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郵政民営化に関する有識者会議第9回会合 議事要旨

日時
平成16年7月30日(金)
10:00~11:55
場所
虎ノ門10森ビル(3階)
郵政民営化に関する有識者会議室

○中城審議官 それでは、定刻になりましたので、これより郵政民営化に関する有識者会議第9回会合を開催いたします。本日は、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。
 本日は、最初に海外出張の結果等につきまして吉野教授及び翁主席研究員より御報告をいただいた後、民営化後のビジネスモデルについて、前回から引き続き宇田プリンシパルから御発表いただきまして、それについての皆様方の御意見をお伺いさせていただきたいと考えております。
 なお、議事に入る前に、前回と同様、日本郵政公社より経営企画部の谷垣戦略担当部長及び出西企画担当部長にオブザーバーとして御出席いただいております。
 なお、11時45分ごろに竹中大臣が出席の予定であることをお断りさせていただきます。
 それでは、まず最初に吉野教授よろしくお願いいたします。

○奥山相談役 その前に、一言よろしいですか。
 このところ、報道で余りにも激しいといいますか、まだ議論をしていない、これから議論をしようとしていることが相当出ているような感じがするんです。特に、日経新聞などでホールディングカンパニーの構想が出たり、あるいは地域分割しないということが出たり、それがどうも内閣府の素案とか、政府の提案とかという形で出ているようなのですが、これですとどうも有識者会議と別なところで議論しているのかなというふうな気持ちにもなりまして、大変私としては面白くないという気持ちがあるんです。
 この辺は、是非準備室としてどういうふうにこの問題をとらえているのかを先に明確にしていただいてお話に入っていただきたいという気持ちでございます。

○渡辺室長 奥山さんがおっしゃったとおりでありまして、今の記事の状況を見ますと、やはり小泉内閣総理大臣があれだけ力を入れていることなので、この8月2日、6日の経済財政諮問会議が山だということは新聞の方も色濃く意識をしておりまして、それより前であればかなりの観測記事を書いても誤報にならないというふうな状況の下で記事を飛ばしているというのが客観的な認識だと思います。
 私の方からは、実はそういうふうなクレジットが付いた報道ですね。内閣府である程度方針が決まったとか、準備室がどうとか、そういうことについてはミスリードをするということなので十分留意していただきたいと定例の会見で申し上げております。実は水曜日にもそのことを念押しをいたしまして、新聞は絵になるのは会社組織なものですからまず組織から入っていきますが、私たちは今、機能をやっているところだ。その機能が十分に分析をされて、しかるべき後にどういう業務をやるのかという業務、事業があって、そしてそれにふさわしい組織がつくられるという前提なので、そこら辺は十分気を付けてやっていただきたいということを新聞各紙にも正式に私の方から伝えております。
 それから、これは何回も言っているのですが、最終的に事柄を決めるのは経済財政諮問会議であって、私どもの作業はそのための素材を有識者の方々の指導、助言をいただきながら経済財政諮問会議にお届けをし、御注文をいただくことであると念押しをしております。
 とはいえ、流れが止まらないわけでして、今、奥山さんからお話があった日経が口火を切ったことによって各紙がどうしても書かざるを得ない。日経がこう書けば、それより更に先をということがございまして、我々も今日も出てくるときにあるマスコミがいたので、土日までは観測記事を飛ばすのかもしれないけれども、月曜日以降そういうふうなことをやったら我々は誤報という形で会社の名前を挙げてきちんと表明するぞということを言っておきました。以上です。

○中城審議官 それでは、吉野教授お願いいたします。

○吉野教授 それでは、私の方からイギリスとオランダとスウェーデンの調査を終えましたので、御報告させていただきたいと思います。
 この目次でいろいろまとめていただきましたが、大きく分けますと3つの部分があるかと思います。1番目が窓口ネットワーク、2番目が郵便事業、3番目が金融サービス、この3つが各国でどうなっているかということをいろいろ調べてまいりました。それで、ここは表になっておりますので、私自身の印象から幾つか申し上げたいと思います。
 まず、イギリスの場合は一番上の窓口ネットワークでは主に民間委託局が非常に多いということであります。これはもともとイギリスが直営のところが少なく、ほとんどが委託業者であったということがあると思います。それからもう一つ、郵便局の窓口はいろいろな政府の年金の受取りとか、政府の機関として政府の業務を代行していて、そこからの収入が非常に多かったという点があると思います。それから、最近では年金の受取りなどが自動振込みになりまして、この部分が窓口会社にとっては一部打撃になってきているということがございます。
 次に、2番目は郵便の方でございますが、郵便に関しましては、ここでは信書とか封書と小包と大きく分けられると思います。どの国も信書あるいは封書に関しては衰退産業である。インターネットとかテレホンバンキングによって、ここの部分は相当これから減ってくるだろうという予想であります。小包に関しては、今後とも需要はあるだろう。その中でも、例えば海外との競争が非常に小包では激しくなっているというのが2番目の特色であります。
 各国ごとにもう少し申し上げますと、イギリスの場合には郡部の郵便局の維持のためにいわゆる補助金、財政支援が一部出ております。しかし、オランダとかスウェーデンは一切出ておりません。私個人としましては、やはりこういう財政支援というのはない方がいいように思います。特にスウェーデンは、御承知のように地図をごらんいただきますと田舎が多いわけですが、ここをどうやっているかといいますと、地方に関しましてはほとんどのところがアウトソーシングです。独自では店舗を持たない。向こうの言い方ではパパママショップという言い方ですが、地元の酒屋さんなどにほとんど委託する。更にもっと田舎になりますと、自動車で回っていくような郵便のサービスもやっているようであります。
 次に、もう一点としましてはこういう郵便の金融サービスをどう考えるかということであります。各国とも、ここのところは少しずつ離れて考えております。例えば、郵便局であっても郵便のための郵便局と金融サービスのための郵便局では設置の仕方が違うのではないか。そこで、オランダでは郵便会社、それから窓口会社、ポストバンク、いわゆる金融部分、この3つを全部分けているわけであります。
 それから、オランダは御承知のように民間が積極的に展開をしておりまして、バンクの金融の部分ではINGという会社と提携を結んでいてそこの商品を販売しております。ですから、今後の日本の郵政の金融部門でも、ある特定の会社と結んでいくというような戦略もあるかと思います。オランダのINGは特に海外の進出を目指しておりまして、郵便会社のケースでは中国市場を積極的に開拓する。これから需要が見込まれるのは中国市場である。アジアの中でもそこを中心に戦略的にやっていきたいと言っております。それから、先ほど郵便の面では封書とか信書は衰退産業だと言いましたが、ここは各国ともコスト削減、それから中での組織の柔軟化ということを進めております。
 最後は郵便局ネットワーク、それから郵便、金融、これを3つ分けた方がいいかどうかということがあると思います。これはやはり各国のそれぞれの事情によりまして、国によって違うと思います。私は日本の場合は、例えば郵便事業と郵便局の窓口は一体として、金融事業は別にするという方法もあるように思います。
 それから、オランダなどでは、スウェーデンもそうですけれども、第三者の金融商品、スウェーデンですとほかの銀行のキャッシュの窓口として郵便局のATMが使われております。オランダでも、第三者の商品をいろいろこれから進めていこうということであります。
 それから公務員としての身分でございますが、オランダとかスウェーデンは民営化いたしまして公務員としての身分がなくなりました。これに関しまして、オランダは民営化された後の方が給与が上がったそうでありまして、ほとんど皆ハッピーであった。むしろ公務員でない方がよかったということであります。スウェーデンの場合は、公務員は現在でもそうなんだそうですが、終身雇用ではないそうであります。ですから、民営化後も終身雇用でなくなったわけですけれども、それも現行の公務員の制度とほぼ同じであるために余り大きな打撃は受けなかったということであります。
 各国ともそれぞれ国によって違いますが、やはりどの国もコスト削減、アウトソーシング、やれるビジネスはやっていく。こういう形で業務を展開しているように思います。
 以上、簡単ですけれども、御報告させていただきます。

