっておやりになっていらっしゃいまして、竹中大臣にもおいでをいただきましたが、そういうところで考えておりますことを幾つかまとめてきたものでございます。あとは、民営化のメリットとデメリット、道州制・郵便貯金という資料をご用意しております。
  そこで最初にまず皆様方に申し上げたいと思いますが、1枚の大きな紙の方でございまして、この紙は左と右に分かれておりまして、左の方が郵政民営化のプロセスが書いてあります。そのことについて全部右側に国鉄の場合はこうだったという、国鉄の例が対照的に番号で並んでおりますので、左の方を御説明いたしますが、右の方がその実例であるということを皆様方に申し上げておきたいと思います。 こんようなことで話を進めさせていただきますが、余りお役に立たないことで時間をつぶしては申し訳ございませんが、最近の本で、皆様方御承知かと思いますが、「あえて『郵政民営化』に反対する」という、カナダのブリティシュコロンビアを出たまともな人でございますが、ケインズの説得論集を盛んに引用いたしまして、ケインズは説得論集でこういうことを言っていたんだから、郵政民営化は間違っているということを一生懸命書いています。私から見ると、本当に強引に、ケインズはこんなに解釈できるんだったら、随分問題は簡単だなという感じがいたしますが、これは皆様方に後で御参考にお読みいただければ、反論というか、相手が何を考えているかということがよくわかるわけでございます。
 そこで、まず私の経験を幾つか申し上げておきますと、左の方の「郵政民営化のプロセス」、こんなものを書く必要はなかったんですけれども、よくいろんなところに出てまいりまして、これが改革の本質だということが書いてあるんで、あえて挙げさせていただきました。
 A. C. Pigou、これはEconomics of Welfareの本でございますが、アの本に彼は書いているんですが、"Gradualness implies action, and is not a polite name for standing still."
 だんだんとやるということは、行動を意味しているのであって、黙って立ち止まっていることを意味するものではないということを言っているわけでございます。
 私はこの言葉が大変好きでございますけれども、とにかく改革ということを、何か大だんびらをふるって、そしてやったぞということをやるなどというのは、これは結果論の話でありまして、始めからそんなことを考えていたら、改革などはできっこありません。
 一番下をごらんいただきますと、ここに私がよく参考にしておりました2つの本がございまして、非常にこれはよく書いてある本でございますが、皆様方も御承知と思います。
 1つは、有名なパブリック・セクターの研究家でございますSavasの"Privatizing the Public Sector"。
 もう一つがButlerでございますが、これも有名な方でありますが、この方は長富祐一郎さん、財務省の先輩でございますね。その方が訳しております。大変ありがたい訳でございます。これが『民活導入への道』と書いてあります。
 この2冊の本に、私は非常に心酔しておりまして、この2つの物の考え方が日本の民営化の基本だと思っております。
 これをわきまえずに議論をしておりますと、誤解が生じて、そして理論的ではなくなるというか、非常に曖昧な言い方になってしまうんです。
 しかし、何をそこで言っているかというと、ちょっと言葉を引用しましたが、「民営化は明らかに政治的試みである。民営化の戦略は政府支出の政治的ダイナミックスを十分に考慮に入れた時にのみ成功し得る」。これは政策論をやっている人たちには当たり前な話でありまして、竹中さんはその意味では、私はいつも敬服に値する方だと思っておりますが、常にこういうことを頭の中に入れて政策の実行を考えていらっしゃる。
 理論がこうだから、その理論が実行できると考えるのは、これは政策論の素人でございます。つまり、政策のダイナミックスというのは、政治のプロセスがありますから、その政治のダイナミックスを理解した上で、政策論を進めていかないと、必ず失敗するわけであります。このことが国鉄のときに私は一つの信念として思っていたのでございますが、理論的にはこうだああだといろいろ言いましても、それは理論でありまして、実際に現実にこれを実行していくためには、当然のことでありますけれども、政治プロセスを理解しなければなりません。
 そこで何が重要かということを申し上げるために、一番右側の下でございますけれども、「道路公団の経験」と書いてございます。これは道路公団民営化が失敗をしたということの例として挙げてあるわけでありますが、私が言う失敗というのは、みんなが言うような失敗ではございません。改革というのは必ずどこかで点数を稼げればいいんでありまして、100 点を取る必要はないんです。ところが、どうも改革論者というのは、100 点を取らなければ失敗だと頭から思い込むようですね。これが大きな間違いでございまして、土光さんなどがいつも言っていたのは、60点を取ればいいんだと。その60点を取るところまで何とかもっていけないだろうかということをいつも言っておられました。
 つまり、政治のことを考えたら、とても100 点の理論などは展開できるはずがない。そこでこれを私どもとしては、60点を目指せばいいんだと考えているんですけれども、ただ、60点にはならないこともたくさんございます。20点くらいで終わることもございます。10点もあります。しかし、10点でも20点でも、とにかく道筋がちょっとでも付けば、これは改革をしたことになるんです。それを日本人は潔癖性があるものですから、何でも全部できなければだめだと言うんですが、イギリスなどの例を見ましても、アメリカでもそうですけれども、改革が100 点取れるなどとはだれも考えていないわけです。
 それを何か考えてしまっているというのが道路公団の7人委員会でございまして、実は7人委員会のときに、私は言ったんです。公開制にすると皆さんがおっしゃった。それをよかったよかったと言っているんです。間違いでございます。公開制というのは、委員会の中で議論がまとまったらば公開していいんです。それをまとまらないときに公開しましたら、親がけんかをしているのを見て、子どもがどう考えるかです。親のけんかを見て、夫は妻が悪い、妻は夫が悪いなどと言っていますね。要するに、犬も食わぬけんかなんです。それを公開してしまいますと、犬が食うんじゃなくて、今度は人間が食いますから、これは完全に失敗します。
 ですから、公開制というのは非常に言葉としてはいい言葉でありまして、新聞記者の方もこれが大好きであります。しかし、私は中の意見が一致しなければ公開をしてはならないと思っておりワす。それを道路公団7人委員会は、表に最初から出した。出したものですから、議論百出なんです。
 少なくとも委員長の席、あるいは後に委員長代理になりますが、その責任というのは、必ずみんながどんな意見を持っていても、1つの方向にまとめるということが、これが基本的なやり方でございまして、これを表に出して議論するなどということは意味がないことだと思っているわけです。
 その次に「?道路の供給は多様」と書いてあります。つまり、どんな民営化でも必ず神学論争があります。これは公のもの、道路は国のものだから、国が供給するのは当たり前だと言うんです。このくらい間違った発想はないんです。所有は国のものであっても、供給形態は多様であっていいわけなんです。それを1つのものでなければならないと思い込むところが官僚の方々が一般的に陥りやすい欠陥でございます。
 そんなことを申し上げると誠に官僚の方に申し訳ないけれども、お許しください。大体私はそういうこと言うのが好きでございますので、やたらに言うだけでございますから、余り意味はございません。ただ、官僚の方のいいことだけを先に申し上げておきますと、大変いいのは、官僚の方は、なるほどそうだと思ってまとまると、必ず実行してくれるんです。これが日本の官僚の優れているところです。私はこの点については信頼をしておりまして、意見はいろいろあるけれども、そんなことどうでもいいんだと議論をしていますと、必ず1つのところにまとまって、まとまると必ず答えを出します。これが学者と違います。
 学者というのは、勝手なことをいろいろ言いまして、いろいろなことを言っていて絶対にまとまらない。まとまらないから何も実行しない。これが学者のいいところか、悪いところか知りませんが、とにかくだめなところなんです。
