10月28日 記者会見要旨

竹中内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・郵政民営化担当 記者会見要旨

(平成16年10月28日(木)12:10~12:25 第4合同庁舎6階 642号会議室)

1.発言要旨

 それでは第15回目の郵政民営化に関する有識者会議を終えましたので、概要をご説明します。
 今日は郵便貯金会社・郵便保険会社に関する5つのテーマを取り上げています。第1は限度額の取り扱いをどうするか、2番目は貸付等の段階的拡大をどうするか、3番目は新旧債務の管理の具体的なスキームをどうするか、第4は特例法の時限、民有民営の判断をどうするか、第5は、国債市場への配慮を制度設計上どのように折り込むか、でございます。お手元の資料でいいますと、それぞれの問題、1ページ、23ページ、38ページ、56ページ、60ページに基本的な考え方を示してあり、それについて自由にご討議をいただきました。
 まず総論的なことで言いますと、事業の自立とイコールフッティングを両立させるため、そこが大きなポイントになるわけですけれども、全体的な考え方、全体観というか思想というか、そういうものが大事になってくるというご指摘がございました。また、暗黙の政府保証というのが移行の期間続くことをしっかりと重要なこととして考えなければいけないというご意見が出されました。更には、例えば限度額の問題等々はその典型でありますけれども、収支やシミュレーションとの関係をフィードバックしながら考えることが重要であるとのご指摘がございました。
 限度の取り扱いについては、まず政府保証がある間は安易な自由度を拡大というのは問題がある、従ってむしろ自由度と言いますか、民営化を早める何らかの仕掛けを同時に考えていく必要があるというご指摘がございました。また経営全般に関して一刻も早い上場というミッションを経営者に与えることが重要であって、既存のビジネスを成長サイクルに乗せることが重要であり、その意味では新しい分野への拡張は控え目に考えるべきではないのかというご意見がございました。さらに、規模に関しては大きくするというインセンティブが強く、縮小させるというインセンティブはむしろ弱いので、新規事業の拡大に関しては制限的に見なければいけないという話がございました。いずれにしましても、その手段としては監視組織をしっかりと活用して、イコールフッティングと経営の自由度というのを両立させていかなければいけないということでありました。この監視組織のあり方については、明日議論をすることにしております。
 貸付等についてもほぼ同じラインの意見でありますけれども、移行期、つまり暗黙の政府保証がある間は貸付等の業務範囲もできるだけ現行に近いところで制限すべきであるという意見が出されました。また、監視組織では何を認可して何を非認可にするのかという明確な仕組みを示さなければいけない、同時にそうしたガイドラインを作るに当たっては何が起こるかというのを完全に予見することは難しいですから、ある程度判断の余地も残るような形を考えなければいけないのではないかというご意見がございました。
 移行期に関しては、今申し上げたように、暗黙の政府保証がある中で何らかの業務の範囲の制限が必要であるというご意見は方向として出されましたが、現行のままでよいというかなり強いご意見と、必ずしもそうではないというご意見と、色々流れがあったように思います。また特に暗黙の政府保証が残っている間の貸付という観点からはリスクに見合った金利を取りにくいのではないのか、プライシングが困難なのではないか、という技術的なご指摘もございました。
 旧債務と新債務の切り分けのスキームについては、考え方としては信託方式というのがすっきりするように思うけれども、ALMの一体性の観点から特別預金のスキームもあり得る、その場合の技術的問題は何かをさらに詰める必要があるというようなご指摘がございました。また、旧債務をできるだけ早く切り離すことが必要であって、そのための幾つかの技術的な工夫もするべきではないかというご指摘がありました。旧債務については預金保険料を支払わないのでその意味で超過利潤があるということになる訳ですけれども、その辺りをどのように考えるのかというご指摘がございました。これに関してさらにそのALMをどうするか、シミュレーションを含めた再検討が必要であるというご指摘がございました。また、貯金については定額貯金は10年で終了する訳でありますけれども、保険については10年たっても残高が残るわけであり、これをどうするかについて検討する必要があるというご指摘がございました。
 4番目の民有民営の解釈については、民営化の最終目標というのは政府出資をゼロにすることであって、政府出資をゼロにしてもこれだけ大きな規模であるので色々な問題がある、その意味では政府出資をゼロにするということが最低限の条件ではないかという話がありました。そのためには、ガイドラインで明確にすべきという意見と、法定も含めて何らかのより強いコミットメントが必要ではないかというご意見の双方がございました。
 国債市場への配慮という最後の問題については、本質は市場関係者の懸念をどのように払拭するかという問題であるので何らかの開示が必要である、何らかの開示の考え方として余り縛りが強くない方がよいというご意見があった一方で、非常にこの規模が大きいということも考えると何らかの公表が必要であるという意見がありました。情報の開示のあり方については、少しニュアンスの異なった意見が出されたように思います。また移行期のかじ取りというのは大変難しく、国債市場というのは国民から見て非常に分かりやすい象徴的な問題であるので、一定の予見可能性が必要である、混乱を避けるために特にそうした点は配慮すべきであろうというご議論がございました。
 いずれにしても、今日は前回と同様、結論を出すための会議ではなく、ブレイン・ストーミング的に議論をいただいております。委員の中からは個別論を踏まえて全体論、そしてまた元に戻って繰り返し議論をする必要があるというご指摘があったところでございます。
 次回は、個別論にも少し戻るかもしれませんけれども、全体的な話として監視組織や経営委員会など、少しトータルな話をすることになろうかと思います。
 私の方からは以上です。