○中城審議官 ありがとうございました。それでは、引き続きまして翁主席研究員からお願いします。

○翁主席研究員 私はドイツだけでございますので宇田さんと重複する点もあるかと思いますが、私がドイツ・ポストとポストバンクを訪問しまして印象深かった点を3点ほど挙げたいと思います。
 1つは、信書、物流部門において極めて激しい競争をてこにして非常に発展をしているという印象でございます。例えば、信書部門につきましては今まで独占の部分というのはあったのですけれども、早晩独占がなくなるということが予定されていまして、それをにらんで一層の信書事業の効率化とクオリティの向上に向けて経営体制を更に一段と強化しているという印象でございました。従来から集配局とか仕分けセンターをスクラップ・アンド・ビルドでかなり配置換えをして、そこで資金を捻出して、これをさらなる発展に使うという形でやってきているんですけれども、近年一段とそういったことをやっておりますし、それからまた輸送モードを組み替えるという形で効率化とクオリティの向上を一段と図っている。
 それから、国内だけではなくて独占の部分がなくなるということをにらんで、更に欧州内諸国へのシェアの拡大の動きというのもございまして、一層欧州間でのこの分野での競争が激しくなる。その競争を活用して、一層発展していこうというようなことでございました。従来は規制によって守られていたわけですけれども、規制緩和を見越した新しい戦略に既にモードをチェンジしているという感じであったと思います。
 それから、物流に関しては日本でも紹介されていることですけれども、世界的な展開というのが10数年前から一段と盛んになってきていて、もちろんアメリカだけではなくてアジアにも非常にドイツ・ポストなども興味を示している。そういう意味では、日本もどんどん遅れないように国際的な視野でこの問題を考えていかないと将来禍根を残すのではないかという印象を持ちました。
 2点目は、窓口ネットワークと金融、物流との関係でございます。私が印象深かったのは、国内の窓口ネットワークを金融事業も物流、信書事業も活用しながらも、これだけに依存しない経営を目指しているという点です。金融につきましては、店舗網だけではなくていろいろなデリバリーチャネルの多角化を推進している。インターネット、それからモバイルとか、について非常に積極的に取り組んで、それぞれのチャネルに応じた商品の提供を心掛けている。投資信託などに関しましては、インターネット活用層というのは富裕層が多いということでそういった層を重点的にやっていて、既にインターネットチャネルは非常に店舗網と並ぶぐらいの販売シェアになっているというようなこともございます。
 それから、そういったリテール以外に法人部門についても相当力を入れていて、例えば物流とワークした形でシナジーを効かせたファクタリングとかリースといったものにも取り組みを強化していますし、それからリテールにはなりますけれども、小口決済部門についても非常に重視をしてこれから拡大していこうというようでございます。
 今回、ポストバンクがIPOを果たしたわけですけれども、これも市場での評価を向上させて、新しいビジネスを開拓することにつなげていきたいというような意図を言っておられました。こういった窓口チャネルを活用しつつ、それ以外のものにも進出するという営業基盤の構築の仕方というのは、3事業間の金融事業とのリスク遮断にもつながっていくものかと感じられました。
 それから、窓口部門については宇田さんからもお話があると思いますが、今後一層透明な経営、コストセンターではあるんですけれども、そこをだんだんプロフィタブルなものにしていきたいということで、いずれ窓口部門を独立させていきたいというお話がありました。
 それから、窓口と金融との関係につきましては、ドイツの場合はユニバーサルサービスが金融部門では義務づけられていないので、すべての店舗で金融サービスを提供しているわけではないということと、それからポストバンクは、ドイツ・ポストの窓口の部門の従業員をなるべくうまく、いろいろな金融知識はないとか、そういう面はあるんですけれども、それを教育をして、金融商品を積極的に販売しているというような構図になっております。
 それから、郵便局にも参りましたけれども、集配機能というのは窓口と独立した形になっていまして、集めることは集めるんですが、それをすぐに集配センターに様式ごとに箱が決まっていて、それを送るような形になっていて、集配と窓口が独立した形にされておりました。
 3番目は、IPOの話です。これはドイツ・ポストもそうですし、ポストバンクもIPOを実施したわけですが、今回ポストバンクのIPO、先ほど新規のビジネスを顧客の拡大につなげていくという話がありましたけれども、やはり大きな目標としてマーケットからのプレッシャーに絶え得る、規律づけを行えるような会社をつくるということで、非常にIPOを民営化プロセスの目標として重視しているといっていました。
 IPOを成功させるのは、やはり競争を通じて活性化されるような政府のステーブルな規制や制度設計の在り方とか、企業文化の変革とか、従業員やステイクホルダーとのパートナーシップの構築とか、そういったものがこういった民営化を成功させていくいろいろなかぎであるというようなお話がございました。
 印象深かった例とオて、以上3つを挙げさせていただきました。

○中城審議官 どうもありがとうございました。
 御紹介が遅れましたけれども、今回の外国調査につきましては、これまでの準備室の調査などの結果をお手元に「諸外国の郵政事業の動向」という紙でまとめて配布させていただいております。
 それでは、次の議題でございますビジネスモデルにつきまして、宇田プリンシパルからよろしくお願いいたしたいと思います。