 そういう意味で神学論争を避けなければなりません。ですから、郵政公社、郵便配達は信書の配達であるから、絶対にこれは国がやるんだと。こういう神学があるんです。この神学を直さなければだめです。これが議論すべき最初のことなんです。
 それから「?自治体首長の理解を求める」。これが重要でございます。この道路公団は御承知と思いますが、仙台の浅野さんとか、そのほかいろんな各地の優れた自治体の首長さんがおられたんですけれども、その首長さんたちが、道路をつくらないと言ったものだから、それではというので反対になりました。そうしたら、この7人の委員会の方がやったことは、この人たちを押さえ付けようとしたんです。これはだめなんです。反対したってこれは当然の意見なんです。道路が要らなくていいなんてだれも思っていないんですから、そう言っているのを、頭からそれはだめだと言ってはだめなんであります。
 「?新規路線建設は再出発までタナ上げ(綱引き)」が必要なんです。これはつくる、つくらないという結論を出してはいけません。今度の道路7人委員会は、もうつくらないということで頭から言った。つくる、つくらないというのは、場所によって違うんですから、いろんな条件があります。
 そのいろんな条件を考えたらば、たな上げすることでありまして、私の場合でもいろんなことを言われていたんです。そのときいつも私が最後に言ったことは、結局、整備新幹線は凍結しましょう。そのときはまだ凍結という言葉がはやっていなかったものですから、凍結と言うと、みんな何だというから、フリーズする。フリーズするって何だと言うから、氷が解けたらすぐ動くことですと言った。そうしたら、みんな、そんならできるのかということになって、そうですよという話になって、みんなが凍結に賛成したんです。今度はこれはもう効きません。凍結という言葉はわかっていますから、効きませんが、新しい会社ができたら、新規路線は必ずつくれますよと言わなきゃいけないんです。それをつくってはいけませんと言うから、みんな反対するんです。そこら辺の論理というか、出発点、説明の仕方の間違いが?でございます。
 2番目、道路公団の民営化でやるべきことは、ほかのことはどうでもいいんです。新規路線をつくることなどはどうでもいいんです。40兆円の負債をなくせればいいですけれども、なくせなくたっていいんです。日本全体で660 兆もある負債を、40兆ばかり削ったって、大したことはないというと怒られますけれども、しかし、できなきゃできないで仕方がないんです。それを頭からなくさなきゃいけない、その使命感で出てしまうとだめになります。
 民営化は何だ。答えは分割でございます。分割をするのはなぜか。ほかのことができなくても、分割だけできて、当事者能力が付いておりましたら、必ずこの問題はみんなで解決する方向に進んでくるんです。
 そして、そのときは国民はほとんどがフリーライダーになりますから、そういうときにやらなければいけないので、私はよく高速道Hを走っておりますと、この道路は皆様方の道路税でつくっていますと、こういうことが書いてあるんです。あのくらい無神経な考えはありません。私だったらば、そんなことを書いていたら、何言っているんだと。俺の道路税を使っているのか。だったら、こんなものつくらなくてもいいと思います。それを道路税でつくっていますではなくて、皆様方の道路税を取ることによって、こんな道路までつくっちゃっているんですと書いておけば、我々も、ああ、そうか。これはむだな道路だったと思うわけですよ。そういう発想が逆になっていますので、それが結果的に役所がなかなか国民から理解されない立場に追い込まれる理由でございます。
 あと10分しか時間がございませんから、先へ急がせていただきますが、そこで何をしたらいいかということでございますが、何と言っても改革をやるのには時間がかかります。国鉄の場合には、これはすぐできたかのように皆思っておりますが、間違いでございまして、実はスト権ストでございます。三木総理のときにスト権ストがありまして、このときに経営形態を変えなければスト権は認められないという答えを私どもは出したんです。その答えを出したことによりまして、その後国鉄の経営形態をどう変えるかということが大きな議論になって、そして民営化が次第に浸透していくのでございます。このことを私は先に申し上げたいと思いますが、それをしていくためには、何を行ってきたかと言いますと、「外堀を埋める」ことから始めたのでございます。
 城を攻めるときに、いきなり本丸を攻めるばかはおりません。大阪城を攻めるときに何が大切かと言ったら、城を攻めるためには外堀を埋めなければなりません。徳川家康がすごかったと思うのは、あの外堀を何だかんだと理由を付けて埋めたことでございます。埋めたことによって、城を守るだけの防備力がなくなってしまった。これが重要でございます。
 では、外堀を埋めるとは何だと申しますと、今度は左側の方をごらんいただきますとaと書いてあります。「納税者の平均的負担と政府サービスの平均的受益は一致しない」。これは皆様方御承知のとおり、負担と受益とは一致しないという話でございまして、要するにフリーライダーがたくさん登場いたしますから、フリーライダーをどうやって説得するか。
 この前、旭川でおやりになりましたが、あれは大変いいことでありまして、ああいうことを何度も続けなければなりません。私どもも全国を随分何回となく回りましたけれども、各市町村に行くたびに反対されますけれども、反対をしているうちにだんだんと理解する方が増えてまいります。ですから、あれはいやでも何でもやらなければならないものでございますが、時間がかかります。簡単にはいきません。
 bでございますが、ここに「bureaucratic clientelism」と書いてありますが、これは行政と特定層が結び付いてしまうんです。この結び付きをやりますのが、国鉄の場合はだれだったと申しますと、今度は右側に書いてございますのでごらんください。右側にありますのは、(1)のb、日本交通学会、これは完全に国鉄分割民営化反対論者の集まりでございます。ここに私は2回呼ばれまして、そしてシンポジウムをさせられました。これを受けなければだめです。やらなければだめです。だれも行きません。みんないやですから、だけれども私はあえて行きました。そして、ここでもって皆さん方と議論をいたしました。学者が変わらなきゃだめです。
 しかし、国民は常に「c 将来の変革より現状に安心する」のでございます。したがって、変革は好みません。その代表として、右側にcとして「井上ひさしと対談」を挙げておきましたが、これは週刊『文春』が企画をしてくれて、大変ありがたかったんですが、勿論、私に対する反対論で週刊『文春』はやったんですけれども井上ひさしさんを出してきました。井上さんは同じ岩手でございますので、私もよく知っておったんですけれども、その井上さんが言ったことは何かと申しますと、なぜ自分は国鉄の分割・民営化に反対するかというと、それはあくまでも自分のそばにいた駅長さんがいい人だったからだと言うんです。これが国民の意識でございます。近くにとてもいい郵便局があるから民営化したくない。あるいはそれはそのまま残しておいてほしい。こういう発想になるんです。
  そういうことをやっている限り、信用は絶対に出てまいりませんから、私はそれが何と言っても国民の気持であるということだけはお忘れになっていただきたくない。
 一番上のaに戻りますけれども、郵貯というものがあることによって、国民が大きな負担をしているかということが全然わかってくださらないんです。これが問題でございます。この点につきましては、「郵政民営化による国民(利用者)のメリットとデメリット」と書いてある資料をご覧ください。メリットというのは、要するに日本人1世帯当たり年間1万6,000 円の国民負担がなくなることだと。これは川本さんが出されている1つの計算でございます。
 私はいろんな計算があり得ると思いますけれども、要するに、これだけのお金を負担しているんだということが国民にはわかっていないわけです。そして、預けたお金が増えて戻ってくる。最近でもそうでございますけれども、1万円預けておいたら、何と満期に戻ってきたら、3万にも4万にもなったと言って喜んでいるわけです。これが何のためにできるか。それは国家の保証がなければできないわけです。そういう国家保証というものが国民を支えているんであって、そんなことは本当は我々の受益とは一致していないんだということをよく考えていただきたいと思います。
 今の年金が同じでございます。年金はなぜあの制度がよくないかと言いますと、年金制度は御承知のように全部負担と受益でやっておりますけれども、あの負担と受益とは結び付いていないんです。ですから、そこらは本当に国民にはわからないものだということになるわけです。これを一致させるようにしなければならないということ、外堀を埋めることの1つでございます。