2.質疑応答

(問)確認ですが、限度額の取り扱いや貸付等の段階的な拡大については、多くの意見としてはやはりその手の安易な拡大というのは慎重にやるべきだということでよろしいでしょうか。

(答)積極的に拡大すべきだということではなかったと思います。しかし、同時にシミュレーション等々で確認をする必要があるということであったと思います。公社の経営そのものも成り立っていかなければいけない訳ですから、そういうことも含めてトータルに検討しようということであったと思います。

(問)民有民営について、政府出資ゼロが最低限の要件というご意見があったとお伺いしましたが、これに関しても大体共通認識だということが言えるのでしょうか。

(答)正確に言いますと、ゼロというのをどのように考えるかということについて、これに関しては幾つかの制限がありますよね、主要株主の制限もあれば、銀行が持てる企業の株式のシェア、そういった数字を議論された先生もいらっしゃいました。ただ、要するに限りなくゼロに近いというようなことが必要なのだと。民有民営化である以上、ゼロが求められるという、姿勢としての話が強く出されました。

(問)政府出資について「強いコミットメント」云々という話がありましたけれども、具体的なことで何かおっしゃっていましたでしょうか。

(答)あるご意見では、例えばNTTはいまだに46%国が持っていると。色々な市場の状況とかマーケットの状況、政府の都合がある訳だけれども、結果として政府出資ゼロに近いものが実現されるように、何らかのコミットメントが必要なのではないかというご意見でありました。

(問)それは上場を視野に置いている、ということにつながる訳ですか。

(答)そういうご意見を述べられた方がいらっしゃったという意味の質問であれば、経営である以上、そういうことを目指してやってもらいたいということです。そういうご意見があったということです。

(問)最終意見とかそういうようなことで……

(答)最終意見ではありません。

(問)簡保について再保険を使うというスキームについてはどのような意見があったのでしょうか。また郵貯について先取特権を付与する根拠について、お聞かせ願えますか。

(答)先取特権の根拠については、これは信託スキームとは別に、資産がきちっと国に帰属することを保証するため先取特権という手法を使ったらどうかというのがここでのAの提案になっている訳です。再保険の話については、今日は余り技術的な問題まで議論ができなかったのですが、分別という観点からは信託が基本的には望ましいと考えられるけれども、例えば民間の保険会社で信託業務ができないというようなことになった場合はイコールフッティングの問題が出てくるのではないか、ちょっと少し細かい議論ですけれども、そういう議論がございました。

(問)旧債務を早く切り離すための工夫が必要、というご意見があったという紹介があったのですが、定額貯金は10年で自然に無くなるが、それよりももっと短くというご趣旨なんですか。

(答)旧債務のリスクをできるだけ早く切り離すために、例えばその債務を別の債務にかえるとか、金融上の非常に技術的な問題が含まれると思いますけれども、そういうような工夫も色々検討してみるべきではないかというご意見があったということです。

(問)それは、今日の議論とは別にということですか。

(答)今日の議論とは別です。

(問)もう一点お伺いしたいのですが、新旧勘定について、特別預金スキームだと結局は新会社には膨大な預金が集まる形となり、実態的には現状の規模が維持され問題だというようなご指摘をされる方はいなかったんでしょうか。

(答)事務方の説明の中で、バランスシート上は信託に比べると大きくなりますという説明がありました。

(問)それに対して特にご意見は。

(答)ありませんでした。

(問)監視組織の3年ごとのレビューと資料に記載されているのですが、3年毎に業務範囲の拡大を行うということについて、特にご意見はございましたでしょうか。

(答)今日はありません。これはむしろ基本方針の意味という質問になると思いますが、基本方針では3年毎に色々な大きな目標を見直していこうということでありますので、例えば事業の色々な認可事項等について、3年毎にまとめて認可するという意味ではないと思います。勿論議論をいただいた上ですけれども。

(問)限度額を3年毎に決めるということではない訳ですね。

(答)そこはちょっと議論の余地があるところかもしれませんから、議論をこれからいたしますけれども、3年毎に大きな目標管理を行うということであり、日常的なそれぞれの商品の問題などについては別だというのが、基本方針策定時点での理解であります。

(以    上)