○宇田プリンシパル 1点だけ確認なんですけれども、今お話があった「諸外国の郵政事業の動向」にはドイツで聞いてきたこととか、あるいはイタリアで確認をしたことが含まれていないところもあります。この調査レポートには最初に私の名前も載っていたんですけれども、議論したことでかなり抜けているところが多いので、これは準備室として別途調査したことというふうに扱ってほしいということでお願いをいたしました。これは吉野先生のものは入っているかもしれませんけれども、我々有識者のメンバーが海外調査で現地で議論してきたことは一部しか入っていない。したがって、これが調査報告書だということについては、私はそう思っておりませんので、そのように扱わせていただけるとありがたいと思います。
 それでは、ビジネスモデルということです。私も海外の調査をしてきましたが、ドイツとイタリアしか撮らなくて、フランスは撮る暇がなかったんですけれども、郵便局に行った写真を最初に少しごらんにいれてイメージを持っていただいたらいいかと思います。ただ、各国で1つずつしか行っておりませんで、これが全部だと申すわけではございません。
 ここはメンバーと一緒に行ったところなんですけれども、ミュンスタープラッツ中央郵便局といいまして、ボンの中央郵便局だったところです。今もその機能はあります。この広場の前に存在していまして、人通りのかなりにぎやかなところです。以前は、集配から何から全部機能を持っていたところです。
 ところが、何が起こっているかというと、この中はスーパーマーケットになっています。元集配所があったところはまだ外壁とかは保存されていますけれども、スーパーマーケットになっています。
窓口は当然のことながら残っています。いわゆる窓口と集配分離というのはこういうイメージでございます。集配施設は、中央郵便局が売却しようと思ったら1,500万ユーロにしかならないということだったようです。つまり、集配施設がそのまま残っていると売れない。だから、自分たちで2,500万ユーロを追加でかけまして、それで4,000万プラルアルファでスーパーマーケットに売却した。
 皆さんいろいろなところで海外のポストの写真はごらんになっているから余り珍しくないと思いますけれども、これはカウンターでありまして、預金も郵便も全部一式あります。一つのカウンターですべての機能を持っているわけです。後ろにいろいろ書いてありますけれども、決済の商品の名前が書いてあります。
 我々も列に並んだんですけれども、実は待ち時間は短かったんです。なぜならば、細かい話をして申し訳ありませんけれども、入り口のところに何人入ってくるというのを測るセンサーがありまして、ある時間の中で一定以上の人が入ると窓口を増やすという仕組みにしております。入り口にはATMとか、そういうものが置いてあります。
 それから、これは郵便局の内部なんですけれども、これが物品販売です。テレコム関係の物品で、真ん中にコーナーみたいなものがありまして、こんな形で真ん中で売っていました。一番奥には切手収集の趣味の人たちのためのコーナーなどがありまして、そこだけは子会社の人なんだけれども、あとは全部ドイツ・ポストの社員がやっているということです。
 この写真は相談コーナーです。この相談コーナーは住宅ローンとか、投信の販売とか、そういうようなものを売るところですけれども、これもドイツ・ポストの職員がやっています。ポストバンクの人ではなくて、ドイツ・ポストの職員がトレーニングをされてここでアドバイスをしているということです。細かくなりますが、ポストバンクそのものは2,000人ほどのファイナンシャル・アドバイザーを持っていますけれども、その人たちはここにいるのではなくて、外訪を中心に自分たちの独自チャネルとしてやっているということで、ここにいるのはドイツポストの人たちです。
 次がイタリアです。ここもカウンターの人がお金から切手から全部やります。ここにポストマットカウンターというものがあります。これはカードを保有している人は優先的にこちらを使っていいですよというカウンターです。カードというのは決済カードです。ここもアドバイザーがいまして席を分けていますけれども、ポストイタリアーネの職員がやっているということであります。
 以上、ちょっと駆け足ですけれども、エッセンスとい、ことで見ていただきました。要はここでドイツのものを見ていただくと幾つかのポイントかなりクリアかと思っております。ドイツポストは窓口と集配を分けて、過去10年間に8ビリオンユーロ、約8,000億円以上のお金を捻出して、それをソーティングセンターとか、そういうものに再投資をして効率化を図ってきたということです。そのうちの一つの例がこれだということです。
 それからもう一つは、ポストの窓口の使い方です。ここは1日2,500人くらい来てくれる郵便局で非常に多い方なんですけれども、稼働率を上げていくのがいかに大事かということです。ここは基本的には窓口で売れた物に対しては金融とか郵便に全部レベニューとコストがいくわけです。
 でも、アイドルしている時間というのは一体だれが持つのかという問題が必ず出てくるわけです。そのときに、基本的にはユニバーサルサービスオブリゲーションのある郵便の方に課されるんだけれども、そうすると郵便の方のコストが高くなってしまう。そうすると、何としてもここの中でいろいろな物品販売とか、こういうふうな販売をして稼働率を高くして、店舗当たり面積でいろいろなものが売れるようにしていくことが非常に大事になってくる。大事なのは稼働率を上げていくにはどうしたらいいのか。それから、窓口というものをどうやって集配と切り離してベストなロケーションに置くのか、または集配は集配でベストなロケーションに置くのかということです。
 それから、金融との関わりで言うと、先ほど翁先生もおっしゃいましたけれども、金融自体はポストバンクというのは本当の銀行でありましてかなり強力だとは思いますが、彼ら自身は窓口の対面販売というのはドイツ・ポストに全部委託している。決済商品から何から全部委託して、自分たちはそれ以外のチャネルでやっている。訪問するとか、電話とか、インターネットとか、モバイルとかですね。それで、最近はその窓口以外のところが結構増えてきているので、金融の方も窓口からの対面に依存しないでできるだけやっていこうということで流れをつくっています。調査の写真から見えるのはこんなところでしょうか。
 あとは、中身の話に移ります。前回、少しお話をさせていただいて、今回もう一回議論をしましょうということでありましたので、今日議論はするんですけれども、もう一度ここで確認させていただきたい。
 シミュレーションということが少し先走っていろいろなところで言われて少し戸惑うところもあるんですけれども、例えば今、事業環境というのはこれだけ変化しているという中で、5年後から10年後に一体どういう収益があるのかを予測するということは非常に難しい話です。そのこと自体をシミュレーションと言っているわけでは多分ないだろうと思いますし、それが目的ではないでしょう。ましてや、そういう一つの長期的な枠組みに従って経営主体を規制していくというようなことの枠組みを今はめていってしまうというのも、本来の目的ではないんだろうと思います。
 本来、今回のこのドイツの例などもそうなんですけれども、やはり民営化後の収益というのは経営陣がどれだけ頑張るかということでありまして、ドイツの方は極めてきっちりしていて、経営がものすごい理詰めで今の金融戦略なども非常によく考えている。やはりそういう経営陣の不断の経営努力とか、どれだけその市場環境変化に応じて顧客サービスをつくれるのかということですね。それから、柔軟な組織改革ができているのかとか、生産性の改善というのはどこまで進められるのか。これらが非常に重要です。
 その結果として、収益がどうなるのかというのはかなり変わってくるわけでありまして、他律的に決まってくるというものよりは、やはり経営の成果として自律的に決まってくるものだと思っています。したがって、ここでの議論というのはそういう自律的な努力によって将来自立できるように、収益の幅が大きくなるように、あるいは効率化が進むように、生産性が上がるように、今、何を考えておくべきなのか、あるいは何をしてはいけないのかということを考えるためのものであります。私がこれから申し上げるものは2008年度にはこうなっています、ああなっていますということで、それによって事業モデルを選択するとか、そういうようなこととは意味が違うということを是非最初に確認させていただきたいと思います。
 民営化のインパクトというのは「見えざる国民負担」1.1兆円とか1.2兆円という数字ももちろんあるんですが、実は事業体として一体どういうふうに変わるのかということがあり、その結果としていろいろなことが起こってくるという理解です。
 民営化前のこれまでというのは、基本的に国民に対するサービスのレベル維持に対して政府が責任を負担する。だから、事業運営者に制約を課していきます。それから、同時に補助も与えましょうというようなことですBしたがって、事業体の側からすると経営自由度はかなり制約は受けるんだけれども、事業経営責任は問われない。
 今後どうなるのかというと、政府の関与というのは一般の民間事業者への監督機能と同レベルとする。ユニバーサルサービスオブリゲーションのあるところだけは別ですけれども、基本的にはそういうことです。補助を取り除くと同時に制約も解消しましょう。経営に自由度を与えて経営者の裁量の余地を拡大していこうということです。
 そうすると、今度は経営者の側に規律が必要になってくる。経営の規律と戦略的な自由度の拡大というのは裏腹であるということだと思います。
 この規律を自分でつくっていかなくてはいけないわけです。自分で規律をつくっていくのはどういうことなのかというと、やはりそれは一種の収益であり、それから事業としての責任ですね。そういう責任が明らかになってくるかどうか。これが非常に大事なところではないかと思っていまして、その結果として国民負担が最小化し、健全な市場競争が健保され、それからサービスレベルも改善していく。今回ドイツとかイタリアとかで議論をしてきて、多分こういうふうになっているのかなと思ったわけです。
 事業者を主体に考えるようになるというのはこれまでとは全く別世界です。例えばフランス、ドイツなどでも郵便にユニバーサルサービスオブリゲーション(USO)が課せられたり、郵便局の設置基準というものが課せられる際に、自分たちで経営をやっていると、そこまで必要ないということが当然あるわけです。けれども、例えば設置基準が課せられてしまう。そうすると、その設置基準のために自分たちは幾らコストを負担しているのかということを明確にするわけです。その負担についてはどうしようかということを政府と交渉をする立場になるわけです。だから、そこのコストは自ら進んで目に見える形にする。自立するというのはそういうことでありまして、いろいろな制約はあるんだけれども、それに対して自分たちがベストでやったらどういうことになるのかということを数値で把握し、追加の制約の結果これだけかかっているということを自ら証明していく。それによってリザーブドエリアを確保したり、フランスとイタリアであれば補助金であるとか、税の優遇とか、そういうようなものを受ける。そういう世界に移るということです。
 だから、民営化の意義とかインパクトということで時間を使うのもいいんですけれども、事業体が今後どう転換していくかとか、自立と戦略的自由度というものをどう確保できるのかということが大事になると思います。
 今回事業モデル検討の際に何をベースに考えたかということですが、民営化の意義のところは国民負担の最小化、健全な市場環境の担保、継続的な効率化、サービスレベルの改善、事業成長の実現という要求がきているわけでこれらをベースにしています。検討の前提条件は私が今までの議論を整理してみましたが、イコールフッティング、人員については自然減、郵便のユニバーサルサービス維持、金融と郵便事業のリスク遮断、「移行措置」をやってうまく動かしていく、これらのことが前提になっています。これを破るものはつくらないということです。
 考え方としては戦略的な自由度を与えることが非常に大事だということです。同時に経営的な規律ですね。効率化とか、こういったようなものに対して規律を導入するということで、これはコーポレートのレベルではガバナンスがありますが、事業単位と事業責任を明確化するということも極めて大事なことだと思います。
 それから、いろいろなものが今後変わってきますので、常に経営者がかじ取りができるという条件にしておいてあげないと、余り細かいことまで決めてしまうと大変なことになります。それから、ユニバーサルサービスオブリゲーションに関してはコスト負担というのは可視化されて、それに対してはこういうことが問題なんだということが議論できることが非常に大事になってくる。つまり、民営化された中でユニバーサルサービスオブリゲーションがあるというのは、事業会社としてもレギュレーション・マネジメントが必要になってくるということです。
 また、少なくとも現在推測できる前提において、官業の特典なしに自立できる可能性を持っていること。少なくとも最大限経営が頑張るとどういうふうになるのかを見るということも大事だと考えています。