 その次、「d 民営化は株の上場を目指すのではない。目指しているんです。目指しているんですけれども、結果として出ればいいんです。それを何か民営化をすることは上場して政府のお金が増えるんだと、こういう宣伝をしてはいけない。これをやったら国民は政府と一致しておりませんから、そこで政府がそんなに儲かることを俺はやらないと言って反対いたします。こういうような言い方はいけないわけです。上場などということは、できたらやるんです。
 国鉄の場合だって民営化してから10年経ってやったんです。そこで皆様方、言葉を思い出していただきたいんですが、私どもは常に国鉄のときに言っていたのは分割・民営化でございます。民営化・分割とは一言も言っておりません。
 電電公社の場合も同じでございます。分割・民営化です。つまり、分割をすることが先なんです。それはなぜですかと聞かれるから、分割は当事者能力を付けることなんです。そういうことになる。
 しかし、その場合、すぐみんな思いますことは、では、民営化というのは何なんだと。そこに書いてございますが、「市場活力の導入・PFI・規制除去・非国有化・分割」でございます。したがって、分割はほんの1つにすぎない。それを私たちは余りにも大きく皆さんに強調されてしまったことによって反対論が出てきます。
 ですから、分割・民営化と言っているんですけれども、それは別な言い方で当事者能力を付けなきゃだめですと。大きくなり過ぎてしまったら、分割をしていかなきゃ運営できませんということを、運営の面から強調することが大事でございます。何で独占の大企業を分割しなきゃいけないかと言えば、それは運営ができなくなるからです。その運営ができなくなることをやるのに、今、日本全体の金融の何と3割を占めてしまった公的部門の金融は明らかに巨大になり過ぎてしまっているわけでありますから、そこのところが非常に重要なポイントになってまいります。
 そういたしますと、よく言う人が出てくるわけです。そんなことを言ったって公的部門がなければだめじゃないかとおっしゃいます。そのとおりなんです。私は全部私的企業にしろなんて夢にも思っておりません。よくおっしゃる方があるんです。すべて銀行を民営化してしまうのか。全部公をなくしてしまうのか。そんなことございません。公と私というのは神学論争でございます。重要なのは、政府サービスを円滑な供給にする他のオプションとして考えておくことでございます。その中の1つとして、政府のサービスがあってもいいのでございます。それが円滑でないときに問題になるんでありますから、したがって、効率化を図るのはなぜかと言えば、公的部門は収益を求めておりませんから、効率が落ちます。その落ちるところを効率が上げられるような工夫ができればいいわけです。市場活力の導入とかPFIとか、いろんな手があるわけですから、そのいろんな手を取ってやるべきだというのが、サッチャーが提示した問題点でございます。
 その次に「(2)攻撃の手段」。いよいよ攻めるとなったらば外堀は埋まったけれども、どうやって攻めるのか。それは「a 集合財を分類すること」でございます。つまり、集合財だから国がやるんだと思い込んでいるわけですから、そこで集合財というのは、公的なことは国がやってもいいし、私的がやってもいいし、だれがやってもいいんだというふうな考え方で展開していかなければなりません。これがこのスト権スト委員会のときに明らかになったのでございまして、右側に書いてございます。
 それから、「b 支出財源を低いレベルに移すこと」でございます。これは整備新幹線とか三陸鉄道は全部地方に回りました。したがって、地方がうんと言えば、これは待つことができるわけなんです。そういう意味で、ここの転換をしていくことが必要だったわけです。
 更に「c 支出と税負担を結びつけること」ということでもって、運賃を引き上げることが必要でございます。道路公団のときに、道路公団の料金を下げようという意見がありました。下げはいけないんです。いかに金がかかるかということをはっきりさせなければいけないんです。それを下げようと言ったら、みんな、では国がやったっていいじゃないかということになって、話が違ってくるんです。そういうことが問題になります。
 それから、「d 民営化のメリットの強調」でございます。先ほどメリットとデメリットのところを出しましたので、そこのところをもう一度ごらんいただきますと、メリット・デメリットが並んでおりますので、ごらんいただけるかと思います。何と言ってもベンチャービジネスができることでございます。
 私は竹中さんがお出しになりました例の中間報告、賛成でございますけれども、1つだけ残念なことがありました。それは現状のままで行ったらば、日本がだめになるんだと書いてほしかった。明るくなったら困るんです。麻生さんもよく言うんです。何か明るくなる将来を考えよう。明るくなるのは、だめになるということがわかってから明るくなるんです。それを何か明るくなる前に明るくなると言ったら、国民は、じゃ、今のままでいいじゃないかとなってしまうんです。そこのところをもっと書いてほしかった。今のままでいったらば、日本の金融は破綻します。そして、日本経済の活性化はありません。地方に金融が回らなければ、地方経済は困窮します。そして、地方経済は破綻しますということを論じなければいけない。そこが論ぜられなかったということがちょっと残念な気がいたしますが、そこはしかし全体として書いてあることは私は賛成でございます。これはある意味で逃げ口を示すことでございます。
 「(3)抵抗グループ」は言うまでもございません。国鉄の場合も助役が変わってきました。動労が変わりました。私鉄が努力しました。国鉄一家がなくなりました。移動の自由という神学論争がなくなりました。自動車がこれだけ普及したところで、移動の自由などは考えないわけです。
 そういうようなことを一つひとつ突破しなければならない。それが抵抗グループでございまして、これはまとめて突破することは絶対にできません。一つひとつ、特定郵便局長をどう説得していくか。労働組合は雇用維持が絶対の方向でございますから、私は今度の竹中さんの中間プランはこれで雇用維持を主張していますから、これで大丈夫だと思いますが、しかし、組合はまだ疑っております。とてもできないだろうと思っています。そこで今は公務員ですからいいんですけれども、公務員が非公務員になったときは、自分たちは首になると思っていますから、それを守るために民営化をした方がいいですよということが言われないと、なかなか労働組合の説得はできません。
 そして、地方銀行がこれでもって説得されなければだめです。地方銀行は郵便局が全部民営化されたら、自分たちはつぶれてしまうと思っているわけです。そうじゃないんです。これは御承知のとおり、郵便貯金のお金は簡保合わせて350 兆ありますれども、そのうちの少なくとも幾つかを分割することによって道州制の分割というのがあり得るわけでありますが、それは一番最後のところに図が出ておりますので、ごらんいただければと思いますけれども、その図をごらんいただきますと、郵便貯金いろんな計算の仕方がございますけれども、道州制でごらんいただきますと、大体どこも同じなんです。平均を超えているところは基金として集めて、ユニバーサルサービスをやればよろしいのでございますから、別に驚くことも何もないのでございます。これは国鉄の場合も、本土の3公社ができまして、そして、JRになるわけですが、その余ったところが援助をして基金制度をつくっていくわけです。更に地方銀行に融資をすることも考えられます。
 「family」も直していかなければなりません。
 「僻地」はどうするか。これは自治体首長を説得するのに特に必要でございます。
 こういったことを国鉄と比較しながら思いますので、皆様方にもし少しでもお役に立つことがあれば、そういうところから議論を進めていただければ大変私も納得できるなという気持をしながら話をしてまいりましたが、考えてみれば、こんなこと既に皆様方御承知のことでございますので、私があえて言うこともなかったと思いながら終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○中城審議官 どうもありがとうございました。それでは、加藤先生のお話について御質問・御意見をいただきたいと思います。
 申し遅れましたけれども、本会議にィきましては、議論の要旨をとりまとめ公表する予定としておりますので、あらかじめお含み置きください。