 次は海外の例で、先ほど絵はごらんいただきましたけれども、事業モデルに非常に大事な影響があるところということで3つ挙げています。集配と窓口機能の分離ということと、金融商品、販売を中心とする窓口部門をどうするかということと、ユニバーサルサービス提供というのは郵便事業にして、コスト負担については可視化をして民間経営者が政府とネゴをしていくということです。
 イタリア、ドイツ、フランXについては郵便集配機能と窓口カウンター機能は原則分離をしています。これは、物理的に同じ郵便局にいたとしても、過疎地などでは指示命令系統というのは違います。郵便は郵便事業の指令で動き、窓口は窓口事業の指令で動きます。それから、収入とコストについては窓口から各事業に配分される仕組みを有します。これはどういうことかというと、窓口事業というのはやはり金融の販売等々によるところが非常に大きい。非金融商品、非郵便商品を売るだけでもうけている窓口というのはありません。
 そうすると、これは一種のコストセンターのように見えてしまうのですが、コストセンターというと皆さんの中でもコストがかかってもいいセンターだと間違える方がいるんですが、そうではないんです。そこでかかった費用というのはすべて事業会社の方のコストになります。事業ユニットのコストに付け替えられますということです。従業員のAさんが何に時間を使ったかというコストによって振り分けられます。レベニューのところは簡単に分けられる。金融商品が売れたか、郵便の窓口の受付をしたかということで、分けるわけです。それを分けた上で、窓口事業の中に郵便局というのが付いているわけです。そうすると、郵便局は全部プロフィットセンターです。なぜならば、郵便局一つひとつは窓口のポストであり、窓口で何が幾ら売れたかということは当然明らかになりますから、それを集めてきて、窓口として見れば全部それをより分けてそれぞれの事業に配分していく。少し細かい話になって申し訳ありませんけれども、そういう仕組みになっています。ドイツ、イタリア、フランス3つともそうです。
 物理的に同じ郵便局にいても指示命令系統は異なります。収入、コストについては分けます。それで、過疎地ですね。特にイタリアの例でありましたけれども、郵便集配機能と窓口機能を同一のスタッフが行う場合があります。その場合にもコストを配分する今みたいな仕組みというものをやって管理会計上分けております、あるいは指示命令系統で分けています。
 金融商品販売を中心とする窓口部門というのはどういうことなのかというと、イタリア、ドイツ、フランスともに窓口は郵便、金融の販売チャネルです。それで、投信や貯金商品も第三者商品の代理店として販売します。これらの3つの中では、ドイツのポストバンクだけがちゃんとした銀行です。イタリア、ラ・ポストの銀行も実は、金融とは言っても商品のマーケティングをやるだけで、実際の商品は別のところから持ってきて販売していますので、自分たちのところでBSを持ちません。ポストイタリアーネは、運用資産は20兆円と言うけれども、本当にそうなのか。では、それをあなたたちは持っているのかというと、それは政府の方で管理していますから自分たちは持っていませんと答える。では、パンフレットの記述はうそなんですねと聞いたら、これは間違いですと言っていました。
 それから、窓口のスタッフというのは郵便も金融も全部受け付けます。先ほどお見せしたとおりです。投信、住宅ローンの販売などに関してはやはり一定のスキルが必要なので、そういう人たちをトレーニングして、先ほどありましたような店内の別のスペースで対応をしています。
 それから、ユニバーサルサービスは郵便のUSOであって、窓口の設置基準というのは分けて独自に検討しています。
 郵便局の設置基準というのはフランスとイタリアで聞いたところ、明示はしていないということでした。明示していないが政府からいろいろなことを言われてくるので、それに対してどのくらいコストがかかるかということを示しつつ議論をするようです。
 すべて自分たちでコストがどのくらいかかるかということを計算をした上で議論をしているということであります。集配機能と窓口機能の分離というのは事業責任の明確化、ネットワークの効率化とか、先ほど言った資産効率の向上みたいな点からみて非常に大事な要素ではないかと思います。
 それから、金融商品の販売というのは大事でありまして、窓口の稼働率をどれほど伸ばしていくか。これが下がってくると、さっき言ったように窓口のコスト負担をだれかがやらなくてはいけないということになります。やはり窓口には頑張って販売してもらうのがいい。ドイツでは一人250品目売っていると言いましたけれども、そのくらいのことはできるでしょう。
 次に、窓口事業をどこに位置付けているかということです。繰り返しのところになりますが、ラ・ポストは基本的には金融部門との関係が非常に強いわけで、基本的には金融部門の下、かなり一体で運営している。それで、先ほど言ったようにコストセンターではあるんだけれども、コストの配分みたいなことは収入、コストともにそれぞれの事業部門に課している。
 ラ・ポストのバンキング機能というのは商品企画みたいな話だけだったので、それをもう一回全部集めて銀行として立て直していくかということを今、考えているところだと言っていました。彼らが言うには、郵便の中でちゃんと銀行をやっているのはポストバンク(ドイツ)だけだと言っていました。
 ポストイタリアーネは窓口部門というものはシェーアド機関ということで、一応こういうところに位置付けられています。この図は組織的な位置付けというよりは、マネジメントで担当者のトップの人たちがどこにいるかというと、このように顔がそれぞれ一人ずつというふうに考えていただいたらよろしいかと思います。
 ドイツは、金融のところにポストバンクと窓口部門というものが両方並列してぶら下がっているような形になっています。これはポストバンクがIPOになっても何にしてもそれは変わりません。それは単にオーナーシップが変わっただけであって、マネジメント上は変わらないという理解です。それで、ポストバンクは窓口部門を使いながら、しかもポストバンク自体は直営チャネルとして窓口以外のチャネルを持って自立的に経営していこうということであります。
 ラ・ポストとポストイタリアーネは金融への依存関係が非常に強いようなところもありますけれども、ドイツ・ポストはポストバンク自身が、自分たちはドイツ・ポストの中ではメインビジネスではないんだという意識で自立している。だから、ドイツ・ポストに依存しないで生きていくという意識が非常に強いです。これは非常に健全な考えでありまして、結果的には非常に大きな役割を窓口の中で果たしているんだけれども、最初からそういうふうには考えない。自分たちは端っこのビジネスなんだから独立してもできるよと言って、窓口に全部委託はするけれども、自分たちでもチャネルは持っている。こういうような発想は、ほかのイタリア、フランスとは全然別な発想だという気がします。何となく強いものに皆、群がっていくことになりがちですけれども、自分のところは端っこなんだから自分が自立するぞと考えて強くなっていくということで、これは非常に面白いことではないかと思います。
 事業モデルを考える上で最初に考えておかなければいけないのは、金融機能と窓口機能というのは、機能としてできるだけ分離をしていったらどうなのか。それから、郵便集配機能と窓口機能もできるだけ分離していく。マネジメント上、まだ管理体制ができていないとか、いろいろな問題があるかもしれませんけれども、この方向というのは窓口ネットワークの効率化とか、郵便ネットワークの効率化とか、窓口における顧客サービス力の向上とか、集配局の資産効率の向上とか、こういうことを考えた上ではどこでもやっていることでありまして、何ら特異なことではないのではないでしょうか。
 ここからは、ではそれでどのくらいの効果があるのかという話です。この前のシミュレーションは4つの部分から成り立っています。3事業の現状把握、4事業への分解、それから外部要因の想定、これは金利環境とかいろいろなものが関わってきます。それから、最後に自助努力。
 この外部要因によるものというのは一応どんなモデルでも同じ条件で関わってきますので、今回はその自助努力のところを試算してみました。もちろんこれは今できる材料で試算をしていますので、必ずこうなるということではありません。我々がよく事業会社に対して新規事業のオポチュニティとか、事業改革のオポチュニティとか、そういうようなものを出すときの一種の非常に初期の段階の手法を取って試算しているわけでございます。
 民営化による潜在的な効率化、成長インパクトを考えてみますと例えば5年後から10年後ぐらいの年間当たりということで考えていただいて結構です。前回、「見えざる国民負担」1.1兆円とか1.2兆円という話がありました。経営に自由度を与え、規律を与えてしっかりとした経営をやって相当なことをやれば、効率化も含めて商品販売もいろいろなことが売れるようになるというようなことは前提ではありますけれども、インパクトとしては9,000億円くらいになるのではないかというのが試算です。
 窓口ネットワークの効率化というのは窓口と集配機能が分かれることによって、窓口そのものの数とか、こういったようなものが例えばフランチャイズ化できるとか、簡易局化するとか、場合によってはその数そのものの一部統合ができるということも考えた上での値です。
 もちろん窓口については、もっと設置しなくてはだめなんだと言ったらこの部分の効果は少なくなります。そのときには、その設置基準で設定された部分だけ事業会社の方としては、これだけ効率化できると思っているんだけれども、設置基準があるから例えば2,000億円余分にかかる。その2,000億を誰がどう負担するのかという議論になるという意味です。
 それから、窓口組織形態別コスト導入ということですけれども、これは一応地域ごとノ窓口というのはいろいろな地域性も高いということで、例えば地域別の人件費とか、そういうものが一定量入ってくるという前提で考えてみる。窓口事業というものが金融と郵便とは離れて独立に運営をされて、そこで経営者がしっかり経営するようになるとこういうことが生まれてくるのではないかと思っております。そういうことを全部合わせてみると、窓口分離効果というのは最大5年後から10年後、経営者がちゃんと経営していくとこのくらいまでいくのではないかということがこの試算でございます。
 例えば窓口と集配の機能分離は嫌だと言ったらこの部分の収益向上の可能性を失うということです。それから、金融と窓口との分離はやめようといったら、同じくその可能性は失われます。ただ、それも皆さんの最終的な判断です。この7,000億のところはもういいよ、あとの7,000億は全部税金でやるんだということになれば、ここの部分というのは全部今のままというような案もあることはあります。ただ、経営に自由度を与えて、しかも規律を与えるとどこまでいけるかということを考えてみると、上限はこのくらいまでいけるのではないかということです。
 そういうことでまとめですけれども、潜在的にやはり民営化のインパクトというのは大きい。見えない国民負担の解消ということが1つありましたけれども、もう一つは先行きの不確実な経営環境の中で収益改善効果というのは窓口分離とか、こういうことが全てうまく行われれば最大9,000億くらいいくでしょうということですが、これはすぐにというわけではないです。5年から10年の努力の結果でということです。
 それから、それを最大限捕捉するために以下の2つのことは非常に大事になります。第1点は集配機能と、それとは性質の異なる窓口機能というのは分離が原則ということです。集配ネットワークの「効率化」の視点と窓口ネットワークの「効率化」の視点というのは違う。だから、切り分けないと相互の効率化は阻害される。集配・窓口分離により、特に都市部の集配局の資産効率化、即ちボンの中央郵便局の例でみたような現象が起こる。それから、郵便事業には全国一律サービス提供義務があるわけだから、集配と窓口機能を一緒にしておくと融通が利かなくなる。
 第2点は、金融部門についてはやはり窓口事業を完全分離するという案が将来的にはいいのではないか。窓口事業は顧客ベースとか窓口インフラ、あるいは外務員というものを最大限に活用して、とにかく多様な商品サービスを販売してリテール事業としての販売効率とか生産性を上げないといけない。これを中で縦割りにしたり、いろいろなことをやってここの部分が失われてしまうと、このコストがかかってくるということであります。だから、効率化の部分と生産性ですね。それから、販売のレベニューアップということがうまく担保できるような事業モデルにしたらいいのではないかということです。
 今後郵貯の預金量の低減とか、それから金利リスクとか、簡保の新契の低減とか、いろいろなリスクがあるわけです。そういうときに、一定のネットワークの効率化の余地を今から考えておく必要がある。それは全部コストにしておきますということですと、さっきのシミュレーションは成り立たないんです。金融環境によっては非常に変わってしまうこともあります。だから、改めて窓口ネットワークの稼働率向上、効率化については経営の自由度を持っているべきではないか。もちろん実際にどこまでやるかどうかということは経営判断に任される。このように十分な経営努力がなされれば4事業は将来にわたって自立し得るのではないかと思います。
 ちょっと駆け足でありましたけれども、私の方からは以上であります。

○中城審議官 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの発表につきまして御質問、御意見などがありましたらよろしくお願いします。

○宮脇教授 今の宇田さんの御説明の最後の「事業モデル検討のまとめ」の「潜在的に大きな民営化インパクト」に出てくる、見えない国民負担の問題です。私は、見えない国民負担の解消は位置付けとして非常に大きくとらえていくべきだろうと思っています。
 というのは、一部に見えない国民負担は法人税とかを払っていない等の問題で、それに対しては国庫納付とか別の方式で負担しているのだといったような説明があります。こうした説明は正確に言うと見えない国民負担の一部であり、見えない国民負担の本質的な問題点は見えない、あるいは見えづらい制度というものを持っていることによって生じる組織の体質にあると思います。
 ですから、多大な見えざる国民負担といった見えづらいものを抱えていることによって、逆に事業体として経営自由度の制約とか、事業責任に対する貫徹というものが制約をされてしまっている。そのことは、官僚制とか、行政とか、行政体質とか、硬直化とかいろいろな表現はありますが、そうした体質によって非効率ですとか有効性が低下をしているということ自身が、実質的な意味での国民負担を拡大させるということではないかと思っています。
 ですから、今日示していただいた一つのビジネスモデルというのは、まさに見えづらいとか、見えないという制度そのものを抱えている体質ということに対して疑問を呈したわけで、その一つの表れ方が1兆円とか、一・何兆円という数字に表れているしそれに止まる問題ではないということだと思います。
 道路公団のときでも議論がありましたが、見えない国民負担というものを表に出すと、これが利用者負担になるといったような議論も一方にはありました。これは私は違うと思っていまして、見えづらい国民負担の枠組みを抱えたままにすること自体で、見えない利用者負担といったようなものを抱え続けるということになると思います。私はこの「見えざる国民負担」というのは単に数字上の問題ではなくて、組織の問題ですとか、ビジネスモデルの問題に深く関わる問題ではないかと思っております。
 郵政公社のことではなくて一般的な問題なんですけれども、よく努力をして窓口サービスをよくしていきますというのは地方自治体などでもやるわけです。あるいは外郭団体でもやるし、特殊法人でもやる。そこで起こった問題というのは親切なたらい回しというものがありまして、要するにサービスそのものへの対応はよくなるけれども、組織の体質そのものが変わっていない。したがって、そこで出てくる質というのが必ずしも本質的に改善していない。ですから、私はこの「見えざる国民負担」というものを考えるというのはそこにつながるものだろうと思っております。

○中城審議官 ありがとうございました。ほかにどうぞ。

○吉野教授 宇田プリンシパルの御説明で、1つはユニバーサルサービスの定義をどこまでのものにするかということがあると思うんです。スウェーデンの例ですと、配達のユニバーサルサービスの定義はしています。例えば、週に5日間配達するとかですね。しかし、郵便局の設置に関しては一切そういうものをしていなかった。その理由は、余りにもスウェーデンは国土が広過ぎるので、少しフレキシブルにした方がいいのではないか。ですから、郵便局の設置基準をユニバーサルサービスにするか、配達をするかというのは一つ重要ではないかと思います。
 2番目は、アジア戦略です。私はオランダでヒアリングをしたときに、やはり向こうの経営陣の方は世界戦略の中からどうやって自分たちはビジネスをやっていくかという視点が常にあるような気がしました。ですから、もし日本の場合でも新郵政はそういう経営陣がいないと海外に勝てないような気がいたします。
 3番目は窓口業務を分離されるということなんですけれども、そのときにスウェーデンなどですと田舎の方はどんどんアウトソーシングをしていくわけです。そうしますと、郵便会社として持ってしまうとアウトソーシングは後で難しくなるケースがないだろうか。それからING、オランダですけれども、ここは郵便局以外に自分でINGダイレクトというものを始めまして、そこが一種の郵便局のネットワーク会社との少しコンフリクトみたいになるわけです。金融自身は郵便局の窓口を使いたいですから、自分でもインターネットとかテレホンサービスを始めた。そういうときに窓口業務がうまくやっていけるかどうかです。
 最後は、第三者金融商品をどんどん販売できるように日本の法制度が変わっていかなくてはいけないと思いますし、手数料の設定の仕方というものも随分あると思います。以上です。

○宇田プリンシパル 少し補足をしておきますと、今ここでユニバーサルサービスオブリゲーションということを考えているのは郵便に関して考えているということでありまして、ほかの業務で考えてはいません。

○吉野教授 私も郵便だけで考えています。

○宇田プリンシパル それから、郵便局の設置基準というとおかしくなる。皆、窓口なんです。要するに、フランスもドイツも全部窓口の設置基準があるかないかという話をしていて、これはそれぞれごとに皆、状況に応じて違いますということだと思います。
 それで、先ほどのように設置基準をもしつくるのであれば、それに対してのコスト負担というのはどのくらいになるんだろうかということをやはり計算していかなくてはいけない。これは郵便のデリバリーの基準とか、そういうことではなくて、例えば地方自治体としては自分のところに窓口がどうしても欲しいとしたらそのコスト負担はだれがするのだろうか。幾らかかるのだろうかという議論をしていくべきと思います。
 今は3つの事例からなので、そこのところはすべきか、すべきでないかということはあえてどちらとも申し上げませんけれども、もしその設置基準を何かしらのものでつくるのであれば、そのコXト負担というものはやはりどこかで考えていかなくてはいけない話でありまして、経営主体としてはそんなものがあると結構たまらないということにもなるはずです。
 それから、世界戦略はそのとおりでありまして、やはりアジア発の物流とか、今たまたま中国がいろいろなことで盛んだということがありますけれども、皆さん非常に関心が高い。それで、今回も海外のポストに行くと全部、提携しようよ、提携しようよという話で、郵政公社から行かれた方は大変だったと思いますけれども、とにかくその節はよろしくみたいな感じでした。
 それから、スウェーデンは私の理解するところ、田舎の方の決済に関しては多少そういうUSO的なものがあるんだけれども、こちらから出張っていく人たちが何千人かいて、そういう人たちが対処していく。あるいは、おっしゃったようなアウトソーシングみたいな話だろうと思います。業務を分離していくとアウトソーシングができなくなるかというと、そんなことは多分なくて、これは十分可能だろうと思います。
 それから、INGの件はポストバンクはほとんど同じケースでありまして、コンフリクトはするようでしないようで、やはり窓口に来るのが好きな人と、それからインターネットとか電話で申し込む人とは多少違うセグメントだという考え方は結構あります。それで、皆でできるだけ取っていけばいいではないかというぐらいの感じでありまして、できるだけお客さんに多くのチャネルで、どこのチャネルでも物が買えるようにしたいというようなことで、むしろそのチャネル網を広げていくというような考え方に基づいているところがあります。だから、お互い同士コンフリクトして失うよりも、ほかのところから取った方がいいという考え方もあると思います。
 もう一つ印象深いのは、ポストバンクに彼らのほかの金融機関に対する強みは何か聞きましたとところ、ドイツ銀行のお客さんというのは支店はドイツバンクの支店にしか行かない。ところが、ポストバンクのお客さんはドイツ銀行のお客さんもあるし、結局郵便を目的で来たりいろいろなところから来る。そういう接点というのは非常に多いので、こういうふうな接点を最大限利用していきたいという話がありました。だから、考え方としてはお互い同士のコンフリクトよりも、むしろ他の金融機関等々から取る、イコールフッティングの中でそういうことをやっていくということではないかと思っています。
 それから、第三者に商品を売れるようにするためには手数料の調査が大事です。ポストバンクのケースには過去のお客さん、あるいは既存のお客さんは全部運用資産額に対するスプレッドで払うけれども、新規の開拓に関しては新規開拓分に対しての手数料で払います。そうすると、既存の人たちのメンテナンスに関しては別に量が多ければその分のスプレッドで払いますけれども、むしろそういう新規のところにインセンティブを与えたいと思うと、新規のところの手数料を多少厚くするわけです。そうすると新規の方が増えていくわけです。そういうことをやって、この手数料でいろいろ自分たちのポートフォリオをマネージしていくということをやっています。規模はもちろん日本とは違いますけれども、そういうことでやっています。