○宇田プリンシパル 2点ありますけれども、先ほどのお話の中で、神学論争の点について、議論の初めにつぶしておかなければいけないというお話がありましたけれども、たな上げということですね。つぶすために別に神学論争をするわけではないということですね。わかりました。
 2番目で、レベルの低いところにもっていくという、低いレベルに移すということで、地方に回すであるとか、こういうことは理解できるんですけれども、そうすると、かえって強い抵抗に遭うとか、むしろ地方の方がということがあるかと思うんですが、この辺はどういうふうに理解すればいいですか。

○加藤学長 逆にそうなってくると、地方の方が、自分たちが参加できるという意識に変わってまいります。国鉄の場合もそうでしたけれども、どんどんローカル線に入ってまいりました。ローカル線は自分たちでどうやればいいようになるかと考えるようになる。バス輸送をしてみたり、あるいはタクシーの利用をしてみたり、いろんな工夫をいたします。我々が何も言う必要はなかったという感じがいたします。

○伊藤教授 国鉄の場合には、余り中身はよくわかっていないんですが、実態的に今JRで指導的な立場に立っている方々が、改革の実際の実行の段階では非常に大きな役割を果たしたと言われますね。それは恐らく加藤さんがこういうプログラムを組んだのと多分時間がずれてくるんだろうと思うんです。実際に実行をするときには、そういう現場の方々がかなり意識を持ってやられるという仕組みに持っていくことが必要だろうと思うんですけれども、例えばこの郵政の民営化のプロセスなどで、そういうことと対応して考えるとすると、どんなことが出てきますか。

○加藤学長 私の考えは、助役を説得するということが国鉄の場合には最初にやることだった。助役が労働組合と上の権力の間にはさまって、助役が自殺するような状況が生まれていたんです。そういう状況があったので、助役の人たちに私たちはどうやって接触しようかというので、この前亡くなった三塚さんなどが中心になってやったんです。
 そのときに私どもの事務局がすごいと思ったのは、わざわざ甲府へ連れて行ったんです。これは本当は三塚さんは甲府へ行かないで、新潟か何かへ行っておったら、恐らく国鉄を分割・民営化しようなどと思わなかったと思うんです。甲府は一番ひどいところなんです。助役がどうなるかわからないというので、助役が一人でもって自転車操業でやりくりをしているとき、みんなが野球大会かやって遊びに行っていたんです。
 そんなことがあったという事例が後でたくさん出てくるんですけれども、それを連れて行かしたんです。これは事務局が非常によく知っていたと思います。そこで三塚さんはころっと変わって、そして助役に対して、助役を助けなければいけないと言い出す。助役を助けるというので、今度は郵政で考えると、特定郵便局です。
 つまり、特定郵便局長が今、一番悩んでいるんですよ。とにかくネットワークと言われたって、郵貯、簡保がなかったら成り立たない。郵便配達もなきゃできないと思っていますからね。ネットワークをやるんだったらば、それは竹中さんの優れたところだと思うんですけれども、ネットワークを出したということはいいことなんですけれども、ネットワークを出せば必ずそれは全部郵貯も簡保も郵便配達も全部ネットワークですよと言ってくるんです。
 そのネットワークを言ったときに、そうじゃないんだと。あなた方の中で、特にこの特定郵便局が非常に力を発揮している。その特定郵便局長が民間のつもりでもって、政府にお金を出してやってもらっているけれども、あなた方は制約されているでしょう。政府からお金をもらうということは規制されていることなんです。その規制されているところがあなた方自由になりますよと言って、こういうことができますよ、こういうことができますといろいろやってやりますと、ベンチャービジネスがどんどん出てくるわけです。これは国鉄も同じでございました。助役の人たちが苦しくて辞めたいというときに、みんな世話をしてあげたり、ベンチャービジネスを教えてあげたりするわけです。そうすることによってみんなそれを見ますから、ああ、あんなことができるなら俺もやりたいと言って、どんどん出てくる。味方が増えてくるという形になりました。
 私は出発点、切り口は特定郵便局だと思っております。

○吉野教授 2つあるんですけれども、1つは、JRの例ですと、分割されて、北海道とか四国というのは、今後ともうまく行かないんじゃないかと思うんですけれども、こういう分割をしたときに、地方に対してどうするかという問題は1つ残るんじゃないかと思うんです。

○加藤学長 そうです。

○吉野教授 もう一つよろしいでしょうか。
 国鉄の場合には赤字だったものですから、国民の皆さん全体がこれは何とかしなくちゃいけないというすごい意識があったと思うんですけれども、郵政の場合には、今までずっとうまくいってきていますので、その点も違うような気がするんです。