○中城審議官 ほかにいかがですか。

○宮脇教授 今のお話に少し関連すると思いますが、自分のための整理でもあるんですが、ネットワークという言葉自身いろいろな意味があると思います。
 1つは、事業者として形成するネットワークと、利用者が受けるサービスとしてのネットワークというのは違うと思います。どうしてもそれを同じものとして議論する場合が多いですが、先ほど吉野先生も言われたようにアウトソーシングですとか、あるいはオープン化をすることによって、国民が受けるサービスのネットワークというものを確保することはできる。それと個々の事業者がつくるネットワークというのは必ずしも一致をしない。当たり前のことですが、ネットワークを議論するときにはまずそれが根底にある。
 それからもう一つですが、ここで形成するネットワークというのはオープンで横型のネットワークである必要性があると私は思います。それはやはり産業化から情報化ということになってきて、いろいろなものがそこに集まってきて付加価値を持つということが重要であって、ネットワークであっても縦型でネットワークに一定の制約を非常に付けてしまうというようなことになると、これは当然そこにいろいろな異質な資源というものは組み合わされないわけですから付加価値が出てこないということになると思います。
 だから、ネットワークそのものというのは別に新しいものでも何でもないわけで、ネットワークの質そのものを大きく変えるというところに根底的なビジネスモデルの在り方が必要だろうと、今お話を伺っていて思っています。

○奥山相談役 窓口機能というんですか、業務というんですか、それがどういうふうにあるべきかということは、かなり整理された方向にきているのではないかという印象を持ちました。
 ただ、窓口からこういうふうにいくというのは大変わかったんですけれども、その元といいますか、その先になる郵便と郵貯と簡保のそれぞれの事業がどうなっていくのかということについてはまだシミュレーションの具体的なものが今日は出ていなかったわけで、窓口そのものについてはこういうふうに展開して一つの収益が成り立っていくということは読み取れますし、またそのように持っていくという方向はわかるんですけれども、ほかとの関係がどういうふうになっていくのか。そこのところはいかがでしょうか。

○宇田プリンシパル 前回に少し頭出しをさせていただいていまして、前提としていろいろなモデルで、特に郵貯簡保がどうなっていくのかというところは非常にいろいろな意見があるんだろうと思います。それで、今回は4機能分離というところに中心を置きましたが、先ほどのシミュレーションの図でいくと外的要因というところをどう考えたのかにもよります。やはり引受けの郵便物数というのはこれからどんどん減り続ける。マイナス1%ずつぐらい過去のトレンドで減るということ。それから、小包については2010年くらいまでは3%くらい増えていくかとか、そのような前提を置いたりしております。国際引受けの郵便は少しずつ減っていくかなとか、そういうことです。
 郵貯のところは2016年の段階で、このシミュレーションでは基本的にはすべて新規勘定というか、新規獲得分で130から150兆円くらい持っているということをベースケースとしたモデルになっています。悲観のときには06年以降も30%ずつくらい流出をしてしまうというようなことで考えて議論をしています。だから、悲観のときに130兆円で、ベースケースで150兆円くらいのものを持っているという視点でございます。
 それから、簡保はポートフォリオの中の商品がどうなるかは別として、悲観で80兆くらいのものが存在していると想定しています。ベースケースでは100兆円弱くらいです。新規契約と旧勘定は組織は別として、これは勘定分離をしながらという前提です。
 その中で、手数料のストラクチャー自体はいろいろなことが考えられます。既存のものに関しては資産当たりのフィーで払い、新規のところはむしろインセンティブフィーでやる。インセンティブで経営がそこまで増やすぞと思えば新規を取るという側で動くし、そうでない場合には既存を守るという側で動きます。ここでは新規を取っていくというような形で、設定をしているということです。

○翁主席研究員 私もこの窓口の機能の分離ということでこういう整理をされて、収益がどういうところで上がっていくかということが大変わかりやすくてよくわかったんですけれども、郵貯のところに関しては今お話があったようにいろいろな考え方があり得るのではないかと思っています。
 特に今、郵便貯金がいわば国債管理政策の中にビルトインされるような形になっているということを大きく改革していく、変えていく。本当にワン・オブ・プライリマリー・ディーラーとして金融市場で活動するということを考えると、余り大きな国債保有を持っているビジネスモデルが今後の日本の金融市場にとって、または債務管理政策にとって本当に望ましいかどうかという観点からもやはり吟味が加えられるべきである。個人国債も含めてむしろ販売を強化していくことによって、金融商品販売のビジネスモデルはリスクをアジャストした収益率というのは高くなっていくはずで、そういう意味ではそういう行き方の方が金融市場の整合性とか、リスク管理、自己資本との対比とか、そういうことを考えると、望ましいということがあるかと思います。
 ただ、勿論預かった預金に対して安定的な運用をする必要があるわけで、そこで安定的な運用が確保されれば、その分は相当運用益として寄与してくるかと思っていますが、そういう印象を持ちました。

○宇田プリンシパル ここは私のところもいろいろな案があると思っておりますが、ただ、個人向けの国債市場というのが現状で6兆円くらいという形で、しかも手数料というのもかなりスプレッドから考えても低い値になってしまいます。そうすると、これを入れ替えていくような形でインセンティブを与えても、その手数料もワンショットのような形になってしまうと、収益というのは結構厳しい側に振れていきます。
 だから、国債にどこまで転換していってどこまでもつのかというようなことは、可能性としては追及してみる価値はあると思います。たまたま個人国債については70億円から100億円くらい年間のインプットがあるという前提で数値を入れていますけれども、これを今の段階で急激に増やすというのは、やってみようとすると結構厳しいかなと。セから、その辺のところは今後もう少し議論した方がいいかと思います。

○中城審議官 ほかにどうぞ。

○吉野教授 今日のお話で私のところになかったんですけれども、オランダに行きましたときに郵便局の窓口のいろいろな情報が今後商売として使えるのではないか。郵便局にはあらゆる階層の方が来られるので、その情報サービスを販売するとか、いろいろなことでオランダでは使えるのではないかと思っております。ですから、例えば顧客情報とか、顧客の志向とか、金融に対するどういう選好があるとか、そういうものも売れるのではないかと思いました。
 それから、先ほどの方に戻りますけれども、ユニバーサルサービスを何らかの形で課すときに地方公共団体が負担するかどうかということはもう一つあるような気がしまして、スウェーデンの場合にはそれを郵便料金で国民全体が負担するというような感じでしたので、ユニバーサルサービスの負担をどこにかけるかというのはもう一つあると思いますし、ユニバーサルサービス自身のあれもある。
 ただ、先ほどおっしゃいましたように、ユニバーサルサービスは郵便にだけでありまして、金融に関してある国はなかったと思います。

○奥山相談役 さっきの続きで申し訳ないのですが、窓口をこういうふうに切り離したときの郵便と郵貯事業と簡保事業の将来像というのは2016年でというお話がありましたけれども、郵便事業では従来損益がとんとんか、場合によっては赤字だという基調があったわけですが、これでいくと郵便事業はますます収益は減るけれども、コスト削減によって損益は成り立つという見方ですね。それで、郵貯は150兆円残るということ、新規でそれくらい出てくるだろうということで、それはそれとして相当な収益が出る。簡保は80兆円ということで、そこから収益が出る。大ざっぱに言うと、そういう見方を取っていらっしゃるということですか。

○宇田プリンシパル おっしゃるように2003年から2016年の変化の理由というのはそういうふうに考えていただいて結構でございます。
 それから、特にここの中で窓口ネットワークというのは効率化できるということも大きな要因になってくると見ていただいて結構です。

○鍋倉副室長 数字的な質問なんですが、年間9,000億の効率化ということで、そのうちの4,000億が店舗だとか、私の理解では要するに店舗の効率化みたいな感じになると思うんです。それで、ドイツを参考にされたということですが、そうすると御承知のとおりドイツは3万6,000あったのが1万2,000になりましたけれども、そういう数の減なども考えているんですか。

○宇田プリンシパル 一定量、まずフランチャイズ化的なことで一つひとつの運営があります。それから、郵便局の窓口は小さいところを含めて統合というのは一定量加味しています。要するに、数そのものが減ることも加味しています。

○鍋倉副室長 それで10年後に年間4,000億ということは、毎年4,000億ずつ効率化が出るという話ですか。

○宇田プリンシパル そういうことではなくて、今のコストと比べてみてそのときのコスト構造というのは幾らになっているかということで考えてみると、4,000億とか、そのくらい下がっている状況になっています。だから、そのときの収益として幾ら出ていますということになります。

○中城審議官 ほかにいかがですか。

○竹内審議官 先ほど生産性の向上のところで700億とおっしゃっていましたね。あれは私などは非常にコンサーバティブな数字のような感じがしているんです。

○宇田プリンシパル 生産性の最初のところですね。これは現状やられていることのベースで考えていますので、皆さんが思われている数字をそのまま使っています。

○竹内審議官 今後入ってくる9,000億の中に、例えばアウトソーシングとおっしゃったけれども、銀行の例などを見れば、今や正規の行員は支店長さんと2人で、あとは全部パートとかですね。
 我々は郵便局を見に行ったんですけれども、特定郵便局でも行ってみると国家公務員の人は2人で、あとの8人はパートの人だとか、例えば郵便局の集配のところを見に行ったんですけれども、制服を着ている人は公務員で、その横で夜に働いている人の時給が900円くらいなんです。そういうことを前提にお考えになったんですか。

○宇田プリンシパル ここのところの生産性の向上というのは、今JSトヨタ方式ということでやられているものの世界だけを考慮しています。

○竹内審議官 そのアウトソーシングしていく中におけるコスト削減というのは、さっき言ったような水準の世界に入られているんですか。

○宇田プリンシパル 今のところその部分については、例えば窓口ネットワークの効率化をして統廃合がされていきますと、当然のことながら今、言ったような人のところがパートが増えるとか、基本的には自然減だけで考えて、それ以外フ部分はパートを入れていくというようなことを考えていくと今みたいなところに入ってきます。そうすると、その部分というのはこの窓口ネットワークの効率化の中に含まれていると考えていただいて結構だと思います。

○鍋倉副室長 先ほどドイツでしたか、イタリアでしたか、中央郵便局がショッピングモールみたいになっているというお話をされましたが、この前、ちょっと宇田さんに申し上げたんですが、集配と窓口の分離というのは一つの考えとしてあると思いますし、いいんですけれども、配達をする郵便局はどこに持っていってしまったんですか。

○宇田プリンシパル それぞれ配達のソーティングセンターと、それから配送所は別の場所につくっている。だから、それを集約化してある地域ごとにつくっているということで、それは今の部分を売ったものでソーティングセンターをつくったり、そういうようなものは別につくるという考え方だと思います。

○鍋倉副室長 要するに、ソーティングセンターをどこかに集中するというのはできるんですけれども、この前も申しましたように配達効率を考えるとバイクで配達するのか、何で配達するのかはわかりませんが、ある一定のエリアに1か所置かなければいけないですね。だから、確かに中央のど真ん中に置くことはないのかもしれませんけれども、近辺に置かないと配達できないわけで、そういうのはどういう感じになっているんですか。

○宇田プリンシパル 我々の換算でいきますと、近郊にそれだけの地域を多少集約をした形でつくりましょうということで一応試算はしています。我々の試算の根底はそういうふうになっています。

○鍋倉副室長 その場合は効率も考えて。

○宇田プリンシパル 完全に今の効率のデータがよくわからないところがありますけれども、一定量その集配がなくなれば、その部分に匹敵する面積に近いものを別途どこかで手配をして、しかしながらそのど真ん中ではなくてその裏とか、安いところとか、そういうところに集約をしていくという考え方になります。

○鍋倉副室長 大通りの真ん前に置く必要はないんだけれども、その近辺に置かないと配達効率が悪くなるということはありますね。だから、ソーティングセンターというのはわかるんです。だけど、配達のセンターというのはある一定の間隔で置かないと配達効率が逆に落ちてしまってコスト高になってしまうことがありますから、その辺の宇田さんの考え方なんですけれども。

○宇田プリンシパル 私の考え方は、地域に1つ置くのかどうかは別としてこういうふうに考えたらいいんじゃないかと思います。今おっしゃったところはベストのやり方をやはり考えるべきだと思っておりまして、それは今の窓口の配置とか、そういうものと一回切り離して、郵便のベストのネットワークはどうなのかということを考えていただいたらいいのではないか。それで、今おっしゃったようにやはりそういうものが近くに要るんだということだったら一番安いところの地域につくっていただければいい話でありまして、既存のネットワークと切り離した形で再設計をされるというのは十分あり得る話だと思います。それで、我々の試算はそういった部分は全然なくなるということではなくて、その程度の別な土地に移転をするというようなモデルは一応考えました。
 視察中にミュンスタープラッツを見ながら、10年後の中央郵便局はこうなっているのかとか皆で話をしたんですけれども、中央郵便局は非常にシンボリックで、皆さんはノスタルジックで涙が出てしまうかもしれませんが、そういうことは民営化のシンボルとして十分あり得るのではないかと思います。

○吉野教授 もし宇田プリンシパルのようになりますと、日本全体の資金の流れにどう影響するかということですね。第三者金融商品を販売するのであれば今までと同じことになると思うんですけれども、そうではなくて新郵政が自分で運用した。そうすると、これまでの8割国債保有だったものが大分違ってくるわけです。そうすると、その場合の資金の流れとして、貸出しとか債権市場に関して今のシナリオですと大体どんな感じになるのでしょうか。

○宇田プリンシパル このモデルだと百数十兆ありますので、運用そのものはかなりの部分、国債に依存をするということではあります。
 それから、このシミュレーションでは貸出しはやりません。貸出しのクレジットリスクは取らないという前提です。 それから、先ほど言った住宅ローンとか、そういうものは売りますけれども、これも全部フィービジネスです。
 ただ、それがいいのかどうかはわかりませんけれども、このモデルではそういうことです。

○吉野教授 そういう意味では、日本全体の資金の流れはどこを通じてお金が流れたかということであって、その先のところは余り変わらないという感じですね。例えば貸出し全体の量とか、有価証券とか……。

將|内審議官 そうではなくて、それはあくまでも投資家なりの選択の問題ですから。

○吉野教授 需給はそうなんですけれども、供給サイドとして新郵政がどういう形でポートフォリオを組んでくるかということは金融市場に影響しますね。

○竹内審議官 預かったものの運用の話ですね。
 だけど、それは民営化したところが自分のところでALM的にも初めてやり出すわけですから、リスクテイクとしてもいいかという選択の問題ではないですか。ですから、さっき少しおっしゃったように郵便貯金が国債に振り変わるかどうかと言っても、それは来るお客さんの選択の問題であって、今までのことで言えば郵便局はどちらかと言えばローリスクの商品を売るところだという消費者選好の問題だと思うんです。ですから、単に消費者選好の問題として言えば、多分リスクの少ない商品を今後引き続き買いに来るだろうという話であって、別に民営化に伴ってこちらの商品提供者の方から物の流れを変えるという話とは少し違うと思います。

○吉野教授 もちろんそうなんですけれども、ただ、どんな市場も需要と供給の両方ですから、供給側の態度と需要側の態度になると思います。

○竹内審議官 イギリスに行かれて、あそこの国はPFIとかいろいろやっていますね。それで、イギリスの郵便局の民営化みたいなときに、先ほどドイツの例を見せていただいたんですけれども、イギリスでも結構郵便局というか、例えば郵便公務員用の宿舎をプライバタイズとか、そういうことをやられて、私が聞いた限りは相当郵便の赤字を埋めるのにしたと聞いたんですけれども。

○吉野教授 PFIとかということはよく聞いてはいませんけれども、委託局とか、そういう形で自前のところではないところでなるべくコスト削減というのは……。

○竹内審議官 それは、持っている財産を売ったというような形ではやっていないんですか。

○吉野教授 それは別に聞かなかったです。ただ、統廃合みたいなものを都市部でやっているということは聞きました。

○竹内審議官 統廃合をして残ったものは有効活用する。例えば、イギリスですと軍人用宿舎を財政赤字が苦しいと売ってしまったんです。国防みたいなものでも売るのかといったけれども、やはりそれは財政赤字が苦しいときは当然だとやっているわけですから、多分私の理解では郵政民営化のときには純粋公共財的でない部分には相当手を突っ込んで効率化を図ったということで、それをやったインベストメントバンクの人たちから聞いたんですけれども。