○加藤学長 第1の方は、これはさっきちょっと申しましたが、基金制度をつくることです。つまり、黒字のところもあるけれども、赤字のところもある。本州の3つのJRは黒字になるわけです。その黒字になった部分が、これを基金に投入しまして、その基金が3島の赤字にこれを提供するという形を取ってバランスを取ったわけです。だけれども、それだけではだめだったんです。なぜだめだったか申しますと、上下一体でなかったからです。
 つまり新幹線を保有している清算事業団があったんです。これがいけなかったんです。道路の場合も同じ問題が起こりましたけれども、これはやっちゃいません。ある程度それぞれのところがやれるような、つまり郵政の3事業一体でやったって大丈夫なところもあるわけです。そうではないところもあるんです。それを一律に全部同じようにしてしまえと言ったら、これは当然うまくいかないところが出てきます。そして、それを援助することが必要になってまいります。そこら辺はどっちに考えるかということの考え方はあり得ると思います。
 私どもの郵政研究会でもっても、やはり3事業を分けろという意見と、3事業一体でやろうという意見と両方ございました。私はそれはどちらでも可能だと思っています。
 そういう意味で、考え方としては、一番の考え方はそうなるわけです。
 2番の考え方は、何でしたか?

○吉野教授 国鉄の場合には赤字でしたから、国民全体が何とかしようという意識があった。

○加藤学長 本当はこれは郵便だけでやって黒字になるはずなんですよ。ドイツを見ればわかります。ドイツポストは、ほかのものを切り離して、今は金融も若干扱っていますけれども、しかし、日本に比べれば5%以下の小さな問題です。
 その点、郵便だけでもって黒字になるんですよ。それを日本はしてなかったでしょう。これが本来の郵便配達事業の方向だったと思うんです。今だって働いている方はいやだと言っていますよ。これは組合に行って聞くとよくわかりますけれども、みんなくたびれたと言っています。頑張れ頑張れと言ってるものですからね。今度は郵政公社が黒字になります。来年はもっと黒字が出ると言っていますけれども、私はそれでおしまいだと思います。それ以上できないですよ。幾ら絞ったって、人間のやっていることでそんなに絞り切れることはありません。常に効率というものは民間圧力がなければやれません。刺激がなければできません。それを公社で頑張れ頑張れと言っても、あるところまでが限度。
 国鉄だって同じでした。本当は総裁、大蔵省から行った高木さん、あの方も本当は分割・民営化と思っていたんです。私に紙を渡しまして、加藤さん、本当は私はこうですよと。口で言えばいいのに言わないんです。こうなんですと。じゃ、やったらどうですかと行ったら、できないですよ。こんなところでできるわけがないです。どうしてですかと言ったら、何しろ赤字だからとおっしゃった。そこで私は、黒字になるところだけやってみたらどうですかと言ったんです。
 そうしましたら、鈴木善幸さんが三陸鉄道をつくりまして、私に言うんです。加藤さん、岩手で三陸鉄道をつくって、これで成功させるから、これでもっていかに鉄道はやれるんだということをみんなに知ってもらおうよという話がある。これは中曽根さんが行管時代に鈴木さんがやったんです。これは私どもにとって1つのプラスになりました。つまり、黒字に転換できるんだということを示したんです。
 今でもそうです。第三セクターでやっているところでも、駅長さん以下ものすごく頑張っていて、黒字になっている静岡の方にある第三セクターがあります。
 ですから、鉄道だって同じなんです。それをやるかやらないかというだけで、今度は公社に出てきた場合は、生田さんはそれをうまくやって、非常に成功しましたけれども、これは絞れば絞るほどある程度今はできますけれども、将来は不可能になる。公社であったら、恐らく全くだめになってしまうだろうと私は思っております。
 そうなってからでは本当は遅いんです。でも、国民がわからなかったらしようがないですね。そこまで持っていってしまうんですね。そういうのも手だと思います。

○翁主席研究員 2つお伺いしたいんですが、地方分割について、6ページのところでも少し御説明いただいたんですが、当事者意識を持てるとか、もっと能力が発揮できるかとか、それから経理の明確化とかという意味では地方分割というのは非常に意味のあることだと思うんですが、一方で郵便については全国ネットワークということでのネットワーク効果もありますし、また、先ほど少し御説明いただいたんですけれども、地方銀行の現状を考えていると、やはり金融の部分で分割することによる金融システム全体に対するデメリットというのも感じるんですけれども、その辺についてもう少し具体的に、地方分割のイメージをお聞かせいただきたいというのが1つです。
 もう一つは後で申します。

○加藤学長 これはむしろ翁先生の方が専門でございまして、私は翁さんの書かれたものを読んでいますけれども、私の頭の中では金融に関しては雑でございまして、私はどちらかというと、今350 兆あるお金、簡保の方は新規受付けをやめてもいいんじゃないか。あとは古いものだけどう処理するかを考えて、投資信託などを使ってやっていけばいいと思っているんです。
 残った250 兆のうちの、これは10分割いたしますと、大体20兆銀行になるわけです。20兆銀行でございますと、できなくはない。さっきの簡保の方が大変です。あれは100 兆超えていますから、とても40兆くらいの日本生命でもやれません。だから私はそっちは難しいかなと思っていますけれども、投資信託の保有率が日本は非常に低いですから、投資信託をもっと増やせればいいんですが、投資信託会社がいけないんです。証券会社が国民をだましたものですから、だから、結果的にみんな離れたんですけれども、もう一回これは復活させることができるだろうと私は思っていまして、これはいいんですが、郵便貯金の方は大体20兆銀行になります。
 20兆銀行になりますが、お金を集めるだけですから、全然投資していく能力はありません。それはだめなんです。これはやったってまた同じことをやるわけです。こんなことをやらせないで、むしろ集めたお金を特殊法人に回さないように地方で使ってしまう。さっき私が申し上げた道州制のプロックで考えますと、大体日本全体がバランスを取っているんです。東京以外はバランスが取れておりまして、そんな特別なところだけが儲かっているということはないんです。そのお金をその地域の中でむしろ使っていくためには、地方銀行がそこで役割を果たすわけです。そこの融資をしていく。これは金利差がございますから借りて企業に貸しても、必ず利差が出てまいりますから、そこでやれる。こういうふうに私は頭の中では思っているんです。
 ただ、そこまで一挙に行くことはなかなか難しいかもしれないから、場所によって考えるところもあるし、そうでないところもあっもていいんじゃないかという程度に考えています。