○吉野教授 イギリスの場合、サッチャー政権からずっと全体のいろいろなものを民営化するという動きの中でPFIも入ってきましたし、おっしゃるとおりだと思いますけれども、郵政の場合にはまだそこまでいっていないという感じで、組合の力が強いです。

○鍋倉副室長 設置基準と効率化との関係というのはどうなっているんですか。郵便局の設置の基準がある程度必要だという前提に立つと、そういうものはどういう仕方でするのかわかりませんけれども、設置基準に基づく日本の郵便局の数というものがあって、それを幾つかフランチャイズするということだと思うんですけれども。

○宇田プリンシパル これは我々は外からわかるデータでやっていますので、ドイツの例えば人口当たりの窓口数というものがあるわけですね。だから、日本においても人口当たりの窓口数がドイツ並みであった場合にどのくらいになるのかというようなことをベースに試算をしています。そうすると、ドイツの基準と日本の基準というのは何キロ以内に近付けるというのはもちろん国土の状況が違いますけれども、平均してみて1局当たりの国民の数を合わせるという考え方で試算をしています。
 したがって、ある基準でやった国の設置の数と同程度ということで計算をしておりますので、基準をセットするのであれば、その基準によってはもちろん減ったり増えたりはすると考えていただければいいと思います。一応これは我々としてはドイツの人口当たりの数と基本的には同じだと考えてみた場合にどうなるかという前提で試算しています。

○鍋倉副室長 そうすると、ドイツの人口は忘れてしまいましたけれども、ドイツの人口分の日本をかけると大体日本の設置しなければいけない数が出てくるということですね。

○宇田プリンシパル 今回のシミュレーションの前提としては、そのように置いています。

○翁主席研究員 先日、過疎地の店舗の運営コストは大体どのくらいかというのをはじいて、あれをもう少し余裕を持って見ても1,300から2,000とか、そのぐらいのレベルであるかと思うんです。そうしますと、本当にユニバーサルサービスのコストというのをかなりフランチャイズ化とか、そういうふうに変えて考えていってもそんなに大きくない。そうすると、宇田さんが今日試算された9,000億のレベルで、もしかしたらこの事業体として十分吸収できるという可能性もあるように思うんですけれども、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

○宇田プリンシパル 郵便のユニバーサルサービスオブリゲーションのコストですね。この郵便の収益はリザーブドというか、今の信書の規制はそのまま残っているという形で進めていますけれども、この試算で言うと、それは努力によってそのリザーブドエリアだけでやっていけるということです。

○鍋倉副室長 また元に戻って恐縮ですけれども、数が減ってフランチャイズ化しても雇用の面は自然減でその中に入るということですか。

○宇田プリンシパル そういうことです。

○竹内審議官 もう一つよろしいですか。我々は行けなかったので、さっきおっしゃったスウェーデンでパパママショップと言われて酒屋などが郵便になったというお話ですが、自動車で回る郵便というお話があったんですけれども、我々はこの前、日原の鍾乳洞の近くの郵便局を見に行ったんです。そこに簡易郵便局があって、その周りに160人、80世帯くらい住んでいるんですけれども、そこで言う最低限のサービスというと、郵便もユニバーサルサービスなんですが、食料の方はどうなっているんですかと聞いたら、都会から自動車で売りにくると言うんです。そういう自動車で来るような人たちが郵便業務もやれば、極端に言えば店がなくてもユニバーサルサービスが保てる。

○吉野教授 パパママショップの自動車版ですね。

○竹内審議官 そうですね。そういうことをスウェーデンはやっているんでしょうか。

○吉野教授 そうですね。物まで売るかどうかはわかりませんけれども、車でずっと周りながら集配をして、そこで金融サービスもするというふうな車サービスです。

○竹内審議官 それもユニバーサルサービスの中と考えれば、入っているわけですね。

○吉野教授 はい。ただし、週に何回かは必ず行くということです。

○竹内審議官 むしろ固定なところを持つよりも、週に何回か来る部分のコストの問題ということですね。

○吉野教授 すごくスウェーデンなどはコストカットの努力をしています。いかに低いコストで最低限のサービスを確保できるか。スウェーデンの場合は、もともと公務員でも終身雇用ではないというところがあったから。

○中城審議官 よろしいですか。それでは、今、大臣が4号館を出られてこちらへ向かわれておりますけれども、大臣が来られたらまたごあいさつをしていただくといたしまして、本日の議事はここまでにさせていただきまして、そのままお待ちいただきたいと思います。本日の会合につきましては、定例どおり後ほど事務局から記者レクを行いたいということでございますので、お含み置きいただきたいと思います。
 それから、順序は逆転いたしますけれども、次回の会合の日程等について事務局から御説明させていただきます。

○利根川参事官 次回の会合でございますけれども、来週の8月2日、6日に予定されております経済財政諮問会議におきます郵政民営化についての集中審議の状況につきまして、事務局から報告をさせていただきたいと考えておりまして、それを踏まえまして御議論をいただきたいと思います。
 つきましては、日程については既に事務局に調整を進めさせていただいておりますけれども、再来週の月曜日、8月9日の11時から12時半まで、1時間半の会議を開催させていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○中城審議官 いましばらく時間がありますので、何かどうぞ。

○奥山相談役 今後の話で、9日の会議と、それからその後ですけれども、どういう展開になっていくのか、中城さんのおわかりの範囲でお願いします。

○中城審議官 私も正確にはあれですけれども、2日の経済財政諮問会議につきましてはこれから機能の話とか移行期、準備期の話、組織の話、雇用、それから推進体制についてと、この4つについて議論をしていきたいと、竹中大臣は前回の諮問会議で取りまとめられております。
 それで、新聞記者会見などでも、ではその後どうするのかということですが、それは2日、それからその次の諮問会議でどこまで議論ができるかによっているというようなお話でありまして、それ以上情報がないのでどこまで2日、6日で進むかというのはわかりませんので、その状況を見てということで、とりあえず9日の日にはそうした進展についても御紹介できるかと思っております。

(竹中大臣入室)

○中城審議官 今、奥山さんから、今後どういうふうに進めるのかと。特に私どもとしては有識者会議を次は9日にお願いしているのですけれども、例えば2日、6日の審議がどうなるかというような御質問が今あったところです。

○竹中大臣 2日、6日の審議がどうなるかというのはよくわかりません。2日は生田総裁、田中座長にもお「でをいただいて、本当の意味で幅広いフリーディスカッションをするつもりです。それについては論点を徹底的に出していただいて、それで合意することもあるだろうし、意見の違うところもあるだろう。しかし、そのプロセスを2日でどのくらいできるかわかりませんけれども、6日にかけて是非やってしまいたいと思っています。それを受けて、その後どのようなプロセスが必要になるかが見えてくると思います。
 もう一つは今、政府の中でいろいろな議論が行われているわけですけれども、政府の中である程度議論が、たとえ何らかの収れんがあったとしても今度は与党のプロセス等々があります。与党は8月2日、3日でそういう議論のキックオフをする段階ですから、政府の方が先に議論を進めているという状況になると思います。その調整もしっかりとしなければいけないと思います。
 いずれにしても、そのプロセスで詰めなければいけない問題というのはものすごくたくさんありますので、状況を見ながら是非いろいろまたお知恵を出していただきたいと思います。少なくとも私の感じとしては2日、6日と議論をした後、比較的早い時期ということで、9日でしたら大変ありがたいと思いますけれども、一度お集まりいただければ大変ありがたいと思います。

○中城審議官 先生方からは大体お話があって、議論もあったんですけれども、大臣から何か特に御発言がございますか。

○竹中大臣 民営化の基本方針を決めるための議論というものを今、行っているわけですけれども、その後、詳細な制度設計の議論というものがそれに関連して出てくると思うんです。我々が注意しなければいけないのは、これは基本的な方針の議論なのか、詳細な制度設計ないしは更にその先の経営判断の議論なのかということで、そこがすごくごっちゃになるんだと思うんです。我々は、そこは経営の判断としてゆだねるべきことは当然ゆだねる。しかし、基本的な国民制度設計をしっかりやっていくということなんだと思っております。
 いずれにしても諮問会議で議論をするわけですけれども、そこに至るいろいろなプロセスの議論というのはこの民間有識者の先生方でやっていただかないととても問題が大き過ぎますので、その点については引き続きお願いをしなければいけないと思っております。

○中城審議官 それでは、よろしいでしょうか。
 では、本日の会合は以上でございます。どうもお忙しいところをありがとうございました。