○翁主席研究員 もう一つお伺いしたかったのは、このタイムスパンの問題で、雇用の問題というのが非常に難しくて、全体の雇用対策ということで恐らく国鉄でも9年くらいかかったという話を聞いたことがありますが、郵政の場合も非常に雇用の問題というのは重要で、時間のかかる問題だと思います。一方で金融など、多分、物流の世界もそうだと思うんですけれども、非常に日進月歩で経営を巡る環境というのは早く変化するので、企業価値を劣化させないということも非常に重要だと思いますが、中間報告では移行期間は5年~10年というのが出ているんですが、先生はどういうようなイメージでお考えでしょうか。

○加藤学長 スパンで考えますと、10年でやっと方向がつくんじゃないかという感じなんです。今みたいに2007年に民営化ですというのは、ちょっと早過ぎるという気がします。早過ぎるというよりも、国民に誤解を与えます。そんな急速にできるのかという気になりますよ。
 私はやると言ったって、部分的にやってみた、それから全体として、これは早くやるけれども、これはゆっくりやる。例えば窓口の拡販などは先にやったって構わないですから、そういうことをやってみるとか、いろんなやり方を工夫した方がいい。
 さっきもちょっと申し上げましたが、民営化のときには市場活力の導入、PFIとか規制緩和とかいろいろあるんですけれども、こういうものをどんどん変えていけばいいわけです。
 現在でもそうですけれども、例えばどぶろく特区という構造特区などがあるんですけれども、あれは全然普及しない。何で普及しないかと言いますと、酒造会社はもう権利がありますから、書類は出して届けが認められていますから、できるんです。ところが、余り儲からないからやる気がない。ところが、どぶろく会社を新しくつくろうと思うとどうなるか。膨大な資料を用意しなきゃできないんです。そういう規制を残したままでやれやれと言ったってできっこないんです。
 私はそういう規制をどうやって早く郵便関係、あるいはこの郵貯関係でもなくせるか。竹中プランで出た中で非常にいいのはイコールフッティングです。政府保証をやめる。これを最初にやればいいんです。それでも民営化なんですから。そういうおおらかな民営化を頭に描いた方がいいと私は思って「ます。

○奥山会長 今の点で私も小泉総理が5年でやるという話をして、今は5年~10年ということになっていますが、加藤先生は、もっと国民全体がそういうふうに行くようにいかに改革をしていくかということについて力をそそぐべきだというふうにおっしゃられたんですが、先生がお考えの郵政民営化の終点というか、どんな姿を思ってその10年ということですか。

○加藤学長 終点は私が頭で思っているのは、正しいかどうかまだ検討する必要があると思っているんですけれども、答えはこの「郵政民営化研究会」の最初のところが竹中さんのお考えになっている五原則でございますが、その五原則をみんなで議論いたしまして、大体こういう方向じゃないかということを頭の中に描いたんです。それはここでまとめてあるんですけれども、これはまだ公にはしておりませんけれども、1つは、市場指向という点で委員は一致しております。この委員というのは大体20人くらいいるんですけれども、その人たちはみんな一致しております。
 3ページのところでごらんいただきますと、四角がありまして、その四角の下のところ「官僚主導の公社体制維持か市場指向かという観点については、『市場指向』という方向で委員の意見は一致している」。
 それから、官僚主導のシナリオがあるわけで、これは4つあり得るわけなんです。官僚主導でやるのか、それとも民営化で行くのか。更にそれを4つに分けておりますから、この図をごらんいただきますと、4つの分類になっておりまして、それぞれがあるんですけれども、まず官僚主導で郵政改革が進められる可能性については、「郵貯簡保資金の自主運用や郵政公社体制の維持が考えられる。しかし、運用ノウハウが無いため資金の自主運用は不可能であるし、生田総裁がいろいろ積み重ねている」けれども、これは不可能だろうと私は思っております。
 更に「資金運用単位を地域分割して強制的に地域再投資」をするということの官僚主導があり得ます。しかし、これでやったらば、政策投資銀行と同じことでございまして、全く官僚主導が変わりません。
 4ページでございますが、市場指向的な考え方でどんなシナリオがあり得るかということで考えてみますと、私は大体300 万円程度の小口決済に特化することがいいんじゃないかと思っております。
 その300 万円程度の小口決済に特化した機能に衣替えすることで、国民の利便性も損わず、民業圧迫にも当たらない事業展開が可能だと思っております。そして、郵貯資金の自己資本不足が指摘されていることが当然出てまいりますけれども、これは預金保険料を上げることによって保証していかなければならないことになります。
 更に法人税なども勿論出さないといけないですね。
 それから、更に下から2番目の段落でございますか、ここでもって郵政公社でも検討されている投資信託商品の販売、民間生命保険の代理店業務、あるいは地方自治体出張業務といったような窓口をやっていくことも十分手数料収入でやれることが可能でございます。
 それから、特定郵便局については、経営の自主性を高める選択肢を与えることが必要でございます。これは公務員から民間人の身分を選択制にすることです。これは強制してはだめです。選択制にする。
 次は5ページでございますが、今度は本当の意味での完全民営化でございます。これは市場指向で戦略的シナリオを考えておりますが、なかなか郵貯・簡保の廃止にまでは踏み切れません。それは利便性の原則とか、配慮の原則がございますから、そういうことで郵貯・簡保の廃止にはなかなか配慮の原則などがありますから、踏み切れない。
 ですから、私から言わせると、存続させることにしまして、ファンクションをどこの範囲でやるかということを決めればいいんでありまして、全部を同じようにしようとする必要は必ずしもないと私は思っています。
 それから、着実な成果の第一歩として、営業力では民間生保にひけを取らない簡保がありますから、これは切り離して検討することが可能でございます。政府保証付き旧簡保を民間に売却するというんですけれども、これがなかなか100 兆から110 兆もあるんですから、なかなか難しいと思いますけれども、その前に職員の訓練をいたしまして、生命保険募集人資格を与える。資格を与えますとみんな勉強しますので、こういう人たちは失業いたしません。生命保険募集人資格。これは今民間生保でも非常に人手がなくなって困っているんです。
 どこの生保でもそうですけれども、収益が上がる企業というのは、たくさん労働の目標がございまして、たくさん雇用を増やすことのできた生命保険が収益を上げるんです。日本生命は一番大きいんです。そういうものをどんどん資格になりますと、今度は変わります。特にFP、ファイナンシャル・プランナーが今後出てまいりますから、この人たちの資格がそ黷ノ当てはまってまいりますので、非常にプラスが大きくなると考えられます。
 それから、完全な市場指向では郵政は資金運用の専門的経験、ノウハウを持っていないため、既存金融機関への運用委託を原則とすべきであります。
 ちょっと飛びますが、地場産業への投資をファンド化した投資信託を通じた間接的な運用を行うことで実質的に郵便貯金が地域投資に回るような運用方法を考えた方がいいと思っております。特にこの郵貯が危険なのは、社会保険と同じでございまして、社会保険庁が社会的責任を持っておりません。そのために勝手なところに使って、今問題になっておりますけれども、大体政府が金を集めますと、よけいなリゾート施設をつくる危険があるんです。これはアメリカではERISA法がありまして、これを取り締まっているわけです。こういうことを日本は先にやっておかなければだめでございます。
 私は郵政の方からもいいんだけれども、どんどんERISA法を先に提案して、実際に郵貯のお金が社会保険に回ったりするわけですから、そういうところを全部取り締まった方がいいんじゃないかと思っておりますけれども、とにかく責任を取らせなきゃだめです。
 一番下になりますけれども、郵貯よりも収益性が高く、リスクが低い個人向け運用商品に資金移動が起こるように仕向けることもいいんじゃないかと思っております。
 6ページになりますが、上から2行目でございますが、短期個人向け国債の新規発行、投資信託商品の充実などが恐らく解決策になっていくだろうと思っております。
 ユニバーサルサービスなどについては、先ほど申し上げましたので省略いたしますが、大体こんなことを頭に描いておりまして、道州ブロックでもって大体お金が循環できるような地方金融の姿を考えたらいいんじゃないかと思っているところでございます。

○中城審議官 ほかに何がございますか。
 それでは、大体予定の時間になりましたので、本日の加藤先生のお話はここまでといたしますが、後ほど事務局から今日の模様は記者ブリーフをしたいと思います。
 加藤先生、本日は貴重な時間を与えていただきまして、ありがとうございました。あとちょっと事務的な連絡がございますので、メンバーの方におかれましては、恐縮ですが、しばらくお時間をいただきたいと思います。
 加藤先生、どうもありがとうございました。

(加藤学長退室)

○中城審議官 それでは、最後になりましたが、次回の会合の日程等につきまして、事務局から御連絡申し上げます。

○利根川参事官 来月中の日程でございますけれども、既に皆様の方に概略御案内はさせていただいているかと思いますが、6月16日の水曜日と6月18日の金曜日の2回予定をさせていただいております。具体的な時間につきましては、この2回ともヒアリングを考えたいと思っておりますので、相手の御都合も踏まえて、具体的な時間は設定したいというふうに考えております。また改めて御連絡をさせていただきたいと思います。

○中城審議官 それでは、事務局からの御説明で何か御質問等ございますでしょうか。

○翁主席研究員 ヒアリング先はどういったところが候補になっているんでしょうか。

○利根川参事官 今日は総論編ということで、加藤先生にお願いをしたわけでございますけれども、次回は、先ほどの総論編を受けまして、実際に民営化をした企業の方をお呼びして、その実際の経緯ですとか、それから現状、考え方、取り組んでいること、悩みとか、成功、失敗とか、そういったお話を伺おうかなということを今、考えております。
 具体的にはまだ決め打ちということではないんですけれども、JR、NTT、JT辺りから少なくともお一方はお呼びしたいなと思っております。
 更にその後どうするかについては、改めてしたいと思いますが、あとは公益事業の方、例えば電力とか、割とネットワークビジネスに近いようなもの、そういった方からも1例くらいお呼びしたいなと思っております。更にというのはこれから考えていきたいと思います。

○渡辺室長 先生方から御要望を出していただいてもいいでしょう。

○利根川参事官 はい。物理的にどのくらいの時間で、どのくらいの回数設定できるかということと、今後の検討の段取りもございますので、それと併せて考えなければいけないので、とりあえず今考えていますのは、総論の後、各論で、具体的にやった人に対して話を聞くと、その辺を皮切りにスタートしたいと思います。

○中城審議官 もし、こういう人を是非ということであれば、言っていただければ事務局としても接触したいと思います。
 よろしいですか。それでは本日の会合はこれで終了したいと思います。
 本日はどうもお忙しいところありがとうございました。